↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
11/123

第11話 四人で、初ダンジョン

 六月最初の日曜日。

 

「重い」

 

 ダンジョン施設へ向かう途中、佳奈子が今日何度目か分からない言葉を口にした。

 

 背中には、兄が残したダンジョン用のリュック。

 

 服装も靴も、使えそうなものは兄のお下がりで揃えてきた。

 

「さっきからそれしか言ってなくない?」

 

 隣を歩くみつみが笑う。

 

「だって重いんだもん。みんな普通にこれ背負って歩くの?」

 

「歩くよ」

 

 みつみが答えると、佳奈子はすぐに聞き返した。

 

「何時間?」

 

「今日はそんな長くしないって」

 

 前を歩いていた千尋が振り返った。

 

「佳奈子、初めてだし。浅いところだけ」

 

「ならいいけど。ていうか兄ちゃん、なんでこんなに買ったんだろ。絶対いらない物も混じってるでしょ」

 

「送ってもらった写真を見る限り、そこまで変なものはなかったよ」

 

 志帆が言う。

 

 佳奈子が横を見る。

 

「写真だけでよく分かるね」

 

「写真で型番が見えたものは調べたから」

 

「やっぱ調べたんだ……」

 

「当然でしょ」

 

「何が当然なのか分かんないけど」

 

 志帆は自分のリュックの肩紐を直した。

 

「使えるものがあるのに、わざわざ買い直す必要もないし」

 

「私の装備なのに志帆の方が詳しいの、なんか嫌なんだけど」

 

「知りたいなら説明するよ」

 

「長そうだからいい」

 

「まだ何も言ってない」

 

「顔がもう長い」

 

 みつみが笑った。

 

 四人で歩いているだけなのに、いつもより少し騒がしい。

 

 学校では珍しくもない人数だった。昼休みに四人で話すこともあるし、帰りに一緒になることもある。

 

 でも、ダンジョンへ向かって四人で歩くのは初めてだった。

 

 みつみは何となく三人の顔を順番に見た。

 

 千尋はいつも通り。

 

 志帆も、前回ほど緊張している様子はない。

 

 その横で佳奈子だけが、背中のリュックを何度も気にしている。

 

「佳奈子」

 

「なに?」

 

「楽しみ?」

 

「まあ、ちょっとは」

 

「ちょっと?」

 

「まだ歩いてるだけじゃん」

 

「入ったら変わるって」

 

 千尋が笑った。

 

「みつみ、そういうの言うとハードル上がるよ」

 

「いいじゃん。絶対びっくりするから」

 

「その顔見たいだけでしょ」

 

 佳奈子に言われて、みつみは否定しなかった。

 

     ◇

 

 施設へ着いてからは早かった。

 

 佳奈子の利用登録と、今日必要になる手続きを済ませる。

 

 みつみのときも、志帆のときも通った流れだ。三人とも経験済みなので、受付の説明を最初から聞き直す必要もない。

 

 ただ一つ、佳奈子にはまだジョブがなかった。

 

 登録を終えると、佳奈子はジョブ取得用の設備へ向かった。

 

「じゃ、行ってくる」

 

 みつみも何となく後ろへ続こうとして、

 

「みつみはこっち」

 

 千尋に肩を掴まれた。

 

「あ、そっか」

 

「何しに行くつもりだったの」

 

 佳奈子が笑う。

 

「候補見たい」

 

「私のなんだけど」

 

「あとで教えて」

 

「覚えてたらね」

 

「そこは覚えといてよ!」

 

 佳奈子が中へ入り、三人が残された。

 

 みつみは閉じた入口をしばらく見つめる。

 

「何出るかな」

 

「さあ」

 

 千尋が答える。

 

「候補って人によって違うんだよね?」

 

 みつみが聞くと、千尋が頷いた。

 

「そうみたいだけど、佳奈子に何が出るかまでは分からないよ」

 

 みつみは少しの間、入口を見ていた。

 

「なんか待ってる方が気になる」

 

「本人のジョブなのに?」

 

