ヒーローの形
遅くなってすみません。鬱展開書いてたら心が折れました。
こういうの向いてないと思った。
読んでる人がいなかったら次話は多分無い。
広がるのはアメの世界。いつもの広間。
しかし、今回使うのは俺の芯界――ではなくハートから貰った芯界だ。
まだ一回しか使ったことがないので、練度不足だが、挙動は似てるので問題ないと判断した。
ハートの芯界は、使用者を願望の魔法少女にするというものだ。
彼女の場合は「自分がなるならアサシンかな」と思っていたので、アサシンハンターとなった。
そして、俺はというと、「男の自分は魔法少女にはなれないから――男の、ヒーローになりたい」と思っていた。
つまりは、そういうことだ。
手の中にあるベルトを握り、宣言する。
「変身」
足元からアメのカーテンができ、俺の体を覆い隠す。
その中で、アメが兜、鎧となり、俺はそれを装着した。
カラフルなアメのフルアーマー。身体能力がみるみる上がるのを、肌で感じる。
変身を隠していたアメを取っ払い、ポーズをキメた。
「参上……キャンディ仮面」
「ふざけとるのか?」
そんなジャックの言葉が聞こえたかと思うと、大量の犬の軍団が押し寄せてきた。
ジャックの芯界から無限に現れる、無数の暗黒犬。
「来い!」
アメを纏ったカラフル右腕で、その先頭の犬を、真正面から殴り飛ばした。
「ヴァア!?」
「オラオラオラ!」
次から次へ飛び掛かる犬を、拳のラッシュで押しのけていく。
時々撃ち漏らして腕や足を噛まれたりするが、全身のアーマーのおかげでびくともしない。
逆に喉にアメを詰まらせ、再起不能にさせた。
〈Dream of bandy〉と違って細かいアメの操作はできないが、こっちには身体強化とアーマーがある。
凄まじいパワーで、犬どもを近づかせないことができる。
要は、フィジカルによるごり押しだ。
「飴爆!」
握りしめた拳から繰り出されたパンチからアメが炸裂し、周囲の犬を吹き飛ばした。
「こんなものか」
十数秒、犬の嵐の中にいて、その強さが大体分かった。
やはり、一匹一匹は大したことがない。
例えるなら、大きくなって攻撃が当たりやすくなった代わりに、火力が増した蜂だ。
変身中なら、このように耐久することができる。
問題はその数だ。
このままだと、間違いなく犬を倒し尽くす前に俺の体力が切れる。
ゆえにこれから、攻勢に出る。
「来い……アモード」
ブウウウウウン!
芯界の奥から、アメでできたサーフボードが、飛んできた。
押しかける犬の群れからジャンプで抜け出し、ボードの上に乗る。
「飛ばせ!」
ブウウウウウン!
アメのジェット噴射が強くなり、速度が増した。
今回この芯界を起用した最大の理由、高い機動力。
地上の犬どもをスルーして、一気にジャックの芯界に乗り込んだ。
黒と灰しかないモノクロの荒野。
その奥にある、小高い丘の上に、ジャックは立っていた。
「ジャック!」
「チッ」
ボードから飛び降り、上から拳を叩きつけるも、不発。
ジャックの前髪に触れ、地面にひび割れを作るだけとなった。
「まだまだ!」
「ヴァン!」
すぐに二撃目を叩き込もうとしたが、間に割り込んだ犬によって阻まれる。
ここは無数の猛犬の真っ只中。
四方八方から襲いかかる犬の対処を余儀なくされる。
「外装展開!」
鎧を大きくして攻撃範囲を拡大し、正拳突きで一気に四匹の犬を吹っ飛ばした。
その間に背後から迫る犬を肘打ちで退け――
「ヴァン!」
「ッ!」
上から跳んできた犬に、肩を噛みつかれた。
すぐに振り解くも、その一瞬の隙が命取りとなり、一気に犬の軍団に押し潰される。
「うぐっ!」
全身を押さえつけられ、身体中に歯が突き立てられる。
アメの鎧も無敵ではない。徐々に削れて、俺自身にもダメージが入る。
完全に押さえつけられている状況。
ここから離脱するには――アレをやるしかない。
「アモード!」
俺が叫んだ瞬間、空中で加速を続けていたアメのボードが、向きを変え、地面に落ちてきた。
着弾地点は、俺のすぐ側。
ドォン!
小隕石が落下したかのような、凄まじい衝撃。
犬たちは吹き飛ばされ、僅かに残ったのを払いのけて、俺は立ち上がった。
「危ねえ、死ぬかと思った」
「ヴァン!」
解放され、安心したのも束の間、すぐに新しい犬が襲いかかる。
しかし、俺は冷静に、地面に刺さったボードに手をかけた。
「いくぞ!」
瞬間、キャンディボートが膨張し……爆発した。
再度集まっていた犬は吹き飛ばされ――俺も、ジャックのいる方向に吹き飛ぶ。
背中の衝撃に歯を食いしばりながらジャックに向かって拳を振りかぶった。
「オオ!」
彼我の距離はたった数メートル。
これだけ軍団に力を裂いていれば、本体の強化はほぼ無い。
ヒットすれば一撃必殺。
のハズだった。
「ラギナさん!」
「ッ!」
急にジャックのからハートの声がして、拳が、止まった。
「ぬるいわ!」
突き出した腕を掴んで、背負い投げ。
肺を打ちつけ、一瞬息ができなくなる。
「ッガァ!」
「甘っちょろいのよ、テメェは……冥土の土産に見せてやる」
「ヴァン!」
俺に迫っていた犬が、急に向きを変え……ジャックに向かって、駆け出した。
さっき俺がされたように、大量の犬に押し倒され、噛みつかれ、もみくちゃにされていく。
犬の数が増え、外からではジャックの様子が全く分からなくなった頃、急に犬が出てこなくなった。
そして、団子になっていた犬が収縮し――残ったのは、全然違う風貌をしたジャックだった。
爪は長く、犬の耳をはやし、犬歯が異常に長い。
「一撃で死ぬなよ」




