第三十話 優しき称賛
城西拓翼大学キャプテンの大和雅紀は、
マイクを受け取ると、
空を見上げながら、
「ふぅー。」と深呼吸をした。
(『苦しき時の兄となり、
楽しきときの友となれ。』、か。
今がその時だよな。
俺が泣いてる場合じゃないな。)
そんなことを大和は考えていた。
第三十話 優しき称賛
大和は、ゆっくりと言葉を選びながら、
挨拶を始めた。
「九区を走らせていただきました
キャプテンの大和雅紀です。
このたびは、とても多くの方々から、
沢山のご支援、ご声援をいただき、
誠にありがとうございました。」
大きな拍手がジョーダイの報告会場に
鳴り響く。
「区間賞おめでとう!」
「よく頑張った!」
観客から、称賛の言葉が飛び交う。
少し間を置いて、
再び大和が話し始める。
「しかしながら、今回の目標である
シード権の獲得も…
襷を最後まで繋ぐこともできず、
誠に申し訳ございませんでした。
これも、全て四年生である僕たちの
不甲斐なさが原因だと思っています。
その一方で…
往路でも復路でも後輩たちは
最高の走りを見せてくれました。
後輩が頑張ってくれたから、
僕たち…四年生は箱根駅伝を
全力で走ることができたと思います!
だから、僕は、後輩たち全員を
心から称えたいと思います!!
それから…。」
大和の言葉が詰まる。
遠くで「がんばれ。」と言う声が聞こえる。
涙を堪えながら、
大和は力強く言葉を放った。
「僕は…
『襷ではなく、
気持ちを繋ぐことが駅伝なんだ』
ということを示してくれた
チーム全員を
生涯、誇りに思います!」
会場はこの日もっとも大きな拍手で
包まれた。
「チーム全員を、生涯誇りに思います。」
その言葉は、ズタボロになっていた
蒼太の心にも届いていた。
きっと、救われた気持ちだったに
違いない。
霞んでいた蒼太の目に、
わずかだが光が戻ってきていた。