 志帆に言われる。

 

「だって気になるじゃん」

 

「あとで聞けば分かるでしょ」

 

「今知りたい」

 

「無理でしょ」

 

 話しているうちに、佳奈子が戻ってきた。

 

 三人の視線が一斉に集まる。

 

「何だった!?」

 

 みつみが詰め寄ると、佳奈子が一歩引いた。

 

「近い近い」

 

「候補何個あった?」

 

「ちょっと待って。順番に聞いて」

 

「で、何にしたの?」

 

「順番に聞けって」

 

 佳奈子は笑ってから、一拍置いた。

 

「アーチャー」

 

「アーチャー!」

 

 みつみがそのまま繰り返す。

 

「弓?」

 

「たぶん、そういうことじゃない?」

 

 佳奈子は自分の手を眺めた。

 

 当然、外見が変わったわけではない。

 

「なんか全然実感ないんだけど」

 

「私も最初そうだった」

 

 みつみが言う。

 

「でも中で魔法出したら、めっちゃ実感したよ」

 

「私は魔法じゃないでしょ」

 

「そうだった」

 

「アーチャーなら、まず弓だね」

 

 千尋が言う。

 

 佳奈子は少し考えてから頷いた。

 

「私、弓なんて触ったことないけど」

 

「最初なんだから、みんなそんなもんじゃない?」

 

「千尋に言われると説得力あるような、ないような」

 

「私は弓使わないからね」

 

 四人は施設内の売店へ向かった。

 

 初心者が使うような簡単な弓と矢筒を、佳奈子がその日だけレンタルする。

 

 受け取った弓を持ち上げた佳奈子が、少し眉を寄せた。

 

「思ってたよりちゃんと重い」

 

「武器だからね」

 

 志帆が弓を覗き込む。

 

「シンプルだけど、最初ならこのくらいでいいんじゃない?」

 

「なんで志帆が店員さん側なの」

 

「見れば分かる範囲で言ってるだけ」

 

「絶対もう調べたことあるでしょ」

 

「弓については少し」

 

「やっぱり」

 

 佳奈子は教わった通りに弓を持ち直した。

 

 初めて触るものだけに動きはぎこちない。

 

「どう?」

 

 みつみが横から覗き込む。

 

「どうって言われても」

 

 佳奈子は弦へ目を落とした。

 

「これ本当に当てられる?」

 

「やってみないと分かんないじゃん」

 

「みつみ、それ好きだね」

 

「だってそうじゃん」

 

「まあ、せっかく借りたし」

 

 佳奈子がもう一度弓を見る。

 

「一回くらいは撃ってみたい」

 

 その答えを聞いて、みつみが笑った。

 

「なに?」

 

「いや、ちょっと楽しそうだなって」

 

「まだ弓持っただけだから」

 

「はいはい」

 

「その顔やめて」

 

     ◇

 

 ダンジョンへ入ってすぐ、佳奈子は立ち止まった。

 

 みつみは何も言わず、その横顔を見る。

 

 ライトの先に岩壁が浮かんでいる。

 

 外の施設とはまるで違う暗さ。少し湿った空気。靴の下から伝わる、平らではない岩の感触。

 

 奥へ続いていく暗い道。

 

 佳奈子はしばらく黙っていた。

 

「……暗っ」

 

 みつみが吹き出した。

 

「写真と同じ感想じゃん!」

 

「いや、写真より暗い。全然違うじゃん」

 

「でしょ?」

 

「なんで嬉しそうなの」

 

「言ったじゃん。入ったら変わるって」

 

 佳奈子はヘッドライトの向きを変した。

 

 光が壁を滑り、天井へ上がる。

 

「思ったより天井高い」

 

「場所によるよ。狭いところもあるし」

 

 千尋が先へライトを向ける。

 

 佳奈子は数歩歩いてから、今度は足元を見る。

 

「これ、ずっとこんな道?」

 

「今日はたぶん、だいたいこんな感じ」

 

 千尋が答える。

 

「普通に歩きにくいんだけど」

 

