第113話 とある放課後の雑談
六月に入って、放課後の部室は窓を開けていても少し蒸し暑くなった。
机の上には飲みかけのペットボトルと、誰かが持ってきた菓子の袋、それからスマートフォンが八人分。
全部を同じ机に載せるとさすがに狭く、佳奈子は自分の飲み物だけ窓際へ避難させていた。
「で、蔵安のボス、どうだった? 瑞穂ちゃんたち、初めてだったんでしょ」
千尋が尋ねると、瑞穂は隣の蘭々と顔を見合わせた。
「すごく大きかったです。私、最初は絵美里先輩たちの動きを追うだけで精一杯で。でも《ホークアイ》を使ったら、みんながどこにいるのか分かりやすくなって、紗希先輩に危ないって言えたんです」
「そうそう。あれ助かったよ。私、もう一発もらうところだったし」
紗希は自分の腕を軽くさすってから、笑ってみせた。蘭々はその手元を見て、思い出したように口を開く。
「私も《ヒール》で怪我を治せたんですけど、最初は本当に治るのかドキドキしました。紗希先輩、治ったあと何回も腕動かしてて」
「そりゃ確かめるって。痛くなくなったら嬉しいじゃん」
「私も初めて魔法が使えたとき、嬉しくて何回も使いたかったなあ。今回は行けなかったから、ボスも見たかった!」
みつみが身を乗り出すと、絵美里は少し笑った。
「なかなか強かったですよ。紗希と二人で前に出たんですけど、想像以上に腕が長くて。ああいう相手だと、距離の取り方を間違えると危ないですね」
「その話で思い出した。紗希ちゃん、新しいスキル覚えたんだって?」
佳奈子が尋ねると、紗希は待ってましたとばかりにステータス画面を開いた。表示されたLV5の下には《ウォークライ》の文字がある。
「これです! 攻撃力が大幅に上がるんですよ。まだ一回も使ってないんですけど、次のダンジョンで試すのが楽しみで」
「紗希ちゃん、絶対好きそう。それ使ったらもっと前へ出たくなるんじゃない?」
千尋に言われて紗希は笑ったが、絵美里は画面を覗き込みながら首を傾げた。
「だからこそ防具も考えた方がいいんだよね。通尾のときから探してるけど、写真だけ見てもなかなか決められないでしょ」
「うん。いい加減、実物を見たいんだよ。今日、帰りに用品店寄らない?」
「いいよ。着け心地も確かめたいし、一緒に見ようか」
二人が話し始めたところで、瑞穂が身を乗り出した。
「ダンジョン用品店ですか? 私、ちゃんとしたお店にはまだ行ったことなくて。見に行ってもいいですか?」
「もちろん。マルも行く?」
紗希が蘭々へ目を向けると、みつみが不思議そうに聞き返した。
「マル?」
「あ、丸潮のマルっす。丸潮蘭々、まるしお・らら。ですよね?」
「はい。名前は『らら』です。『らんらん』って読まれることもありますけど」
「まあ、クラスじゃランランって呼んでるけどね」
瑞穂が笑う。みつみも「ああ、名字のマルか!」と納得したところで、蘭々は用品店の話へ戻った。
「私も行ってみたいです。レンタルの装備しか見たことないから、どんなものが売ってるのか気になるし」
「じゃ、四人で行こっか。紗希、今日は見て選ぶだけでもいいからね。いきなり買わなくていいよ」
絵美里は念を押したが、紗希は「分かってるって」と笑いながら、すでに防具の写真を何枚か保存していた。
「志帆先輩、これとこれだったら、どっちが動きやすそうですか?」
尋ねられた志帆は二枚を見比べたものの、すぐには選ばなかった。
「見た目だけでは何とも言えないわね。肩や肘の動かしやすさは、実際に試した方がいいと思う」
「ですよね。じゃ、行って確かめます」
絵美里が鞄を持つと、紗希も立ち上がった。瑞穂と蘭々はさっそくどんな装備があるのか話しながら、二人の後ろについていく。
