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現代JKダン活部!〜放課後はダンジョンしか勝たん〜  作者: 飯山知 春。


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第6話 じゃあ三人でダンジョン行く?

「眠い」


朝のホームルーム前。


みつみは机に突っ伏したまま言った。


「知ってた」


隣から千尋の声が返ってくる。


「何が?」


「昨日寝るの遅くなるって」


「でもちゃんと寝たよ」


「何時?」


みつみは顔を上げた。


「……二時ちょい」


「それをちゃんと寝たとは言わない」


「六時半まで寝た」


「四時間じゃん」


「四時間半」


「そこ重要?」


「三十分は大きいよ」


みつみは欠伸をしながらスマホを取り出した。


画面には、昨夜開いたままのページがいくつも残っている。


「でもさ、めっちゃ面白かった」


「全部見たの?」


「全部は無理。山花さん送ってくる量おかしいもん」


「全部って言ったの、みつみじゃん」


「そうなんだけど」


少し離れたところで鞄を整理していた志帆が、こちらを見る。


「まだ全部送ってないよ」


みつみの手が止まった。


「え?」


「昨日送ったのは、とりあえず最初に見ればよさそうなのだけ」


「まだあるの?」


「あるけど」


「山花さん、何個保存してんの」


「数えたことない」


千尋が笑った。


「やっぱ詳しいじゃん」


「調べただけ」


志帆はそう言って、自分の席に座る。


否定しているわりに、少しだけ嬉しそうだった。


みつみはスマホの画面を志帆へ向けた。


「で、私これがいい」


志帆が覗き込む。


「魔法系?」


「うん。昨日いろいろ見たけど、やっぱり魔法使いたい」


「ほかのジョブも見た?」


「見たよ。一応」


「一応なんだ」


「途中からずっと魔法のページ見てた」


千尋が言う。


「最初から決まってるじゃん」


「でもちゃんと調べた結果だから」


「四時間半睡眠で?」


「そこ関係ないでしょ」


みつみはスマホを自分の方へ戻した。


昨夜、知らない用語を検索して、別のページを開き、そこにまた知らない言葉が出てきて、さらに調べた。


気づけばタブが増え続けていた。


結局、分からないこともたくさん残った。


それでも、一つだけ変わらなかった。


魔法を使ってみたい。


そこだけは、調べる前よりむしろ強くなっている。


「でもさ」


みつみが志帆を見る。


「ネット見てるだけじゃ、分かんないとこ結構あるね」


「あると思う。書いてる人によって説明違ったりするし」


「山花さんでも分かんない?」


「分かんないよ。私、実際には行ったことないし」


その言葉で、みつみが少し止まる。


昨日も聞いた。


志帆はダンジョンについてよく知っている。


でも、行ったことはない。


「ねえ」


「なに?」


「山花さんって、なんで行かなかったの?」


志帆はすぐには答えなかった。


「なんでって言われると……」


少し考える。


「一人で行くほどでもないかなって思ってたから」


「そんなに調べてるのに?」


「調べるのと行くのは別じゃない?」


「そう?」


「そうだよ。登山の道具とか見るの好きでも山登らない人いるでしょ」


「いるか」


「それに、行くならちゃんと準備してから行きたいし。一人で初めて行くのも、ちょっと」


最後の言葉だけ、少し小さくなった。


みつみは千尋を見る。


千尋もみつみを見る。


ほんの一瞬だった。


「じゃあ一緒に行く?」


みつみが言った。


志帆が瞬きをする。


「え?」


「ダンジョン。今度三人で行けばいいじゃん」


「そんなすぐ?」


「だって行きたいんでしょ?」


「興味はあるけど」


「じゃあ行こうよ」


みつみにとっては、それだけで十分だった。


志帆は少し困ったような顔をする。


「いや、でも私、まだ何も持ってないし」


「買えばいいよ」


「承諾書もいるし」


「それも用意すればいいし」


「日程も――」


「決めればいいじゃん」


一つ言うたびに、みつみが一つ返してくる。


志帆が千尋を見る。


「川咲さんは?」


「私はいいよ」


千尋の返事はあっさりしていた。


「最初なら、この前みつみ連れてったところでいいと思うし。山花さんが行きたいなら一緒に行こ」


「……いいの?」


「二人でも三人でもそんな変わんないし」


みつみが横から言う。


「私は変わるよ。三人の方が楽しいじゃん」


「まだ行ってないでしょ」


「行く前から楽しい」


「それは分かんない」


志帆が少し笑った。


その顔を見て、みつみはさらに押す。


