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午前の練習を終え、リンクから5分の距離にある自宅に帰る。午後の練習までの数時間、映画鑑賞でイマイジネーションを高めるのだ。
フィギュアスケートはスポーツであるが同時に芸術でもある。それゆえ競技で行うプログラムも<演技>と称される。
選手にとって、感性の部分を磨くのも立派な練習というわけだ。
自分の部屋にはテレビはないので、 隣の<観賞部屋>に向かった。ここには特大サイズのテレビとプレーヤーが完備されている。
扉を開け、いつものようにソファーに座り……
「え?」
「え?」
そこには――国民的美少女スケーターの下着姿があった。
リンクのように白くすき通った素肌。ピンク色の可愛い、けれど上品なブラジャー。それに包まれた胸には、しっかりと谷間ができている。少年誌のグラビアみたいに、清楚なのだが、しかし刺激としては十分な……
「えーっと、あれ?」
あれ、部屋を間違えたかな。いや、っていうかそもそも家間違えた?
君崎凛。国民的スケーターが、なぜ俺の部屋で服を脱いでいる?
無い知恵を振り絞って考える。――そう言えば朝、君崎凛がうちに来るってコーチが言ってたな……。なるほど。だからか。納得。
ちなみに、君崎の半裸姿、高橋ジャッジの採点は、
「うん、レベル4、GOE+2だな」
なかなかの高得点。さすがだ。
等と、一人ごちていると、次の瞬間、
「きゃぁぁぁぁ!」
部屋に悲鳴が響き渡った。
そして、君崎は目にも止まらぬ速さで、ポケットから携帯を取り出した。
「待て待て、この状況でどこにかける気だ。ジャッジへの抗議か? 採点に不満を持つなんてスポーツマンとして見苦しいぞ」
俺がそういっても彼女は一切聞かず、ボタンを押し始めた。そして数字を3つ押したところで通話ボタンを押す――
ん、3つ?
「って、100当番しようとしてんじゃねぇ!!」
「犯罪者! 近づかないで!」
俺はなんとか彼女から携帯を取り上げる。慌てて画面を確認すると、彼女は番号を押し間違えていた。
「あぶねぇ、危うくガチで人生終わるところだった」
世間はゴシップ大好きだからな。噂がってしまえば、それは世間ではイコール事実ということになってしまうものだ。
世界チャンピオン、女子高生の裸を覗き逮捕。五輪絶望的。なんてニュースが日本中に流されるところだった。
「たんま、たんま。わかったから」
これ以上この部屋にいたら、本当に犯罪者になってしまうと判断した。君崎の携帯を机に置いて部屋から逃げ出す。
自分の部屋に立てこもる。心配になって耳を澄ますが、隣からは音は聞こえなかった。どうやら100当番はしていないようだ。
……いやぁ、しかし困ったな。
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