表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/50

22


 ♪


 男子フリー終了。これで全日本選手権すべての種目が終了した。

 そして、今からオリンピック代表選手の発表が行われる。

 リンクサイドに向かうと、そこには上位選手が揃っていた。

 もちろんそこには君崎の姿もあった。視線が合う。だが俺はなんと言っていいのかわからず、しばらく立ち尽くした。

 そんな俺に、君崎のほうから声をかけてくれる。

「お疲れ」

「ああ」

 それ以上言葉を交わすことはなかった。

 君崎は、俺に向かって非難の言葉を浴びせたりはしなかった。ただ虚無の表情を浮かべ、リンクの白さを見つめていた。


 ――お待たせいたしました。いよいよ2010年バンクーバーオリンピック、フィギュアスケート日本代表選手の発表です。


 会場が一気に静まり返る。


 ――発表は、公益財団法人日本スケート連盟、佐藤フィギュア委員長にお願いいたします。


 白髪の混じった男がマイクを渡される。。


 ――ええ、それでは。第21回、冬季オリンピック大会、バンクーバー大会の選手を発表させていただきます。


 発表はペア、アイスダンス、女子、男子の順番だ。


 ――ペア、金瀬晴夏、木下雄一組』


 演技後以上に、心臓の鼓動が早くなる。


 ――ダンス、松原優樹菜・宮下一郎組。


 そして女子シングル―― 


 ――女子シングル、河合藍。


 心のどこかで期待していた自分がいた。もちろん、俺の成績で五輪に行くなんてそんな茶番あるはずがない。そんなことはわかっている。だが、この世界のすべてが、間違いであってほしかったのだ。


 ――男子シングル、白河悠人。


 全日本の優勝者から発表していく。 

 心のどこかで奇跡が起きるのではないかと期待していた。

 だが現実は、


――高橋勝也。以上です。


 その瞬間、会場が今日一番の歓声に包まれた。

「え?」

 今なんて言った。嘘だろ?

 次の瞬間、コーチに抱きしめられる。

「勝也、おめでとう」

 そう言ってコーチは俺の背中を叩く。

「……選ばれたのか」

 呆然とした。

 ありえない。だって俺は全日本3位

 ――いや、そうだ。その可能性は十分にあった。現世界チャンピオンであることに加えて、昨シーズンから今日まで、国際大会では無敗だった。“たまたま”この全日本が悪かっただけ。そして2位の選手は、国際大会ではほとんど活躍できていない無名の選手。逆に“たまたま”全日本で2位だった。連盟はそう判断したんだろう。

 嬉しい――そんな感情は一切なかった。だって、俺は逃げたのだ。安全策を取って、しかも失敗したのに、それでお情けで五輪に出場。

 そんなの、俺のフィギュアじゃない。

 

 ♪



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