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――リプレゼティングジャパン、ショーヤ・タカハシ!
大声援に迎えられて俺はリンクに登場した。ここまでのトップは依然白河。他の4人はかなり低めのスコアなので、事実上俺と白河の直接対決になる。
俺のフリーの曲は『グラディエーター』。傷つきながらも、強大な権力に立ち向かい、戦い抜く剣闘士を演じる。
まずは最初のジャンプ。冒頭コンボはもちろん、俺の得意技である四回転+三回転。6分間練習で成功させたときの感覚を頼りに跳びあがる――
視界から世界が消え、そして一瞬後に再び氷上に舞い戻る。
――クワドトウ、やや着氷が前傾姿勢になるが、背筋の力で無理やりダブルトウループにつなげる。
今日初めての四回転成功に湧き上がる歓声。
予定は四回転+三回転だったので、予定通りとはいかなかったが、しかし失敗ではない。ここで跳べなかった三回転は、後でどこかにくっつければそれで取り返せる。
続く大技トリプルアクセル――ここは本来単独の予定だったが、余裕で着氷できたので、一瞬の判断でトリプルトウループをつけてコンボにする。これで冒頭のわずかな不履行を取り返した。
さらに2本目のトリプルアクセルも決めて序盤は完璧。
そこからスピン、ステップと重ねて後半へ向かう。ここからは全てのジャンプの基礎点が1.1倍になるマジックアワー。
体力的にはキツイ。だがいい演技ができている。そして観客がそれに答えてくれる。その事実にアドレナリンがどんどん出てくる。
まずは俺の代名詞ともいえるトリプルルッツ。
調子はかなりいい。だから俺はここで攻めることにした。このジャンプを頭上に両手をあげた状態で跳ぶ。両手をあげると手の勢いを使えないから、脚力だけで跳ばなくてはいけない。さらに軸を維持するの難しくなる。それゆえ超高難度の技だが、今日の俺はこれを軽々決める。そこからダブルトウループ+ダブルトウループと3連続につなげる。
さらにトリプルサルコウ、トリプルループと、2つとも成功。
そして、トリプルフリップ――でややオーバーターンするが、問題ないレベルのミスだ。演技の勢いは損なわれない。
最後のジャンプトリプルルッツでは再び両手を上げて――。
「よっしゃぁ!」
着氷と同時に拳を振り上げる。
ストレートラインステップで氷上を駆け抜け、最後のスピンコンボでフィニッシュ。
――わずかばかりのミスがあったが、クワドトウ、トリプルアクセルを含めてほぼ練習通りの演技ができた。
蓄積した乳酸が気にならないほどの満足感。観客の声援に答え、リンクサイドに引き上げる。そこで満面の笑みで迎えてくれたコーチと拳を突き合わせてから、キスアンドクライへ向かう。
ワクワクしながら採点を待つ。
さて、どれくらいの得点が出るか。
――ザマークスフォーショーヤ・タカハシ
技術点・演技点ともにシーズンベストを更新。ショートフリーのトータルで245点の高得点をただき出した。もちろんトップ。これでグランプリファイナル連覇だ。
会場は王者の連覇に沸き立つ。
だが。
「まじか」
おい……どういうことだよ。
俺と白河の5点しか差がないのだ。しかもフリーだけ見れば得点はほぼ同じ。ジャッジは、俺は四回転に挑んだ俺のフリーと、無難さを追求した白河の演技が同レベルだという判断を下したのだ。
技術点は俺の方が上。四回転を含めてノーミスなのだから当然だ。
だが、演技構成点の方は白河の方が上と評価されたのだ。
一体なんの間違いだ?
「こりゃ、ぼうっとしてられないな」
隣でコーチが言った。俺が答えずに黙っていると、コーチはさらに続ける。
「白河くんは演技の密度が高い。それが徐々に国際的に認められてきてる。多分、次の試合ではもっと点数が出るよ」
密度が濃い? あの無難な演技にそんな評価を出せるのか。
「試合中ずっとディープエッジだし、ディフィカルトターンでスピードが落ちるどころか加速してる。やっぱすごいよ彼は」
コーチの言葉に、俺は無言でもって返事をした。
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