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私が勇者だったって絶対バレちゃいけないんですけど  作者: zingibercolor
1章

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21/33

ひとまず死んではいないから!

 私たち、そして外務省、さらなるお偉方との話し合い後。呪いについてはサマセット国の人員で調べつつ、日本はクラレンドたちと普通に技術供与の話を進めていくことになった。

 魔力をそのまま電力に変換する技術はまだない。しかし、魔力を熱に変換すれば火力発電所と原子力発電所を流用して発電できるし温暖化ガスも出ない。なので、電力会社からは歓迎されているし、日本の実証実験はどうなるのかと全世界が注目している。しかも、魔力をほぼ無尽蔵に蓄えてる私がいるときたもんだ。

 魔力を熱に変換するのは簡単な術式でできるので、後は制御の問題。ティースタ初め何人かの術者が来て日本の技術者と打ち合わせる日々が続いた。私とフィーユはティースタをなだめる係、リモート会議では私が通訳して打ち合わせ。碧水石は対面じゃないと効かないのだ。

 そんでもって、私の魔力をバチクソ詰めた魔力庫(魔力版バッテリーみたいなもん)を何度も実証実験に使い、概ね期待通りの結果がでた。

 私は電気会社のお偉方に「うちに!」「いやぜひうちに!」みたいに言われて辟易したが、サマセットの呪いもあるので、定期的な魔力提供をしますと言うことで手打ちにしてもらった。

 ティースタは、そんな私に不思議そうに聞く。


「その、千春さんは魔力供給で疲れませんか?」

「いえ、特に」

「センよりすごい……」


 ティースタは感服してため息をついた。

 サマセット国がある世界に行った私の部位は右目のみ。で、私の体が全部右目並の魔力を持つとすれば、そりゃ『セン』よりすごくなるだろう。

 クラレンドは、檜山氏といろんな国のお偉方と会って、お互いの技術供与その他の約束を取り付ける日々を送っている。サマセットにも日本および外国の技術や役立つ商品も流れ始めた。

 クラレンドたちが来たのが2030年初冬。そして、2030年はもうすぐ終わる。

 年末になって少し暇になった。私たちは、みなとみらいランドマークタワーに設けられたオフィスを拠点としているのだが、私とクラレンドとサーボもそこにいるけど特に差し迫った用事がない、みたいな時間ができた。

 私は二人に話しかけた。


「年末年始はサマセットもお休みですか?」


 サマセットの暦は日本と変わらないし、ズレてもいない。まあ、聞かなくても飲み騒ぐ日だって知ってるけど、私。

 クラレンドは、浮かない顔で答えた。


「一応休日で、祝う日だが……あまりそういう気分になれない」


 え、クラレンド疲れてんのかな、と思ったら、サーボが気遣わしげな視線をクラレンドに向けた。


「だ、大丈夫だって! センの兄貴にはきっと会えるって!」

「しかし、まったく手がかりがないし、名乗り出てもくれない……」


 クラレンドはうつむく。


「……亡くなっているかもしれないんだ、彼は。戻る直前、車に轢かれたからあっちでどうなってるかわからない、と言っていた」


 あ、やべ、それで落ち込んでるのか! ど、どうしよう、掛ける言葉が見つからない。

 クラレンドはつぶやいた。


「……亡くなっているとしても、せめて、墓に参りたい。だから、どうしても見つけ出したい……」


 サーボがあわてる。


「そ、そんな事言うなよ! 生きてるって! きっとちょっとしたケガで済んでるよ!」


 うん、車に轢かれたにしてはちょっとしたケガだった、あんたが正しい。それに墓もないよ、生きてるから!

 私は、できるだけ表情を崩さずに言った。


「私にできることがあれば、ご協力いたしますから」


 クラレンドは顔を上げ、少し笑った。


「ありがとう、その言葉だけでうれしい」


 ク、クラレンドに落ち込んでほしくない! てか、死んだものと思ってもなお探す気なのかこの子!

 ……なんかなあ、「生きてるし無事だけど、名乗り出られないよ」を伝える必要があるのかなあ。

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