第22話 未定義の未来
大輝は――奈央ちゃんを選ばなかったんだ。
俺が、由衣ちゃんへの気持ちに蓋をしたみたいに。
閉じないといけないって、思ってしまった。
もしかしたら――大輝も、そうだったのかもしれない。
ただ――誠は春香ちゃんに夢中だったし、圭介も沙耶ちゃんに夢中だった。
だからなのか。
何となく、気づいてなさそうな気がした。
……さすが誠と圭介だな。
春香
「でも……本当に仲良しだね」
春香ちゃんが、俺に言った。
陸
「え? そうかな?」
春香
「そうだよ」
「“大事にしてます”って感じする」
陸
「由衣ちゃんが、そう思ってくれてるならいいんだけど」
そう言って、俺は由衣ちゃんの手を握った。
春香
「すぐ手を繋いでるし」
沙耶
「本当だ」
陸
「いや、ついつい」
誠
「お前ら、仲良しだな」
「完全に安定してるじゃん」
圭介
「モデル、まともだったらしいな」
陸
「仕方ないだろ。すぐ繋いじゃうんだ」
自分で言ってから、俺は少し赤くなった。
大輝
「お前、如月さんのこと大好きだな」
陸
「お前だって、奈央ちゃんと繋いでるじゃないか」
大輝
「それとこれとは関係ない」
陸
「大輝だって、好きだって顔してるぞ」
「お前……まさか、恥ずかしくて言えないのか?」
大輝
「え?」
陸
「それで奈央ちゃんが不安なんじゃねぇの?」
大輝
「いや……」
陸
「やっぱり」
大輝
「そんなんじゃないって」
「ちゃんと俺は、しっかり伝えてるから」
圭介
「いや、伝えてないんだろ」
誠
「わかるぞ。それくらい」
「お前、恥ずかしがり屋さんだからな」
圭介
「俺も知ってる」
「それで元カノに振られたんだろ?」
誠
「言ったら駄目だ」
圭介
「悪いことは言わない。ちゃんと伝えろ」
誠
「お前が一番手を繋いでいた」
「距離、近すぎだろ」
「我慢できないのかもしれんがな」
陸
「めちゃめちゃ顔に出てるぞ」
「すぐに視線逸らしていたしな」
「まさか、そっち?」
「別れるとかじゃなくて、好きすぎて言えないのか」
「かわいいやつだな」
圭介
「そういうやつだからな」
「奈央ちゃん、こいつかわいいんだよ」
「俺らの中で一番」
誠
「わかりやすいから」
大輝は、真っ赤になっていた。
三人の声が、綺麗に揃う。
「「「ちゃんと言ってやれ」」」
大輝
「うるさい」
「俺はPID制御が完璧なんだ」
陸
「嘘つけ」
誠
「目標値からして間違ってるんじゃないのか?」
大輝
「いや、完璧だ」
俺たちは、盛大に大輝をいじった。
大輝は、うまくいくんだろうか。
でも……本当にそうだろうか。
もし――大輝も、俺と同じように偽彼女を使っていたら。
……ないとは言い切れない。
そうなると、難しいのかもしれない。
あいつのことだから、変に複雑にしている可能性もある。
例え、偽彼女じゃなかったとしても。
“違う”っていう可能性だって、ないとは言い切れないから。
でも――。
大輝には、うまくいってほしい。
ただ――何となく。
大輝は、うまくいきそうな気がした。
俺は、少しだけ安心した。
圭介や誠にも幸せになってほしいけど。
大輝にも、幸せになってほしいんだ。
あいつも、苦労してるから。
そして――俺たちは、そろそろお開きにすることになった。
もう、この平和なGWも終わる。
もう……終わるんだ。
これで。
終了。
そういうことだろ?
あとは帰りに、お礼を言って。
もう一度会って、ちゃんとお礼して。
その時は、平和に。
今までありがとうって言って、終わるんだ。
できれば……。
俺たちは、普通に話して。
普通に終わった。
何事もなく。
誠は、落ち着いたら結婚するんだろう。
そして、次は圭介か。
大輝がどうなるかは、まだわからないけど。
俺たちは、そのまま解散した。
帰り際。
大輝が、俺に声をかけてきた。
大輝
「今度、会おうぜ」
「できれば……今度の週末とかどうだ?」
陸
「いいけど。すぐだな」
大輝
「まあ。あとで連絡する」
陸
「おう」
由衣ちゃんと俺は、二人で帰った。
今回の話は、周囲から見た「続く前提」がかなり強い回でした。
結婚の話をしたり。
また遊ぼうって話をしたり。
自然に未来の予定が増えていったり。
皆、当たり前みたいに「これからも一緒にいる」と思っている。
でも――陸と由衣だけは、終わる前提でその空気を聞いています。
そして今回は、大輝側の空気も少しだけ見えてきました。
意外と、この四人の中で一番わかりやすいのかもしれません。
次回は、帰り道です。
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