「外みたいに歩くと疲れるよ。足元見ながらでいいから」

 

 千尋に言われて、佳奈子が少し不満そうに振り返った。

 

「先に言って」

 

「今言ったじゃん」

 

「入る前に」

 

 そんな話をしながら進んでいた佳奈子が、不意に足を止めた。

 

 三人も振り返る。

 

 佳奈子はライトの届かない奥を見ていた。

 

「これさ」

 

「なに?」

 

 みつみが聞く。

 

「ライト消したら、本当に何も見えなくなる?」

 

 みつみの顔が明るくなった。

 

「やってみる?」

 

「なんでそんな嬉しそうなの」

 

「私も最初やった」

 

「それならちょっとやってみたい」

 

 千尋が周囲を確認する。

 

「ここならいいよ。全員止まってね」

 

 四人が足を止める。

 

 一つずつ、ライトが消えていく。

 

 最後の光までなくなった。

 

 暗い、では足りなかった。

 

 目を開けているのか閉じているのか、それすら分からなくなる。誰の顔も、自分の手も見えない。

 

 遠くから水の落ちる音だけが聞こえた。

 

「……うわ」

 

 佳奈子の声が、すぐ隣からした。

 

 数秒後。

 

「もういい。点けよ」

 

 四つのライトが戻る。

 

 岩壁。床。三人の顔。

 

 さっきまで見えていたものが一気に戻ってきて、佳奈子が息を吐いた。

 

「無理。あれで歩くの絶対無理」

 

「歩かないよ」

 

 千尋が笑う。

 

「知ってるけど」

 

 佳奈子はもう一度奥を見る。

 

 学校で写真を見ていたときとは、顔が違っていた。

 

「こんなとこ普通に歩いてたの?」

 

「普通っていうか、まあ」

 

 千尋が答えると、みつみも横から口を挟んだ。

 

「お昼も食べたよ」

 

「ここで?」

 

「もうちょっと広いところ」

 

「マジか……」

 

 怖がっているだけではなさそうだった。

 

 壁を見て、天井を見て、ときどき足元を照らす。写真では分からなかったものを、一つずつ確かめている。

 

 みつみは少し先から振り返った。

 

「ね?」

 

「何が、ね、なの」

 

「写真じゃ分かんないでしょ」

 

 佳奈子は辺りを見回してから、

 

「それは認める」

 

 と言った。

 

     ◇

 

 しばらく歩いたところで、千尋が足を止めた。

 

 片手を上げる。

 

 四人の会話が途切れた。

 

「何かいる」

 

 千尋が声を落とす。

 

 佳奈子が反射的にみつみを見る。

 

「もう?」

 

「たぶん一匹」

 

 千尋は少し先の曲がり角へ目を向けている。

 

「近づいてきてる感じじゃない。こっちから行けば見えると思う」

 

 佳奈子が弓へ手をかけた。

 

 施設で一通り扱い方は確認してきた。

 

 けれど、そのとき狙ったのは動かない相手だ。今度は違う。

 

「無理に撃たなくていいからね」

 

 千尋が言った。

 

「分かってる」

 

 返事はしたものの、佳奈子の目は前を向いたままだった。

 

 四人は少しずつ進む。

 

 曲がり角の手前で千尋が止まり、そっと先を覗く。

 

「ダンジョンラット。一匹」

 

 佳奈子も少しだけ顔を出した。

 

 岩場の向こうに、低い姿勢で動く影が見える。

 

 写真や動画では見たことがある。

 

 けれど、本物が数メートル先を動いているのを見ると、それまでと同じものには見えなかった。

 

「思ったよりでかい」

 

「近くで見るとね」

 

 千尋が小声で返す。

 

「こっちまだ気づいてない?」

 

「たぶん」

 

 佳奈子は少し迷ってから、矢を一本取り出した。

 

「撃ってみていい?」

 

 千尋が佳奈子とダンジョンラットの間を見る。

 

「ここからなら。外して気づかれたら、私が前に出る」

 

「みつみは?」

 

「佳奈子が撃つまで待つ」

 

