クラレンドと『千と千尋』
千春氏はに本当に助けられている。彼女と居ると、安心して落ち着く。それを年末の休みにサマセットの家で仲間たちに話すと、皆同意してくれた。
フィーユが笑いながら言う。
「なんだかんだでティーも懐いたし」
人見知りを気にしているティースタは「猫みたいに言わないでよ」とすねた。
サーボも言う。
「千春さん、すごく落ち着いてるし、やさしいよな」
「そうだな。檜山氏もよくやってくれるが、彼は日本を第一に考えているから……千春氏は、われわれのことを一番に考えてくれている」
「うんうん」
千春氏がいれば、セン探し以外は安心できると思う。セン探し以外は。
私は思い返した。檜山氏から『セン』は偽名の可能性が高いと聞いたことを。
彼は私と二人だけの席で説明してくれた。
「センという名前は、日本ではあまりありません。それに、彼は名字も名乗らなかったのでしょう?」
「確かに、名字を聞いたことはない」
「……日本の有名な映画に「千と千尋の神隠し」というのがありまして」
「セン? 映画?」
「千尋という少女が主人公なのですが、彼女は呪いにより千尋という名前を奪われて、千という名前にされてしまうのです」
檜山氏は、ホワイトボードに『千尋』と『千』と書き、同じ字の千だが読みが違うことを説明してくれた。そして言った。
「名乗れない、名前を奪われている、そんな人が名前を聞かれた時、この映画を思い浮かべてもおかしくないと思います」
「では、センは偽名……」
「その可能性を考えるべきです。ナグリ関連の人間は散々洗いましたが、センという名前の人間はついぞ出てきませんでしたし」
そんな……。
セン……私たちに名乗ったのは、本当の名前ではなかったのか?
なぜ名乗れなかったのだ? 理由があるのか? 私は……あなたの本当の名前を知りたい。




