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エキシビジョンを終え、自宅に帰る。世間は年末年始に浮かれているようだが、世界で戦うスケーターに休みなどない。
いつも通り朝一番でリンクに向かいコーチが来るまでにウォームアップを済ませる。
そこから各エレメンツの練習に入る。休憩をはさんで二時間滑り、午前の氷上練習を終える。
この後は昼ご飯まで陸上練習だ。スケート靴を脱いで休憩のためにロビーに向かうと、ちょうどユキがリンクにやって来たところだった。
全日本でしばらく留守にしていたので、ユキと会うのは一週間ぶりだ。
「おはよう、ユキ」
だが、ユキは返事をしなかった。それどころか俺のほうを見ることさえせずに、歩いて行ってしまう。
「ユ、ユキ?」
気が付いていないのかと、もう一度声をかける。だが、彼女は一切振り返らなかった。
俺は突然の出来事に唖然とした。
いったい俺がユキに何をしたのか――だが、その問いに対する答えを俺は一瞬で見つけた。
限界に挑む。それがフィギュアスケートだ。
俺はそう言い続けてきた。
それなのに俺は逃げたのだ。
言い訳はできない。
彼女は、ずっと俺の後ろをついてきて、いつでも俺のことをそのキラキラした目で見つめてくれていた。
だが、それに値する高橋勝也は、今ここにはいない。ここにいるのは、勝負を恐れた腰抜けだ。
世界一のフィギュアスケーター高橋勝也はもう死んだのだ。