「あ、次のダンジョンも行きたいので、また予定教えてください!」
瑞穂の声に蘭々も頷く。
「うん、また行こう! それと、いいの見つけたら写真送って!」
みつみが声をかけると、紗希は片手を上げて応じた。四人が部室を出ていくと、廊下の向こうへ足音と話し声が遠ざかっていった。
◇
「紗希ちゃん、絶対長くなるだろうね、買い物」
佳奈子は窓際の飲み物を取りに立ち、戻る途中で半分開いた菓子の袋を机の真ん中へ押した。
「エミリンも装備のことになると結構見るからね。意外と先に疲れるのは一年生かも」
千尋がスマートフォンをしまいかけたところへ、みつみが身を乗り出す。
「ねえ、紗希ちゃんってどこから防具買うんだろ。腕? 胸のところ? 最初から全部そろえたら結構高そうじゃない?」
「それは本人が決めることだと思うけど。今日、買うって決まったわけでもないでしょう」
志帆が答える。語尾はいつもどおり穏やかだったが、視線は自然とみつみの画面へ向いた。
「そうなの。写真だけじゃ分からないことが多いし、実際に着けて動いてみた方がいいわ。紗希ちゃんの場合、守るためだけの防具じゃないものね」
「ああ、攻撃するときにもう一歩入りたいって言ってたやつ?」
佳奈子が椅子に座ると、千尋が頷いた。
「絵美里が盾で受けてくれてても、紗希ちゃんは自分で殴りに行くからさ。軽くて動けるのがいいのか、多少重くても守れるのがいいのか、そこ悩みそう」
「でも、紗希ちゃんのあれ、分かる気がするな。怖いから下がるっていうより、そこで攻撃できたら気持ちいいんだろうね」
みつみは自分の両手を少し持ち上げ、メイスを振る真似をした。佳奈子が「机には当てないでよ」と声をかけると、みつみは腕を止めて笑う。
「当てないよ! ……でもさ、私だったら、ぶつかる前に《マジックシールド》使うかも。ファイターってやっぱり近いよね。紗希ちゃん、あの距離が好きなんだろうなあ」
千尋がうなずきかけ、ふと考えを変えたらしく顔を上げた。
「そういう意味なら、みつみの《アイスウォール》も面白いよね。あれで道を分けられるから、前に出たい人の動き方も変わるし」
「まだ試してない使い方、ありそうだよね!」
みつみはすぐスマートフォンを取り出したが、何を検索するつもりだったのか、画面を開いて一度止まった。
「……何調べようとしたんだっけ」
「壁でしょ、壁」
「そうだった!」
言いながら開いたのは以前の探索写真だった。美部谷で氷の壁を使ったとき、みつみ自身には壁の向こうが見えなかったことを思い出したのだという。
「壁を作ってさ、向こうのモンスターが何してるか分かんなくなるときあるじゃん。そういうときって千尋ならどうする?」
「見えないなら、まず音とか気配かな。でも、壁の向こうを見られるわけじゃないよ。自分から動ける位置なら回り込むし、ほかの道があるならそっちも見る。無理なら待つ」
「そっか、待つのもありか」
「ありでしょ。せっかく壁作ったのに、自分からすぐ飛び出していったら意味ないときもあるし」
千尋は笑いながら答えたが、言い終えてから少し考え込んだ。自分だったらつい動いて確かめたくなる。それがいつも正解になるわけではないことは、これまでの探索でよく知っている。
志帆は二人の会話を聞きながら、ノートの端に小さな図を描き始めていた。四角い通路の途中に一本の線を引き、その左右に点を置く。
「壁をどこに置くかでも変わるわよね。直線の通路なら塞ぐだけで済むけれど、横道があるところでは、敵をどちらへ回らせるか考えないと」
「それってさ、今度行く場所の地形が分かってから考えた方がよくない?」
佳奈子が飲み物を置く。
「もちろん。今のはただ、そういうこともできるって話よ」
