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【ザマークスフォー】
テクニカルスコア、プログラムコンポーネンツスコアともにパーソナルベストを更新。トータルでパーソナルベストを10点も更新して、白河がトップに立った。これで彼の銀メダルは確定。
さぁ――次は俺の番だ。
足が震えた。昨日の演技で吹っ切れたと思っていたが、そんなことはない。
俺はやっぱりまだオリンピックが怖いのだ。
だが――
「……面白い」
そう思った。
なぜか。
それは、見えたからだ。
そう、確かに、見えたのだ。オリンピックに住む魔物の姿が。
それはどこまでも強大。でもだからこそ――足の震えが、武者震いに変わった。
失敗するんじゃないかという不安は確かにある。だがそれは、逆に言えば、本気で限界に挑んでいるからなのだ。
もし演技前に緊張しないっていうのなら、それは無難な演技をしようとしているからに他ならない。
今の俺は、人生で一番の賭けをしようとしている。これまでの人生全てを賭けたのるかそるかの大勝負。
怖いのは当然だ。
でもだからこそ、その賭けに勝った時、俺は本当の意味で勝利する。
リンクの壁を挟んでコーチと向かい合う。
「あんたはスケートを始めてからずっと、誰よりも必死で頑張ってきた。そうでしょ」
「ああ」
「だから、後は滑るだけ。高橋勝也が、高橋勝也であることを証明すればいい」
俺が俺であるということ。その条件が一体何なのか、今の俺はそれを本当の意味で知っている。
「見ててくれ。俺の限界を」
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