3/4
サミヅキの難聴
高等学校の入学式を終え、サミヅキは新しい自身のクラスへ向かった。建物の殆どが木製であることが有名な校舎の階段は、それに似つかわしくきいきいと呻く。しかし、不思議と木目は艶やかさを帯びてゐた。
しゃりん、と背後に何かが落ちた。幾段かしたをみやると、鈍く光るものが落ちてゐる。
鈴だ。ごく普通の大きさをして、なめらかな、絹のような質の薄いみづいろのりぼんが付属している。手を伸ばして拾おうとする。突然、鈴が小刻みに動き、しゃりん、と強く震え、踊り場に落ちた。
サミヅキはまた鈴へ手を伸ばす。細白い指先から肘の少し先までが、内側から湧き出た真っ白な花冠となり、階段はしろに染まった。
「キミノ耳ハ僕二愛サレテイルンヂャナイカナ。」
上の階に、きめ細やかな羽毛を集めたような、肌も髪も真っ白な、メレンゲのような軽さをもつ少年が、ゐた。
「ホラ、モウ大丈夫。」
少年は走ってきえた。サミヅキの腕は元に戻ってゐた。そして、手のひらには燻し銀に耀く鈴がゐた。