「うん、それなら分かる。私はその場で考える方が好きかな。先にあれこれ決めても、行ったら全然違うことあるし」
佳奈子は自分のスマートフォンに保存していた一枚の写真を見せた。ダンジョンの壁際で、四人の荷物が無造作に並んでいる。誰かが飲み物を出し、菓子の袋が開いたところを撮ったらしい。
「これ、最初は休憩する予定なかった日じゃない? でも、いい場所あったから結局座ったやつ」
「覚えてる。千尋がもうちょっと先まで見たいって言ったのに、私がここで食べようって言った!」
「みつみ、そこ自慢するところ?」
千尋が笑い、佳奈子はその写真を少し拡大した。
「でも、そのとき食べたやつおいしかったんだよね。どこで買ったんだっけ。今度また持って行きたいな」
「確か駅の近くの……あ、違う。あれはクリスマスのときだったかも」
みつみが次々と写真を開き始めると、千尋も自分の記録を探し始めた。話題はいつの間にか、氷の壁の置き場所から休憩のときに食べた菓子へ移っていた。
志帆は図の続きを描いていたが、二人の話を聞いているうちにペンを置いた。
「そういえば、あのとき持っていった飲み物、途中でぬるくなったのよね。次は保冷できるものに替えようかしら」
「え、志帆ってそういうのも調べるの?」
「調べるわよ。夏のダンジョンだと結構大事でしょう。……ただ、保冷力が高いものって、それなりに重いのよね」
「私、普通のでいいや。重いの持つくらいなら、飲みきって帰ってから冷たいの買いたい」
佳奈子が言うと、志帆は「それも一つの方法ね」とあっさり頷いた。みつみだけは保冷ボトルの話に興味を移したらしく、今度はそちらの写真を見始めている。
「こういうのって、口が広い方が洗いやすいよね。あっ、これ、色かわいい」
「もう飲み物の話じゃなくなってない?」
「なってるけど、これも大事じゃん!」
千尋は笑って自分のスマートフォンを閉じ、椅子の背にもたれた。
しばらく四人は、それぞれ別の画面を見ていた。部室の隅で回っている小さな扇風機が、机に置いた紙を時々めくる。志帆はノートを押さえ、佳奈子は膝の上へ鞄を引き寄せたが、誰も話題を決めようとはしなかった。
その沈黙を破ったのは千尋だった。
「そうだ。私、こないだ昔のダンジョンの写真見返してたんだけどさ、前と今で結構撮ってるもの違うなって思って」
「どう違うの?」
「最初の頃は道とか入口とか、後で確認できそうなものが多いの。最近はさ、休憩してる人とか、その辺に落ちてた変な石とか、行ってみて面白かったものが増えてる」
「千尋も石撮るんだ!」
「みつみほど撮らないって。あれ、みつみが拾ってきて見せたやつだから」
みつみが笑いながら千尋の画面を覗き込む。志帆もその写真を見たが、岩肌の模様の方が気になったらしく、少しだけ指で拡大させてもらった。
「確かに変わった石ね。……これ、どこだったかしら」
「そこまでは覚えてない。写真撮ったの、ずっと前だし」
「ねえ、こういうのさ、後から場所が分からなくなるじゃん。ダンジョンの名前だけでも書いといた方がいいのかな」
みつみが言うと、佳奈子は写真アプリを操作しながら答えた。
「大事なやつだけにしなよ。みつみの撮った写真全部に名前つけてたら、写真整理するだけで休み終わるでしょ」
「そんなに撮ってないよ」
「この前、同じ水面を何枚も撮ってたじゃん」
「光り方が違ったんだって!」
「うん、それは分かる。私も食べ物、同じの何枚も撮るし」
佳奈子は自分の写真一覧をちらりと見てから、少し照れたように笑った。千尋は「自覚あるんだ」と笑い、みつみも一緒に笑う。
志帆は見ていた石の写真を閉じると、大学案内の画面へ戻した。さっきから調べていたのは装備だけではなかったらしい。
「志帆、それ大学のやつ?」
