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私が勇者だったって絶対バレちゃいけないんですけど  作者: zingibercolor
2章

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29/33

まあこれで文句は言わせないから

 サマセットの政治行脚と会議行脚が一段落した日の夜。転移門のそばに借り上げている家で一息ついてると、クラレンドが皆に深刻な顔で言った。


「相談したいことがあるのだが……」


 なんだなんだ?

 フィーユも心配そうな顔だ。


「どうしたの?」


 サーボはクラレンドを促すようだ。


「俺は大丈夫だと思うよ。みんなもそう言うって」

「しかし、なかなか踏ん切りがつかない……」


 ティースタも不安そうな顔をしている。私は口を開いた。


「お聞かせ願えれば幸いです。全員で考えればいい案が出るかもしれませんし」


 三人よれば文殊の知恵、5人いればもっと。

 サーボが「話しなよ、千春さんもいるしさ」とまたクラレンドを促し、クラレンドは話しだした。


「実は……父に会わなければいけないんだ」


 クラレンドの父親は軍人の家系、クラレンドを無理やり男にして軍に入れた張本人だ。

 クラレンドは、父親に女の自分を奇異の目で見られるのが心配で仕方ないそうだ。なんと、女だと公表したその時から父親に会うのを避けてきたという。

 私は『セン』としてクラレンドの父親に顔合わせしたことがあるが、いかにも軍人って感じの怖そうな爺だったしな……。

 クラレンドは、喉仏や肩幅などの男性の特徴を隠し、ウエストをしぼって女性らしい曲線を見せることはできているが、服は合うものがないのか、正直似合うとは言えない。多少は髪も肌も整えるようになったけど……。

 ……脱ぐか、ひと肌!

 私はクラレンドに言った。


「服からですね、まず」

「しかし、私に合うようなものはオーダーメイドしかない。とても間に合わない……」

「いつお父上とお会いするのですか?」

「明日だ」


 もっと早く言えよ!

 しかし、準備は抜かりない。


「服は、いいかなと思うのがありまして。2時間私の国に戻してくれたら、いろいろ持ってきます」

「2時間で戻ってきてくれるのか?」

「十分すぎるくらいです」


 こっそり転移門をくぐらせてもらって、私は自分の家に飛んでいった。そして必要なもの、いるかなと思って用意していたものを端からバッグに詰め込んで、また飛んで戻る。


「クラレンド様でも入る女服と、高級ヘアオイルと、化粧品持ってきました。これで磨き上げていきましょう」


 私は、まずクラレンドを安心させようと思って、用意しておいたトールサイズの女性服を広げた。北欧ブランドの、185cm女性に十分合うやつ。


「ちょっと着てみましょうか、手伝いますから」

「お願いしたい」


 コルセットと朱色のロングスカートでウエストを作り、爆乳が入るトップスを着せ、カーディガンで肩幅を隠す。ヘアオイルとコテで髪を整える。さらに髪を綺麗に結い上げて、きっちり化粧して完成。


「明日は、こんなもので大丈夫でしょう」


 サーボが「すげー美人だよ……」とつぶやき、フィーユは「お姫さまみたい」とため息をついた。ティースタは、クラレンドの見慣れぬ姿に人見知りを発動して、フィーユの後ろに隠れておどおどしている。クラレンドが苦笑した。


「私は私だぞ?」

「だって、別の人みたいに見えるんだもん……」


 そういうわけで、翌日、私たちはクラレンドの実家シンブリー家に行くことになった。

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