 みつみが答えた。

 

「志帆は?」

 

 佳奈子が振り返る。

 

 少し後ろにいる志帆が眉を上げた。

 

「全員に確認するの?」

 

「なんか私だけ撃つの落ち着かないんだけど」

 

「私はここにいるよ。大丈夫」

 

「それ、ヒーラーっぽい」

 

「ヒーラーだから」

 

 佳奈子が少し笑った。

 

 そのおかげか、肩から力が抜ける。

 

 もう一度前を向く。

 

 矢をつがえ、弓を持ち上げた。

 

 狙う。

 

 さっきまでは止まっていたように見えたダンジョンラットが、少しだけ横へ動く。佳奈子も弓を動かす。

 

 また動く。

 

「……これ、むず」

 

 小さく呟いた直後、弦を放した。

 

 矢が飛ぶ。

 

 ダンジョンラットの少し後ろで、硬い音がした。

 

「外した」

 

 その音で、ダンジョンラットがこちらを向いた。

 

 一瞬だけ止まり、地面を蹴る。

 

「来るよ!」

 

 千尋が前へ出る。

 

 佳奈子は慌てて次の矢へ手を伸ばした。

 

「待って、速い!」

 

 みつみも右手を上げる。

 

 けれど、すぐには撃たない。

 

 千尋がいる。

 

 前回言われたことを思い出す。

 

 千尋がダンジョンラットの正面から少しずれ、突進をかわした。そのままショートソードを振る。

 

 ダンジョンラットが大きく体勢を崩した。

 

「みつみ!」

 

 射線が開く。

 

「《マジックボール》!」

 

 白い光が飛んだ。

 

 光球がダンジョンラットへぶつかり、小さな身体が横へ弾かれる。

 

「当たった!」

 

 みつみが叫ぶ。

 

「まだ!」

 

 今度は自分で言って、手を下ろさなかった。

 

 前回と同じだ。

 

 魔法を当てただけでは終わっていない。

 

 ダンジョンラットが岩の上で身体を起こそうとする。

 

 千尋はすでに距離を詰めていた。

 

 その後ろで、佳奈子も二本目の矢をつがえる。

 

 さっきより近い。

 

 しかも、一度転がったせいで動きが鈍い。

 

「佳奈子、狙うなら今!」

 

 千尋が横へ退いた。

 

 佳奈子が弓を引く。

 

 今度は動く相手を追いかけない。一瞬だけ止まったところへ狙いを置く。

 

 弦が鳴った。

 

 矢が飛ぶ。

 

 ダンジョンラットの身体に当たり、その動きが止まった。

 

「当たった!」

 

 佳奈子自身の声だった。

 

 次の瞬間、ダンジョンラットの身体が崩れるように消えていく。

 

 四人の間に一瞬、静けさが戻った。

 

 佳奈子は弓を構えたまま、何もなくなった場所を見ている。

 

「……今の、私?」

 

「当たったよ!」

 

 みつみが真っ先に答えた。

 

 佳奈子が振り返る。

 

「マジで?」

 

「マジで!」

 

「うわ、やば! 二発目当たった!」

 

 佳奈子の顔が一気に明るくなる。

 

「ちゃんと当たってた」

 

 千尋も笑いながらショートソードを戻す。

 

「一発目、全然違うとこ行ったけど!」

 

「相手動いてたからね」

 

「動くと全然無理なんだけど。練習したときと違いすぎ」

 

「でも二発目は当たったじゃん」

 

 みつみが自分のことのように嬉しそうに言う。

 

 佳奈子がみつみを見る。

 

「ていうか、みつみも普通に当ててたじゃん」

 

「そう!」

 

 待ってましたとばかりに、みつみが胸を張る。

 

「前よりちゃんと狙えた!」

 

「千尋がどいたの待ってたしね」

 

「そう!」

 

「今日は素直だ」

 

 千尋が笑う。

 

 みつみは少し得意そうに右手を見る。

 

 前回は、魔法を当てた嬉しさで頭がいっぱいだった。

 