千尋が尋ねると、志帆は頷いた。
「うん。気になっている学部がいくつかあるんだけれど、授業の内容を調べると、似ている名前でも大学によって結構違うのね。見始めるときりがなくて」
「その感じ、装備の比較してるときと一緒じゃない?」
「この前も同じことを言われた気がするわ。でも、今回は本当に先に決めることが多いのよ。学部が違えば、そもそも学べることが変わるでしょう」
志帆は画面を机へ置いたが、資料を閉じはしなかった。佳奈子もそれを覗き込み、自分が見ている大学の案内と比べている。
「私、通学時間見てた。志帆みたいに学部の中身まで細かくは見られてないけど、毎日行くなら近い方がいいなって。あと、帰りに寄る店があるかも大事」
「そこも見るんだ」
「見るでしょ。大学って一年だけじゃないし。ずっと通うこと考えたら、駅から遠いのも結構大変だよ」
「分かる。私も体育大の候補見てるんだけど、実際に行ってみないと分かんないこと多そう。行く機会があれば、施設も見たいな」
千尋は画面を出さず、椅子を前へ戻した。みつみはその話を聞いて、しばらく考えたあと口を開いた。
「私、調理師の専門学校の見学とか行ったら、何見るんだろ。厨房? やっぱり実習室かな。そういうところ見られたら楽しそう」
「みつみなら、料理するところ見せてもらったら質問止まらなくなりそう」
佳奈子が笑うと、みつみは少しだけ考えた。
「いや、食べさせてもらえるかも気になる」
「結局そっち?」
「だって、作ってるの見たら食べたくなるじゃん」
千尋が「分かるけど」と笑ったところで、志帆がまた画面へ目を落とした。
「志帆、進路のこと考えてると、ダンジョンのこと調べる時間なくならない?」
みつみの問いに、志帆はすぐには答えなかった。スマートフォンを伏せ、ノートの端を指でなぞる。
「前よりは時間を選ぶようになったわ。でも、何でも我慢しているわけじゃないわよ。調べものって、始めると長くなるのは大学も装備も同じだもの。今日はこっち、明日はあっち、って決めないと全部中途半端になっちゃう」
「へえ。志帆がそんなこと言うんだ」
「私だって、少しは学習するわ」
「少しなんだ」
千尋が笑うと、志帆も笑った。佳奈子はそれを聞きながら、自分のスマートフォンに残っていた進学先の候補を二つだけ保存し直し、残りは閉じた。
「私も今日はここまで。なんか大学の話してたら、お腹すいてきた。お昼、早めだったからかな」
「志帆の話と関係ある?」
「ないけど、そろそろ夕方だし」
佳奈子は平然と答え、飲み物を飲みきった。みつみは窓の外を見たが、日はまだ高い。六月になって、放課後に部室で話していても明るい時間が長くなっていた。
◇
「そうだ、次にみんなで行くやつ、どうする?」
佳奈子が空のボトルを鞄へ入れながら言った。紗希たちが用品店へ出かける前、瑞穂と蘭々はまたダンジョンへ行きたいと話していた。日にちはまだ決まっていない。
「二人とも、次も行きたそうだったね。蔵安でボス見ちゃったし、今度はどんなところがいいんだろ」
みつみが少し身を乗り出したところで、佳奈子が言った。
「私まだ一年生とダンジョン行ってないし、志帆にばっかり下級生の面倒見させるのも悪いしね。」
「え、佳奈子も行く?」
「行きたいよ。だって二人とも話聞いてるだけでも楽しそうじゃん。実際に一緒に行ってみたいし。志帆とエミリンに任せっきりなのも、なんかもったいない気がして」
志帆はそこで顔を上げた。
「気にしなくていいのよ。私も楽しくて行ってるんだから。ただ、次の休みは家の用事があって、私は行けないの」
「エミリンも次は家の用事があるって言ってたね。じゃあ、ほかに誰が行けるかな」
千尋が予定表を開く。みつみはすでに自分の画面を覗いていた。
