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芯界  作者: カレーアイス
第五章 歪な二人
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回答入手(犯罪)

 俺たち五人は寮の部屋に戻り、食卓についた。

 いつもはジュズが座る、誕生日席に俺がつき、話を始める。


「俺に聞きたいことは色々とあると思うけど、一つだけ教えて。お前らどこにいたの?」

「普通につけてたわ」

「そんなに堂々と言われましても……」

「友達が知らない女の子とデートしてたら、ついてくよ」


 まあ確か、に?

 俺も逆の立場ならやるかもしれないと、無理やり自分を納得させ、質疑を交代する。


「あの女の子は誰なの? ジャックハートさんとの関係は?」

「今から全部説明する」


 人の秘密を勝手に暴露するようで気が引けたが、彼女らはもう無関係ではないので、話すことにした。

 街中でハートと出会い、ジャックから二重人格の話をされたこと。

 ハートと何度かデートし、消えないよう説得したこと。

 そして……消えようとしていたのは、ジャックに脅迫されたせいだったこと。


「そんなことがあったのね」

「ああ」


 あまりに特殊な状況に、他の三人はまだ飲みこめていないようだったが、シュヴァリィだけはいち早く納得したようだった。


「つまり、あのジャックとか言うのを斬ればいいんですね」

「まあ、そう――だな!」


 窓から飛び出そうとしたジュズを引き留め、話を戻す。


「そういう訳で、決勝の試合、俺は先発で出る」

「……勝算はあるのKA()?」

「ああ」


 ジャックの芯界は、無限に湧き出す犬の軍団。

 飛行能力は無いので、シュヴァリィのドラゴンならば、有利に立ち回れるだろう。

 処理能力不足も、数と噴火で補える。

 問題は――アイツが、まだ手を隠していそうなことだ。

 本戦の試合において、ジャックは全てを数の暴力で轢き殺してきた。

 まだ奥の手を抱えている可能性は十分ある。


「まあ、ハートを助けるためには、やるしかないか。ジャックを――殺す」


 重い一言。

 人殺しの経験は、一度もない。

 覚悟を決めるための、自分への誓言だった。

 しかし、


「それでいいの?」


 イースが、待ったをかけた。


「……仕方ないだろ、ハートを助けるにはそれしか――」

「ラギナは、ジャックさんのことを、どれくらい知っているの?」

「それは――」


 容姿、口調、戦法――ハートへの対応、くらいだ。

 それも、正しいとは限らない。

 俺は、まだ彼女の――彼女らのことを、何も知らない。

 どうしてジャックが生まれたのか、どれくらい一緒にいたのか、どちらかを、殺すべきなのか。


「後戻りは、できないよ」

「わかった、時期尚早だった。決断は、もう少し調べてからでも遅くないな」


 腹を括って、楽しようとしていた。

 人の命を預かるなら、責任感を持たなければ。


 張り詰めた空気が緩むなか、シュヴァリィが口を挟む。


「とはいえ、決勝は明後日よ。調べる時間はあるの?」

「ああ、ある」


 犯罪なのでとても気が引けるが、殺人よりマシだ。


「何とかならないことは無い」

「そう。なら、今すぐ取り掛かりなさい」

「わかった。勉強部屋使うからなるべく来ないようにしてくれ」

「はーい」


 一番勉強部屋を使うイースの返事を聞いてから、リビングを出て、部屋に篭った。


 胸に手を置き、芯界を書き換えながら、嘯く。


「テトレディさんの教えを忘れるところだった」


 心の中で猛省し――書き換えが完了した。



Toughive(タッケイヴ) log(ログ) books(ブックス)




「過去を見れるのがマプティルだけだと動きにくいよ〜。ラギナ君、コピーして!」

「また酔った勢いでそんな……マプティルさんが嫌がりますから」

「してもいいよ」


 ……意外な答えにギョッとし、彼女の方に振り返った。

 珍しく本から顔を上げ、ジッと俺を見ている。


「マプティルさん、もしかして俺のこと――」

「代わりにコレ、教えて」


 彼女が俺に見せたのは……日本語(・・・)で書かれた、本だった。


「ッツ!?」


 日本語。

 この世界には存在しない、異界の言語。

 反射的に本を奪い取り、パラパラとめくってみると、その正体がわかった。


「俺の、過去の本」

「そう。私の芯界は、触れた相手の過去が書かれた本を蔵書する、図書館。アナタの本も当然ある」

「ッ――」


 深く読み込むと頭痛がしそうなので、一旦本を返した。

 彼女は、その本をパラパラとめくりながら、


「他のどの言語と似ても似つかない。文字も文法も何もかも。けど、確かに文が書かれてる」


 マプティルさんはパタンと本を閉じ、身を乗り出して言った。


「私は、この本の内容に興味がある」

「……」

「だから、取引。私はこの本の内容を一切口外しない。アナタに芯界を提供してあげる。だから――糸口(ヒント)を、ちょうだい」


 マプティルさんの目は、怪しげに光っていた。



 俺が、今まで触れてきた人の、生まれてから触れるまでが記載された本が並ぶ、不思議な書館。

 許可無しに芯界で人を解析するのは犯罪だが――バレなきゃセーフだ。


「ジャックハート・トラヴェッド」


 名前を言うと、一冊の本が吸い込まれるように飛んできた。

 表紙には名前だけが記載された、辞書のように分厚い本。

 これを、一日で読破する。


「さて……やるか」


 覚悟を決めて、本を開いた。




 芯界戦闘決勝戦。

 先発のジャックと俺は、会場で睨み合っていた。


「逃げなかったことだけは褒めてやる」

「……」

「なにか言ったらどうじゃ」

「言いたいことは色々あるけど、勝ってからじゃないと聞かないだろ。だから――」


 胸に手を置き、宣言する。


「絶対に勝つ」

「いい殺気じゃア」


 両者目をバチバチに光らせ、準備が完了しーー気圧されたのか、少し遅れて審判さんが戦闘の火蓋を切った。


「開始」

Magirl(マギアル)

Fusrest(フュースレスト) |barsusanimaバーサスアニマ


 芯界で許可なく他人のことを詮索するのは犯罪になってます。

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