 今回は違う。

 

 千尋の位置を見て、撃てるところまで待てた。

 

 それが何となく嬉しかった。

 

 志帆がダンジョンラットの消えたあたりを確認する。

 

「何も落ちてないね」

 

 佳奈子がそちらを見る。

 

「倒しても何も出ないことあるんだ」

 

「あるよ」

 

 千尋が答える。

 

「毎回じゃない」

 

「そっか。ちょっと残念」

 

「初討伐記念?」

 

 みつみが聞く。

 

「別に記念品欲しいとかじゃないけど、なんか出たら嬉しいじゃん」

 

「分かる」

 

 佳奈子は手元の弓を見た。

 

 さっきまでより、少しだけ扱いが自然になっている。

 

 志帆がその横から覗く。

 

「使った感じどう?」

 

「まだ分かんない。二回しか撃ってないし」

 

「肩とか平気?」

 

「今のところは」

 

「じゃあ次は――」

 

 佳奈子が顔を上げる。

 

「志帆の方が次やらせる気満々じゃん」

 

「アーチャーが実際どう戦うのか興味あるから」

 

「私、実験台?」

 

「観察対象」

 

「悪化してる」

 

 千尋が笑った。

 

「まあ、今日は佳奈子が疲れる前に戻ろう。もう少しだけ先見て、それから決めよ」

 

「賛成」

 

 みつみが先に答える。

 

 志帆も頷いた。

 

 佳奈子は弓を持ち直してから、暗い通路の先を見る。

 

「もうちょいなら行く」

 

 みつみがすぐに反応する。

 

「お」

 

「なに、その反応」

 

「いや、普通にやる気あるなって」

 

「ここまで来て一匹で帰るのも微妙じゃん」

 

「楽しい?」

 

 みつみが聞く。

 

 佳奈子は少しだけ考えた。

 

「……今のは楽しかった」

 

 みつみの顔が明るくなる。

 

「ほら!」

 

「ダンジョン全部が好きになったとは言ってないからね」

 

「分かってるって」

 

「その顔、絶対分かってない」

 

 四人で歩き出す。

 

 少し進んだところで、佳奈子がスマホを取り出した。

 

「ちょっと待って」

 

 三人が振り返る。

 

 佳奈子は暗い通路へスマホを向けていた。

 

「写真?」

 

 みつみが聞く。

 

「せっかく来たんだから一枚くらい撮る」

 

 みつみがすぐ戻ってくる。

 

「私も入る」

 

「今、ダンジョン撮ろうとしてたんだけど」

 

「じゃあダンジョンと私」

 

「なんでみつみが主役なの」

 

 志帆も足を止めた。

 

「どうせなら四人で撮れば?」

 

「志帆まで来るの?」

 

「撮るなら」

 

 少し先にいた千尋も笑いながら戻ってくる。

 

「結局こうなるんだ」

 

「千尋も入って」

 

「はいはい」

 

 四人で壁際へ寄った。

 

 佳奈子がスマホを構える。

 

 画面の中には、ヘッドライトを着けた四人。

 

 弓を持った佳奈子。その横で妙に嬉しそうなみつみ。少し髪の乱れた志帆。後ろから画面を覗き込む千尋。

 

 そして、暗い岩の道。

 

 シャッター音が鳴った。

 

 佳奈子が写真を確認する。

 

 数秒黙る。

 

「……やっぱ写真だと普通に暗いわ」

 

 みつみが吹き出した。

 

「だから言ったじゃん!」

 

「でも、前の写真見たときよりは分かる」

 

「何が?」

 

 佳奈子は画面の中の暗い通路を見る。

 

「この奥にも道が続いてるんだな、とか」

 

 それからスマホをしまった。

 

「実際に来たからだけど」

 

 みつみが笑う。

 

「でしょ?」

 

「そのドヤ顔やめて」

 

 四人のライトが、再び暗い道の先へ向いた。

 

 さっきまで佳奈子にはただの暗闇にしか見えなかったその先へ、今度は四人で歩いていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。