47
♪
エキシビジョンも無事終わり、バンクーバーオリンピック、フィギュアスケートのすべての日程が終了。
その後テレビの中継なども終えて、ホテルに戻るなり俺は君崎を呼び出した。
そう、昨日の「告白」について問いただすためだ。
――私ね、あんたのこと好き」
――それって、スケーターとしてってこと? それとも」
演技前の俺を死ぬほどドキドキさせたあの言葉。
「あのさ」
その答えを確かめるのは、下手すると、フリーの演技前以上に緊張することだった。
「ほら、昨日のさ、あれ」
「うん?」
「言ったじゃん。フリーの後に答えを聞かせてくれるって」
「ああ」
君崎は思い出したという風に、ポンと手を打つ。
「それだけど……」
ごくんと、俺が唾をのむ音が部屋にこだまする。そして、彼女は、
「答えはノー」
ハッキリとそう言った。
ま、まじか。
下手をすると、メダルを逃したと知ったときよりショックかもしれない。もちろん別の質のものなんだけど。
「実をいうと昨日まではイエスだった。だって、あんたは小さいころからずっとあたしの憧れの人だったんだから」
そんなことを言われると照れてしまう……ところなのだが。どうやら俺は振られてしまったらしいと思うと、本当に胸が苦しい。
「あんたのフリーの演技を見て、気持ちが変わった」
俺の演技がふがいなかったから……そういうことなのだろうか。と真っ白になった頭の中に嫌な想像が浮かぶ。だけど、彼女の言葉がすぐにはそれを否定する。
「あんたは私にとってずっと憧れの存在だった。でも今は――ライバル。前はあんた<みたいな>スケーターなりたいって思ってた。でも今は、あんた<以上>のスケーターになりたい」
「……なんだよそれ」
そもそも勝手に告白しておいて、勝手に振るなんてさ。
……いやでも。それは仕方がないことなのかもしれない。恋なんかよりスケートが大事。それがたぶんフィギュアスケーターなんだから。
「俺、お前にも負けるつもりはないから」
「望むところ」
そういった俺たちは微笑みあった。
「それじゃぁさ」
「なに?」
「ソチオリンピックで俺は金メダルを取る。お前も金メダルを取る。その後は、別にノー問題ってことだよね?」
俺が聞くと、彼女は、
「まぁ――たぶんね」
そう言って小悪魔な笑みを浮かべた。
♪




