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理系で制御オタの俺に彼女ができると思っているのか――GWに連れてくると約束したら、なぜか本物みたいになってきた  作者: 桐原悠真


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第4話 デート当日、最適解がすべて崩れた

 デート当日。

 俺は――困っていた。


 服、どうすればいいんだ。


 完全に、盲点だった。


 デートの場所は考えた。

 プランも、一応それっぽく組んだ。


 でも。


 服。


 ……考えてなかった。


「いや、無理だろ」


 ぼそっと呟く。


 蓮みたいに、最初からイケてるわけじゃない。

 俺は――普通だ。


 ……いや、普通か?

 よくわからん。


 とりあえず、クローゼットを開ける。


「……最適解、どれだ」


 一応、考える。


 でも――服に最適解って、あるのか?


「……」


 わからん。


 どれを着ても、同じに見える。


 仕方ない。


「これでいいか」


 適当に選ぶ。


 髪。


「……セット?」


 やり方、知らん。


 とりあえず、整えるだけ整える。


「……よし」


 鏡を見る。


 ……悪くは、ない。

 多分。


「オッケーだ」


 小さく頷く。


「……完璧」


 そう言ってみる。


 ……知らんけど。


 ***


 その頃――由衣は。


 鏡の前に立っていた。


「……大丈夫、だよね」


 小さく呟く。


 ちゃんと化粧はした。

 “モテメイク”って検索して、いくつか試して。


 一番、それっぽいのを選んだ。


「派手すぎない方がいいよね……」


 ナチュラル寄り。

 多分、間違ってない。


 服も、“デート 服装 女性”で調べて、その中から近いものを選んだ。


「……これで、いいのかな」


 もう一度、鏡を見る。


 ……嫌われないといいな。


 そう思った時点で、少しだけ変だと思った。


 彼女役のはずなのに。


 ……自信は、あまりない。


 でも。


 できるだけ、ちゃんとした。


「……よし」


 小さく頷いて、家を出る。


 ***


 待ち合わせ場所。


 少しだけ早く着いて、周りを見渡す。


 そして――


「……あ」


 見つけた。


 陸くん。


 すぐにわかった。


 変わってない。


 ……本当に、そのままだ。


 だから――少しだけ、笑ってしまった。


「懐かしいな」


 小さく、呟く。


 ……ちょっとだけ。


 会えるの、楽しみにしてたかもしれない。


 ***


「陸くん。おはよう」


 すぐ近くで、声がした。


「……由衣ちゃん?」


 振り向く。


「はい」


 小さく頷く。


「おはよう」


 その一言で――思考が止まった。


 ……え。


 思っていたより――かわいい。


 いや、だいぶかわいい。


「……」


 何を言えばいいのか、わからない。


 とりあえず、頷く。


 ……多分、顔が熱い。


 これ、絶対バレてるだろ。


「どうしたの?」


 由衣が少し首を傾げる。


 ……やめてくれ。

 それ、反則だ。


「いや……」


 何とか声を出す。


「その……」


「来てくれて、ありがとう」


 無難な言葉を選んだつもりなのに、声が少しだけ裏返った。


 ……終わった。


「うん」


 由衣は、ふっと笑った。


「私も、会えて嬉しい」


 ……やめろ。


 それは、効く。


 蓮。

 お前、聞いてないぞ。


 こんなに――かわいいなんて。


 ……やばい。


 俺、服くらい――もう少しどうにかならなかったのか。


 髪も。


 ……絶対、雑だろ。


「……」


 ごめん、由衣ちゃん。


 いや、俺の中では完璧だった。


 ……さっきまでは。


 でも――目の前にいる由衣ちゃんが、全部ひっくり返してくる。


 ちゃんと、おしゃれしてる。

 ちゃんと、かわいい。


 ……いや、かわいすぎだろ。


 喉がひとつ鳴る。


 視線を上げる。


 ……無理だ。


 目、合わせられない。


 近いし。

 なんか、いい匂いするし。


 ……終わってる、俺。


「あ……緊張するよね」


「うん」


 当たり前だろ。


 ……かわいすぎる。


「由衣ちゃん……」


 口を開く。


「いや、なんでもない」


 何を言おうとしたのか、自分でもわからない。


 ……終わってる。


 えっと。


 デートプラン。


 何をするんだっけ。


 頭の中を必死に探る。


 さっきまであったはずの予定が、綺麗に消えていた。


「陸くん?」


 由衣が、少しだけ首を傾げる。


 ……やめてくれ。


 それ、余計に無理だ。


「その……最初、どこ行く?」


 ようやく絞り出す。


「あ」


 由衣が、ぽんと手を叩いた。


「私、一応考えてきた」


「え?」


「デート おすすめって検索して」


 ……やっぱりか。


「最初はカフェがいいらしい。話しやすいからって」


「……助かる」


 正直にそう思った。


「じゃあ、そこから一緒に決めよ?」


 そう言って、少しだけ笑う。


 ……やばい。


 ちゃんとしてるのに、ちょっとズレてる。


 でも――それが、すごくいい。


 ……いや、待て。


 俺、ちゃんと用意してきただろ。


 念のために。紙に。


「……あった」


 ポケットから、少し折れたメモを取り出す。


 走り書き。しかも雑。


 これ、今出していいやつか?


 一瞬だけ迷う。


 ……でも。


 出さないと、何もできない。


「その……一応、考えてきた」


 由衣が少し覗き込む。


「へえ。ちゃんとしてる」


 ……ちゃんと、してるか?


「とりあえず――カフェ」


 一番上の文字を指さす。


「話しやすいらしい」


 どこかで見たままの理由。


「いいね」


 由衣はあっさり頷いた。


「じゃあ、そこ行こ」


「……助かる」


 正直な感想が口から出た。


 ……よかった。


 この雑な紙、ちゃんと役に立った。


「こういうの、ちゃんとしてていいと思う。計画的で」


 ――好感度は、思っていたより高かった。


「こっちだ」


 メモを軽く掲げて、歩き出す。


 ……過去の俺。


 ありがとう。


 今日の俺、完全に助かってる。

今回も読んでいただきありがとうございます。


デート当日回でした。

準備はちゃんとしたはずなのに、会った瞬間に全部崩れるやつです。


理系的には最適解を出したつもりでも、現実はなかなか思い通りにはいかないですね。


それでも、少しずつ距離が縮まっていく二人を書けていたら嬉しいです。


次回はカフェ編。

ようやく落ち着いて話せる……はずです。


引き続き見守っていただけると嬉しいです。

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