第二十二話 復路前夜の決意
箱根駅伝復路の前夜、未明。
箱根にある某宿泊地。
蒼太はなかなか寝つけずにいた。
ロビーの椅子に座りながら、窓から見える
箱根の夜空を見上げている。
箱根駅伝を走るということへの緊張もあるが、
大和キャプテンのアツい檄で、
蒼太のハートは燃えていた。
(でも、そろそろ布団にはいらなあかん。)
椅子から立ち上がった時、
後ろから声がした。
「蒼太、少しいいか?」
第二十二話 復路前夜の決意
キャプテンの大和だった。
「蒼太、お前宛にファンレターが届いているぞ。」
渡されたA4サイズの封筒の中には、
裏側に四年生全員の名前が入ったハチマキと、
手紙が入っている。
差出人は、入院中の副キャプテン山之内だった。
手紙にはこう書かれていた。
「蒼太へ。
こんなことになってしまい、本当にすまない。
蒼太たち一年には、
もっとのびのびと駅伝を楽しめるような、
そんな環境を作ってやりたかった。
こんな肝心な時に蒼太の力になれない俺は、
先輩失格かもしれないな。
でも、もし、俺の代わりに
八区を走る選手がいるなら、
それは間違いなく、蒼太、お前だ。
メンバー発表がされてから、
俺はずっとそう思っていた。
正直、その根拠は上手く言えないけど、
最初から最後まで、
気持ちひとつで走れるヤツをイメージしたとき、
真っ先に思い浮かぶのは、蒼太だったからだ。
だから、このハチマキをお前に託す。
お守りとして持っていて欲しい。
最後まで気持ちを繋ぐことが、
俺たちジョーダイの箱根駅伝なんだ。
蒼太ならきっと大丈夫だと信じている。」と。
「読んだか?」
大和キャプテンが声をかける。
蒼太は、決意を新たにこう答えた。
「はい!
大和さん!
俺、このハチマキをつけて、
八区を走りたいです!!」
(よく言った!こいつになら託していい!)、
そう心で思いながら、
大和は、敢えて強い口調で応える。
「そのハチマキは、俺たち四年の絆の象徴だ。
お前らが思っているよりも軽くねーぞ!」
しかし、蒼太に迷いはなかった。
「だからこそ、俺がその意思を引き継いで
八区を走るんです!
大和さん、明日の復路は、絶対優勝しましょう!」
(ありがとな。)
大和は、そう言いたい気持ちを押し殺し、
蒼太に発破をかけた!
「おう!明日は、区間一位で俺に襷もってこいよ!」
箱根の空に浮ぶ星空が、今日は一段と
輝いて見えた。




