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「あなたにとって、最も尊敬するスケーターは誰でしょうか」
雑誌のインタビューに一人の少女が答えていた。その少女はBeijingという文字の刻まれた金色に輝くメダルを首にかけている。
「もちろん、高橋選手です」
「高橋選手といえば、現役時代はクワドキングと呼ばれた選手でしたね」
「誰も四回転に挑まなかった時代に、ただ一人四回転に挑戦しつづけた。今でこそ、勝利のためには四回転が必須とされていますが、あの時代はそうではなかったんです。四回転はハイリスクローリターンだった。だから誰もが失敗するリスクを恐れていたのです。そんな中、高橋選手はフィギュアスケートはスポーツ、限界に挑んでこそ、スポーツなのだと、果敢に挑戦し続けた」
「彼は四回転ジャンプを守った功労者、と言われていますね」
「彼は誰かと闘っていたんじゃないんです。たぶん、自分自身と闘っていた、っていうのも違う」
「では彼は一体何と闘っていたんでしょうか」
「高橋選手はは、<時代>と闘っていたんです」
「時代、ですか?」
「そうです。リスクは取らない。そんな考えが支配していた時代と闘っていたんです。そして見事にそんな時代を打破した。彼がいるからこそ、今のフィギュアスケート、そして今の私があるんです」
――――反逆のアウトエッジ、了。