「いつ空いてる?」


「もう日程?」


「そこ決めないと行けないじゃん」


「そうだけど……」


志帆はスマホを出した。


千尋も出す。


みつみも当然出す。


三人のカレンダーを見比べる。


「この土曜は?」


「私ダメ」


「じゃあ日曜」


「日曜は空いてる」


「千尋は?」


「私はいける」


「決まり」


「ちょっと待って」


志帆が止める。


「まだ来週もあるでしょ」


「なんで延ばすの?」


「いや、準備」


「一週間あればできるって。私もそれくらいだったし」


「みつみ基準にして大丈夫?」


千尋が笑う。


「大丈夫だよ」


「本人が言ってもなあ」


結局、その週末ではなく、もう少し余裕のある日を選ぶことになった。


五月後半の週末。


三人の予定が合う日。


カレンダーに予定を入れたみつみが満足そうに頷く。


「よし」


志帆は自分の画面をしばらく見ていた。


『ダンジョン』


自分で入力したその文字が、少し不思議そうだった。





昼休み。


「何見てんの?」


佳奈子が椅子を持ってきて、みつみたちの近くへ座った。


机の上にはスマホが三台。


真ん中には志帆の画面が置かれている。


「ダンジョン用品」


みつみが答える。


「あ、また?」


「今度は山花さんの」


「私?」


志帆が顔を上げる。


「山花さんも行くことになった」


「へえ」


佳奈子はそれだけ言うと、みつみの机に置いてあったお菓子へ手を伸ばした。


「これもらっていい?」


「いいよ」


「ありがと」


袋を開けながら、志帆のスマホを覗く。


「靴?」


「うん。まだ候補だけど」


「普通にかわいいじゃん」


「そう?」


志帆が少し画面を自分の方へ寄せる。


「でも機能的にはこっちの方が良さそうで」


別の写真を出す。


佳奈子が二つを見比べた。


「私は最初の方が好き」


「でもこっち、防水が――」


志帆が言いかける。


みつみが笑った。


「始まった」


「何が?」


「山花さんの説明」


「まだ何も説明してないけど」


「これからする顔だった」


志帆が少しむっとする。


「だって、見た目だけじゃ決められないでしょ」


「そういうところ」


千尋が笑う。


佳奈子はお菓子を食べながら、


「私はかわいい方買う」


と言った。


「歩きにくかったら?」


「じゃあかわいくて歩きやすいやつ探す」


「それがあれば一番いいけど」


「探せばあるんじゃない?」


「サイズもあるし、重さも――」


「ほら始まった」


今度は千尋が言った。


志帆が黙る。


それから、


「……別にいいけど」


と小さく言った。


みつみは笑いながらスマホを取り出す。


「じゃあ今日、放課後見に行こ。履かないと分かんないし」


「今日?」


「予定ある?」


「ないけど」


「じゃ決まり」


「涼木さん、決めるの早いよね」


「そう?」


千尋と佳奈子が同時に、


「早い」


と言った。


「二人で言わないでよ」


四人が笑う。


志帆も少し遅れて笑った。





放課後。


三人は、みつみが最初の装備を買ったアウトドアショップに来ていた。


「ここなんだ」


志帆が入口を見上げる。


「そう。私もここで靴買った」


みつみは自分の足元を指した。


今日は学校帰りなのでローファーだが、それでもどこか得意げだった。


「店員さんに聞けばちゃんと見てくれるよ」


「それは分かってる」


「私より詳しそう」


「だから調べてるだけだって」


店へ入る。


前回のみつみは、並んでいる道具のほとんどが何なのか分からなかった。


今日は少し違う。


知っているものが増えた。


ライト。


手袋。


靴。


バックパック。


自分が使っているものと似た商品もある。


「ねえ山花さん、ライトはこれ系でいいよ」


みつみがヘッドライトを指す。


志帆が見る。


「それ何ルーメン?」


「……なにそれ」


「明るさ」


「知らない」


「使ってるのに?」


「光ればいいじゃん」


「よくないでしょ」


千尋が吹き出した。


「山花さん、みつみより初心者なのにもう詳しい」


「知識だけだから」


志帆は棚の商品表示を見比べ始めた。


「こっちは明るいけど、その分重いな……でも長時間使うならバッテリーも――」


みつみが千尋へ小声で言う。


「長くなりそう」


「なりそうだね」


「私これ、見た目で決めた」


「知ってる」


「それで困ってない」


「たまたまね」


志帆が振り向く。


「二人とも聞こえてるよ」


「ごめん」


みつみは笑う。


でも、志帆が商品を見る姿は、少し楽しそうだった。


靴売り場でも同じだった。


履き心地を確認する。


