表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

欲望の二片「坂を下れば、暖色が煌めく」

扉が開いた瞬間、

冷や汗が全身から沸いてきていた。

まるで、怪物にバリケードを突破され、

食べられる寸前のような…

そんな感じの…

「……」

「……」

海東高校の制服を着た家主は、

私を見るなり、とても不思議そうな顔をした。

「……」

大きな穴の開いた天井と私を交互に見て、

ただ黙り込む。


彼女の紐リボンがひらひらと蝶のように舞うのを一瞥してから、

私はゆっくりと目線を下げていく。


早く謝らないと。

私のミスだから。

…でも、結局なんていえば…


「おじゃましております。」


「……」

「……」

…何を言ってるんだ、私は。

絶対、言葉選び間違ってるよ。

「……」

再び目線を落とした私は、

自分だけの世界に閉じこもることを選択していた。

だが、


「怪我してませんか? 大丈夫ですか?」


どうやら、彼女は世界線では違った。

「……」

「大丈夫です」

「なら、よかったです」

彼女の柔らかいオーラは、

私にはなんだかちょっとまぶしかった。



「崖から落ちたんですか?」

「…はい」

天井の開いたリビングの椅子に腰掛け、

私は事情を話していた。

「なら、すぐにでも病院に行ったほうがいいです」

「そうなんです…か」

「万が一、頭を打っている可能性もあります。少し歩けば、病院がありますので、早くそちらに向かいましょう。」

「…はい、わかりました。」

私は、少し胸を抑え、

紙コップに入った水をゆっくりと飲み干し、

彼女を追って外に出た。

「大丈夫ですか、まっすぐ歩けますか」

「大丈夫そうです。わざわざ気にかけてくださって、ありがとうございます」

「何かあったら、すぐにおっしゃってください。肩をお貸ししますので」

その後、彼女は私の前をゆっくりと歩きながら、

適度な距離感を保ちながら坂を下ってくれた。

夕焼けの暖色のせいか、

彼女はまるで幼子の手を取る大人のようだった。


「……」


診察をした結果は…といえば、

特になにも異常はなかった。

かすり傷だけで、大きな怪我はどこにもなかった。

何かあればまたすぐに来るようにとだけ、

お医者さんに言われた。

「怪我がなくて、よかったわね。黒」

「お母さん、また迷惑かけて…」

「いいのよ。崖のところにガードレールがいけないのよ」

お母さんは私が謝る前に言葉をさえぎり、少しなぐさめるように言った。

「前にも怪我した人がいたそうだから。」

「……」

「……」

「でも、怪我がなくて本当によかった。」

ここでひとつ、忘れていたのは、

助けてくれた彼女の名前を聞き忘れたことだった。

屋根の修理の関係で、連絡先はもらったのだけど…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