すごい話だけど予想はできたんだよなあ
ジークレフに、茶を飲みに来いとまた呼び出されたので、私は杖をついてよたよたと空間の裂け目をくぐった。呼び出されたのは私だけ、現場に行ってもジークレフだけで、チャチャちゃんはいなかった。
ジークレフにはまた香り高いお茶とおいしいお菓子で歓待され、そのうちにこう言われた。
「呪いを解き終わったら、魔国に来ないか?」
魔国に? そりゃ魔力に関する技術は高いし、ジークレフみたいな人が多いなら住み心地は悪く無さそうだけども。
「うーん、交流や滞在はしたいですが、軸足は生まれ育った国に置きたいので……」
「一時的な滞在だけでもいい。不老長寿に興味はないか? それに、中年から青年に若返らせることならできるぞ?」
やたら魔国を推してくるなあ、これは、多分、やっぱり。
「あー、興味はありますが、その、あなたの言いたいことは、魔国に来て王族の子供産め、じゃありません?」
私がそう言うと、ジークレフは目を見開いた。
「……わかったか」
「まあ、魔国でも魔力の強さ重視で王を選ぶ理由にもなると聞けば……魔力強い人間の血を入れたいのかなと……」
「……もう少し、距離を詰めてから持ちかけようと思っていた」
「んー、子供欲しくないわけじゃないので、精子提供なら普通に産みますよ。でも医療的支援と無痛分娩とある程度の報酬と生活の保障はつけてください」
「いいのか!?」
ジークレフは思わず立ち上がった。いいよ、自分の子供持つ経験はしてみたいから。これまで時間と経済力が許さなかっただけで。
私は追加の条件を述べた。
「あと、育てられなくてもいいけど、私が母親って公表して定期的に会わせてください。それと、やるとしても呪いがなんとかなってからですよ」
「それはもちろんだ」
ジークレフは浮足立った。
「その、若返りの魔法だけでも今かけていかないか? 不老長寿はまた考えるとしても」
「高齢出産の年齢ですもんね、私」
私は少し考えた。
「そうですね、見た目は普通に老けていくけど、身体能力だけ二十歳にするってできません?」
ジークレフは不思議そうだ。
「見た目はいいのか? いや、今もかなり若く見えるが」
「見た目若い女で得したことないんですよ、舐め腐った男ばっかり寄ってくるし」
チビで童顔の女は特に舐められやすい。私の場合、乳目当てで寄ってくる男もたくさんいるし……。
ジークレフは言った。
「見た目以外を若返らせるというのは難しいが、老けた見た目にする魔法ならすぐ提供できる」
「じゃあ、それでお願いします」
ジークレフが手を打ち鳴らすと、緑の衣の人間が現れ、注射の用意をし始めた。デザインが白衣なので、こっちでは緑が医療従事者の色らしい。ていうか、用意してたんかい。
「若返りの魔法は、血管に注入する」
「そうなんですか」
「老けた見た目にする魔法は、腕輪か首飾りで提供できる」
「では腕輪で。首飾りは碧水石のペンダントと被っちゃいますから」
「分かった、腕輪なら用意がある」
そういうわけで、注射したらあっという間に若返ってしまった。すげー! 肌すべすべ! 体軽い!
「いきなり体調が良くなりましたよ……」
ジークレフは、自分の腕輪を外した。
「この腕輪を渡す。身に着けていれば魔力で動作する。年齢は目盛りで調節だ。あと、これはもともとのものだが、簡単な防護の魔法陣もついている」
「どんな防護ですか?」
「ある程度の呪いよけ、ある程度の物理的クッションだな。多少の高いところから落ちてもケガをしない」
「いいですね、日本とサマセットに提供しません?」
「この程度の効果のものなら、ティースタ・バレイが簡単に術式を作れるだろう」
「なるほど」
腕輪を見ると、30〜90の目盛りと、東洋竜の意匠つき。ジークレフは竜の意匠を指して行った。
「竜の意匠は王族関係のものしかつけられない。魔国で何かあれば、それを見せろ」
あ、それで自分のをわざわざくれたの。
「感謝いたします」
ジークレフ、やっぱり相当偉いんだな。味方につけて、損はなかったのかもしれない。