歩く。


別の靴を履く。


また歩く。


みつみのときより時間がかかる。


「これ、さっきのより踵が動かない」


「じゃあいいんじゃない?」


「でも少し重い」


「どっちがいいの?」


「考えてる」


「山花さん、買い物長いタイプ?」


「こういうのはね」


「服は?」


「服はそんなかからない」


「違うんだ」


「用途がはっきりしてる物はちゃんと選びたい」


千尋が頷く。


「それは分かる」


「でしょ?」


初めて、志帆が少し嬉しそうに千尋を見る。


その横で、みつみは暇になって棚の小物を眺めていた。


「あ、これ欲しい」


「何?」


千尋が見る。


小さなカラビナだった。


「何に使うの?」


「なんか付ける」


「何を?」


「分かんない」


「じゃあいらないじゃん」


「こういうの持ってるとダンジョン感ない?」


「ない」


「あるでしょ」


志帆が靴を履いたままこちらを見る。


「荷物の固定とかには使えるけど、その形なら――」


「山花さん、待って。今は見た目の話」


「見た目?」


「そう」


志帆はカラビナを見た。


「……私は別に」


「千尋も山花さんも実用性ばっか!」


「ダンジョン用品なんだから当然でしょ」


結局、カラビナは買わなかった。





店を出た頃には、空が夕方の色に変わっていた。


志帆の手には紙袋がある。


最低限、最初に必要なものだけ。


買いすぎないよう、千尋が途中で何度か止めた。


「まだ気になるのあるんだけど」


志帆が紙袋を見ながら言う。


「一回行ってからでいいよ」


千尋が答える。


「実際に使うと、欲しいもの変わるかもしれないし」


「……それはそうだね」


「私もリュック欲しかったけど、まだ家の使ってるし」


みつみが言う。


「でも次あたり欲しい」


「また買う気?」


「だってもう三回目になるじゃん」


「回数関係ないでしょ」


三人で駅へ向かう。


しばらく歩いたところで、志帆がふと口を開いた。


「ねえ」


「なに?」


みつみが振り向く。


「ダンジョンって、実際どんな感じ?」


みつみと千尋が顔を見合わせる。


「どんなって?」


「中。動画とか写真では見てるけど……二人が最初に入ったとき、どうだった?」


その質問に、みつみが少し笑った。


数週間前なら、自分が千尋に聞いていた。


暗い?


怖い?


何がある?


今度は、自分が聞かれる側にいる。


「最初はね」


みつみが言う。


「めっちゃすごかった」


「それだけ?」


「いや、ほんとに。説明しようとするとそれになるんだって」


「地面が岩で感動してたよ」


千尋が横から言う。


「それ言わなくていいから!」


「地面?」


志帆が笑う。


「だってさ、知ってるのと実際に歩くの全然違うんだよ。暗いし、水の音とかするし、ライト向けてもその先が見えないし」


みつみは少し前を向いた。


「怖いんだけど、その先が気になる」


志帆は黙って聞いている。


「千尋が先にいるから行けたってのもあるけどね」


「そうなの?」


「一人だったら無理」


即答だった。


千尋が笑う。


「それは私も一人で初心者に行けとは言わないよ」


みつみは志帆を見る。


「でも今度は三人だから大丈夫」


志帆が少しだけ笑った。


「うん」


紙袋を持ち直す。


「……楽しみかも」


みつみの顔が明るくなる。


「でしょ?」


「まだ行ってないけど」


「行く前から楽しいって言ったじゃん」


「それ、涼木さんの理論でしょ」


「みつみでいいよ」


志帆が足を止めかけた。


「え?」


「ずっと涼木さんって呼んでるじゃん。もう一緒にダンジョン行くんだし、みつみでいいよ」


あまりにも軽く言われて、志帆の方が戸惑う。


千尋が横から言った。


「私も千尋でいいよ」


「二人とも急だね」


「嫌ならいいけど」


みつみが言う。


「嫌じゃない」


志帆は少し考えてから、


「……じゃあ、みつみ。千尋」


と呼んだ。


みつみがすぐ笑う。


「うん」


千尋も、


「はい」


と軽く返した。


「じゃあ私も志帆でいいから」


「分かった。志帆」


みつみは一度もためらわなかった。


志帆が少し笑う。


「早」


「何が?」


「慣れるの」


「だって呼ぶだけじゃん」


「そうだけど」


三人はまた歩き出した。


次の週末。


みつみにとって三回目。


千尋にとっては、いつものダンジョン。


そして志帆にとっては、初めてのダンジョン。


三人で行く日が、少しずつ近づいていた。

次回、初めて三人でダンジョンへ!


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