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理系で制御オタの俺に彼女ができると思っているのか――GWに連れてくると約束したら、なぜか本物みたいになってきた  作者: 桐原悠真


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第7話 デートの最適解がズレている気がする

「ただ」


 肩をすくめる。


「世の中、非線形だろ?」

「だから、あんまりうまくはいかない」


 小さく息を吐く。


「……そういうこと」


「ごめん、全然わからないけど――」


 少しだけ、間を置いて。


「ちょっとだけ、わかった気がする」


「……どっちだよ」


 思わず苦笑する。


「でも」


 由衣は、気にした様子もなく続ける。


「やっぱり面白いし、それでいいんじゃない?」


「……いいのか、それで」


「いいよ」


 あっさり、言い切る。


 一拍。


「それに」


 少しだけ、柔らかい声で。


「青空塾にいたころの陸君と、変わらないね」


「……」


 言葉が、出なかった。


 変わってない。


 その一言が――

 思っていたより、ずっと強く響く。


「私、眼鏡外してる方が好きだから」


 由衣が、あっさり言う。


「一緒にいるときは、外していいよ」


「……いいのか?」


「うん。その方が陸君も疲れないでしょ?」


「ああ……」


 少しだけ、肩の力が抜ける。


 一拍。


「あのさ……由衣ちゃんを紹介してもらえて、よかったよ」


「え?」


「いや……別に、何でもない」


 視線を逸らす。


 なんで今、それを言ったのか。

 自分でもよくわからない。


「えっと……今日のデートプランは?」


 少しだけ、話題を変えるように由衣が言う。


「買い物です」

「適当に散策」

「いろんなところを観測して、情報を得る」


 一拍。


「それをフィードバックして、生かす」


「え?」


 由衣が、完全に止まる。


「こういうところ、あんまり来ないからな」


「そうなの?」


「ああ」


 少しだけ頷く。


「でも――」


 言いかけて、考える。


「何か……ズレてる気がする」


「え?」


 由衣が、首を傾げる。


 うまく言えない。


 けど。


 今まで考えてた“デート”と、

 何かが違う気がした。


 ――こんなはずじゃなかった、みたいな。


 一拍。


「それと……やっぱり俺……デートのあとでいいんだけど」


 言葉を選ぶ。


 選んだ結果が、それか。


「ついでだから、線買いに行っていい?」


「は?」


 間違いなく、変なことを言った。


 自覚はある。


 あるけど――

 気になるものは、気になる。


「いや、その……」


 少し焦る。


「ずっと言おうかどうしようか、迷ってて……」


「え?」


「気になる線があるんだよ」


 スマホを差し出す。


「これ」


「……」


 由衣が画面を見る。


「こっちの線の方が、抵抗違うのかなって」


 少しだけ前のめりになる。


「気になるだろ?」


「いや……わからないから」


 即答だった。


「だよな」


 一瞬で引き戻される。


 でも――


「でも、欲しいなら買いに行こう」


「え?」


「今、私そこまで欲しいものないし」


「……いいのか?」


「いいよ」


 軽く笑う。


「会社終わってから繋ぎたいんでしょ?」


「そうなんだよ」


 思わず、声が弾む。


「それなら、今のうちに買った方がいいよね」


「……ありがとう」


 自然に言葉が出た。


 なんか――

 普通に、嬉しい。


「あと……」


 由衣が、少しだけ言いにくそうに口を開く。


「その服」


「ん?」


「GWにお友達に会いに行くときは、ちょっとまずいと思う」


「え?」


 思わず見下ろす。


「そんなにやばい?」


「まあ……」


 一拍。


「けっこう、きてるね」


「マジか」


 思わず呟く。


「でもさ」


 言い訳するように続ける。


「いつも会社だから、服買ってないんだよな」


「なるほどね」


 由衣が頷く。


「ちなみに、それいつの?」


「中学だけど?」


「……」


 一瞬、沈黙が落ちる。


「物持ちいいね」


「だろ?」


「いや、そこ褒めてない」


「マジか」


 軽くショックを受ける。


「でも」


 由衣が、少しだけ笑う。


「せっかくだし、見に行く?」


「え?」


「服」


 さらっと言う。


「どうせ線も買いに行くんでしょ?」


「……確かに」


「じゃあ、ついでに」


「ちゃんとしたやつ、選ぼうよ」


「……それ、俺に選べると思うか?」


「大丈夫」


 くすっと笑う。


「一緒に見るから」


「……助かる」


 正直な言葉が、すっと出た。


「陸君……少しは気を遣おうか」


 由衣が、少しだけ呆れたように言う。


「結構、顔はいいんだから」


「別に、そこまででは」


 思わず目を逸らす。


「意外にさ」


 由衣が、少しだけ間を置いて。


「陸君って、私いないと駄目じゃない?」


「え?」


 思わず顔を上げる。


「そうか?」


「そうだよ」


 あっさり、言い切る。


 一拍。


「……」


 言い返そうとして、言葉が出てこない。


 そのとき。


 ほんの少しだけ――

 由衣の頬が赤くなっている気がした。


「……」


 なんで、だろう。


 さっきの言葉が、

 思っていたより――

 ずっと残る。


 ――私いないと駄目じゃない?


「……」


 小さく、息を吐く。


 その言葉を、打ち消せなかった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


今回は「ズレたまま進むデート回」でした。


普通のデートをしようとしているはずなのに、

どこか噛み合っていない。

でも、そのズレが逆に心地いい――そんな空気を書いています。


陸は相変わらずズレていますが、

それを否定せずに受け入れる由衣。

この関係が少しずつ形になっていく過程を、

楽しんでもらえたら嬉しいです。


そして最後の一言。

あれはわりと強めに効いているはずです。


次は、もう一歩だけ距離が動きます。


引き続きよろしくお願いします。

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