「私、行ける! この前は行けなかったし、またララちゃんたちと歩きたいな」
「私も空いてるよ。せっかくだし行こうかな。瑞穂ちゃんたち、次は自分でスキル使えるんだもんね」
「千尋も来るなら心強い。……あ、でも待って、紗希ちゃんが行くって言ってたら六人だね」
「紗希ちゃんは休みが合えば行きたいって話してたよ。聞いてみよっか」
千尋がグループチャットに候補の日を送ると、少し遅れて紗希から返事が届いた。買い物の途中らしく、短い文章の最後には防具の写真が一枚付いている。
『その日なら行けます! 防具はまだ見てるだけですけど、これどうですか?』
「うわ、もう写真来た!」
みつみが千尋の画面へ顔を近づけた。腕を覆う形の防具が写っていたが、値札の文字は小さく、写真だけでは使い勝手まで分からない。
「これ、見た目は格好いいけど……絵美里に実際の動きも見てもらった方がいいわね」
志帆が言うと、千尋はそのまま返信した。
『今、紗希ちゃんたちの写真見てる。次の休みは千尋・みつみ・佳奈子が行けそう。瑞穂ちゃんとララちゃんもどう?』
しばらくして瑞穂から『行きたいです!』と返事が来た。蘭々も『私も行けます! また一緒に行きたいです』と続く。
「じゃあ、決まりだね。三年が三人、二年が紗希ちゃん、一年が二人」
佳奈子が指で数える。志帆は自分の予定表を確認し、少し考えてから笑った。
「その組み合わせなら、私が一緒に行ったときとはまた違う感じになりそうね。二人の話、帰ってきたら聞かせて」
「もちろん。あと、せっかくだし今度はボスだけじゃなくて、途中で面白い場所があったら寄りたいな」
みつみが言うと、千尋は頷いた。
「行き先はこれから決めよっか。絵美里がいないなら、初心者向けで無理なく歩けるところがいいと思う。どこ行きたいか、二人にも聞いてからでいいでしょ」
「うん。それと、私は途中で何か食べられるところがいい」
佳奈子が付け加えると、みつみはすぐ「それ!」と笑った。志帆はその二人を見ながら、さっきの小さな図をノートの端から消した。
予定の話がまとまったあとも、四人はしばらく部室に残った。千尋は候補になりそうなダンジョンの案内を眺め、志帆は大学の資料へ戻り、佳奈子は帰りに寄る店を調べている。みつみだけは紗希から送られてきた防具の写真をまだ見ていた。
「ねえ、これさ、なんかロボットの腕みたいじゃない?」
「それ紗希ちゃんに言ってみたら?」
千尋に言われ、みつみはすぐチャットへ書き込み始めた。
「待って、絶対変なあだ名つけるでしょ」
志帆が止めようとしたときには、もう送信済みだった。
『それ、ロボットの腕っぽくて格好いい!』
数秒後、紗希から『それ私も思ってました!』と返ってくる。
「ほら、紗希ちゃんも気に入ってる!」
「……ならいいけれど」
志帆は笑ってノートを閉じた。佳奈子が検索していた店の画面を見せると、今度は四人で帰り道を相談し始める。駅へ向かう方向も食べたいものも少しずつ違ったが、誰もすぐには席を立たなかった。
開け放した窓から、校庭の声と湿った風が入ってくる。みつみがようやく鞄を持ったところで、千尋は先ほど送られてきた防具の写真をもう一度開いた。
「それにしても、これ、ほんとに動きやすいのかな」
「だからお店で見てるんでしょ。……ねえ、そろそろ行かない? お腹すいた」
「行く行く。あ、でも、次のダンジョンの候補、帰りながら見てもいい?」
「いいよ。歩きスマホはなしね」
「分かってるって!」
笑いながら部室の灯りを消し、四人は廊下へ出た。次の探索の話はまだ途中だったし、今日の夕飯を何にするかも決まっていない。階段を下りながらも、そのどちらの話も普通に続いていた。




