第二十四話 構わず突っ込め!
箱根駅伝復路、八区。
かつては、繋ぎの区間
呼ばれることもあった八区だが、
終盤に待ち構える「遊行寺の坂」と
呼ばれる上り坂は、
復路の中盤戦屈指の
難所として知られている。
事実、過去の大会では、
シード圏内にありながら、
この「遊行寺の坂」を
攻略できなかったばかりに、
順位を大幅に落とした大学も
数多く存在するため、
現在では、復路の最重要区間と
位置付ける大学も多い。
最後の上り坂のことを考えるなら、
前半は落ち着いて
走らなければならないのだが…。
第二十四話 構わず突っ込め!
八区に駆け出した蒼太に、
伴走車にいる櫛部川から檄がとぶ!
「聞こえるか?蒼太ー!
目指すは区間賞だぞ!
お前が区間賞をとって
流れを作るんだ!
絶対に復路優勝しような!!
九区でキャプテンの大和が
待ってるぞ!」
蒼太は、後方の伴奏車に
見えるようにガッツポーズで応えた。
できれば、遊行寺の坂まで、
足に疲労は残したくなかった。
しかし、先ほど時間ギリギリで
タスキリレーをしたジョーダイには、
そんな余裕はない。
蒼太の作戦は、
「構わず突っ込め!」、
それしかなかった。
スタートから六キロ地点を過ぎ。
蒼太は、快調にとばしていた。
しかし、それを見守りつつも、
コーチの櫛部川は、車内で、
箱根駅伝のテレビ中継を
気にせずにはいられなかった
トップを走る早稲田学院大学との
時間差が広がり始めていたのだ。
蒼太のペースは決して悪くはない。
原因は、
早稲田学院大学の
八区ランナーが区間新記録ペースで
駆け抜けているからだ。
実は、ワセガクは、
総合優勝を決定づけるため、
当日変更で、
スーパールーキーの速水を
八区に投入していた。
速水 瞬 (ハヤミ シュン)
長野県出身。佐久鳳聖高校卒。
蒼太と同じ一年生であり、
世代最強として
誰もが認めるランナーである。
高校駅伝界の名門・佐久鳳聖高校で、
一年生の時からエースとして、
チームを引っ張ると、
その実力とカリスマ性から、
高校三年時にはキャプテンを任され、
全国高校駅伝でチームを連覇に導く。
個人でも、
ジュニアオリンピックから、
駅伝にいたるまで、
あらゆる大会で新記録を
更新したことから、
二十年に一人の天才ランナー、
未来のオリンピック候補
と呼ばれている。
(相手があの速水じゃ、
流石に分が悪い…。)
櫛部川が諦めかけたその時だった。
蒼太が走りながり前方に手を振る。
伴走車に対して、
「今からペースを上げるから、ついてこい!」
というジェスチャーだ。
蒼太も、相手があの速水だということを
知らないわけではない。
それでも、構わず突っ込むしかないのだ。
(最初から最後まで気持ちで走れるヤツ、
それが、蒼太。お前なんだ!)
山之内の言葉を思い出すたびに、
力が湧いてくる。
気がつけば、目の前に、遊行寺の坂が
待ち構えていた。




