第二十九話 残酷な報告会
箱根駅伝十区のゴール地点である
大手町では、最下位が確定した
城西拓翼大学の到着を
多くの観客が今か今かと
待ちわびていた。
沿道の観客からの地鳴りのような
ジョーダイコールが、
ゴール地点に近づいてくる。
箱根駅伝の放送開始以来、
いや、
箱根駅伝が始まって以来、
ここまで最下位のチームに
大声援が送られたという記録は存在しない。
今年のジョーダイの走りは、
間違いなく
多くの人々の記憶に残るであろう。
「どんな時でも気持ちを繋ぐ。」
「決して最後まで諦めない。」
箱根に挑むランナーにとって
それは当たり前のことなのかもしれない。
しかし、
あらゆる困難にも挫けることなく、
これを実践できる大学生は
この世に何人いるだろうか?
そのような者だけが、
きっと、
「記録」ではない、「記憶」に
残る走りをできるのだろう。
第二十九話 残酷な報告会
最終ランナーが大手町の
ゴール地点に帰ってきた。
その奥にいる仲間に向かい、
「すまない。」という顔をしながら、
両手を合わせてゴールテープを切る。
最下位ながらも、
ジョーダイの十区ランナーは、
区間三位の好走することで、
最後に意地を見せつけた。
その後、
各チームの復路のメンバーも続々と、
ゴールの大手町に集結し、
各陣営で報告会が行われた。
城西拓翼大学の報告会陣営には、
例年にも増して多くの人が集まっていた。
特にマスコミ関係者の数は、
明らかに例年の倍以上である。
同期である石川涼介に支えられて、
放心状態の蒼太が下を向いていた。
マスコミからのシャッターが、
蒼太を眩しく照らす。
そのシャッターの光と音を感じるたびに、
後一秒で襷を繋げなかったシーンが、
トラウマとなってよみがえってくる。
それ以上に、
最後の箱根駅伝となった
四年生に顔を合わせることが
とても辛かった。
だが、どんなに辛くても
報告会では、
それぞれの区間を任されたランナーが
関係者やファンに挨拶を
するのが決まりである。
決まりごととは言え、
いまの蒼太には、
あまりにも残酷すぎると
誰もが思った。
皆がそれを察しながらも
一区を走ったランナーから、
順番に挨拶が始まった。
挨拶をするメンバーだけでなく、
サポートメンバーも皆泣いている。
蒼太も同様に泣いているのだが、
皆が何か話していることは
分かっていても、
何を言っているのか
全く頭に入ってこない。
この時、蒼太の感情は、
すでに極限を向かえていた。
そして、ついに、
蒼太が挨拶をする番になった。
だが、声が出せない。
マイクを持った手が震える。
蒼太の危険をいち早く察知した石川が、
蒼太にフードを被せて、
後方に引き戻し背中を摩った。
「襷を繋げらなかった戦犯は俺なんや。」
自分を責める気持ちで、
押し潰されそうになっていた。
そんな中で、
九区を走ったキャプテンの
大和雅紀にマイクが渡った。




