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グランプリシリーズNHK大会開幕。今年の会場は定番の長崎だ。
アイスダンス、ペアに続いて、行われた男子シングル。元世界王者のケビン・ブラックをはじめ、トップ選手が集まったこの大会で、俺はショート、フリーともに1位で完勝し、グランプリファイナルへ出場を決めた。
二年連続のトップ通過だ。まぁ、ざっとこんなもんよ。
ひとまずこれで、君崎との勝負で俺が負けることはなくなったわけだ。
そして男子フリーが終わった後、女子シングルのショートプログラムが行われる。
「よう、君崎」
ストレッチをしていた君崎に声をかける。
「勝負のこと、忘れてないよな」
もちろん、俺は彼女に理不尽な命令をしよう等とは思っていない。
ただ、最初からこの勝負に意味がないと思われたるのも癪だった。せめて、焦るだけ焦らせてやろうという魂胆だ。
「もちろん。私が負けたらなんでも言うこと聞いてあげる」
「楽しみにしてるぜ」
俺が言うと、彼女は自信を伺わせる強い口調で言い切った。
「すごいもの見せてあげるから」
本気の目だった。
「……さて、俺はホテルに帰って命令を考えるかな」
俺は踵を返した瞬間、口元が自然と緩んだ。
――面白いことになって来た。そういう笑いが、こみ上げてきたのだ。
そう、俺はちょっとだけ期待している。彼女が、この試合で四回転に挑むことを。
いや、わかっている。たった一週間前に初めて成功させた技をいきなり試合で跳ぶことなどありえない。それは挑戦とは呼ばない。ただのギャンブルだ。
でも、心のどこかで、ちょっとだけ――俺は期待していたのだ。
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