第20話 認識外の感情
席へ戻ると、圭介たちが誠の彼女について話していた。
圭介
「よく誠みたいなオタに話ついていけるね」
春香
「慣れると別に大丈夫だよ」
誠
「オタクって失礼な。それほどじゃない」
「圭介も十分だろ」
「それに、大輝だって擬態化してるだけで、俺より酷いわ」
大輝
「お前に言われたくないわ」
「服まで制御信号だろうが」
誠
「今日は決めてきたんだ」
大輝
「陸ですら最適化してきたぞ」
「ちゃんとモデル再構築されて、まともな擬態化が完成されている」
「覚醒だ」
誠
「いや、あいつは擬態化できていない」
圭介
「いや、擬態化できてるだろ」
「服が誠と被ってない」
誠
「圭介だって、今日は覚醒している」
圭介
「それは言うな」
小さく笑いが起きる。
圭介
「でもさ……誠がここまでオタク丸出しだけど、本当に大丈夫なの?」
春香
「オタク丸出しなところが面白いんだよ」
「何言ってるかわからないから」
大輝
「え? そこなの?」
春香
「そうだよ」
「私は由衣ちゃんみたいに頑張れないけど、別にそういう人嫌いじゃないし」
「それはそれでしょ。趣味がそうなだけっていうか」
沙耶
「圭介、正直かなりのオタクなの、もうバレてるから」
「時々、誠君と電話してるときあるけど、そのとき変な言葉喋ってるし」
「意味わからないなとは思ってた」
「謎ゲームも、別に“ふうん”って感じだったし」
「私たち、そうじゃなきゃ彼女やってられないから、大丈夫だよ」
奈央
「ああ……わかるかも、それ」
「まあ、大輝は普通にしてくれてるから、私の場合は何も問題ないけどね」
「そこまで気を遣わなくても、引かないから大丈夫だよ」
大輝
「え? そうなの?」
奈央
「そうだよ」
「由衣ちゃんも、そうでしょ?」
由衣
「別に引かないよ」
「慣れるよね」
春香
「うん」
沙耶
「そこまで心狭くないよね」
そう言って、女の子たちが笑っている。
俺達四人は、顔を見合わせた。
俺たちは、もしかしたら……見えてないものがあったんじゃないか?
でも――まあ、それは。
本当の彼女だから。
好きだから言えるのかもしれないけどな。
俺は、少しだけ羨ましいと思ってしまった。
そのとき。
由衣ちゃんが、そっと手を握った。
あ……。
大丈夫だと言われた気がした。
由衣ちゃんは、味方だった。
優しいな。
俺の偽彼女。
今日だけ、俺も……偽彼氏を頑張る。
俺も、由衣ちゃんを守らないとな。
***
大輝
「俺もさ……陸じゃないけど、すぐに振られると思ったんだよな」
陸
「え?」
大輝
「だって俺も、それなりだろ?」
「だからさ……」
陸
「確かに、大輝もすぐに振られてるもんな」
大輝
「うるさいな」
誠
「いや、俺ほどじゃないだろ」
圭介
「いや、誠は……最初からできないだろ」
「大輝は、ちゃんと彼女できるタイプだよ」
「見た目だってちゃんとしてるし、色々ちゃんとしてるからな」
誠
「でも、軽そうじゃん」
図星だった。
大輝
「それを言うな」
奈央
「確かに、最初チャラいって思ったわ」
大輝
「う……チャラいつもりはないんだけど」
由衣
「え? 本当に?」
大輝
「本当にないんだけど」
奈央
「ありえないでしょ」
沙耶
「その顔で?」
春香
「ちゃんと認識したほうがいいと思うよ」
由衣
「ごめんだけど……大学の時、“チャラい男達”って言われてたよ」
「私も、そうだと思ってたし」
「なんか、本当にごめん」
「勘違いしてたかも」
「ちょっと、どうしたらいいかわからなかった」
「ごめん。私、女の子のことばかり話してた小心者だったので」
大輝
「あ……だからあの時」
「いや、いい。そういうことな」
奈央
「何かあったの?」
大輝
「大学同じだったから、ちょっと怖がらせてたのかなって思っただけ」
奈央
「ああ……チャラそうだしね」
「由衣ちゃんも苦手そう」
由衣
「でも、今話してたらいい人だと思った」
大輝が、少しだけ赤くなった。
奈央
「良かったね。誤解が解けて」
大輝
「ああ。良かったよ」
大輝の表情を見て、俺は少し揺れた。
ほんの少しだけ。
あいつ……由衣ちゃんのこと、好きだったんだよな。
大学の時から知っていて。
話しかけていて。
でも、由衣ちゃんには警戒されていた。
それでも――今、嬉しそうに笑っている。
俺は、また由衣ちゃんの手を握った。
由衣ちゃんは、少しだけ驚いたようにこちらを見た。
……何やってるんだよ。
由衣ちゃんは、偽彼女なのに。
何、嫉妬してるんだ。
今回は、女子側から見た「オタク男子」の温度感が少し見えてきた回でした。
本人達は「こんなの引かれるだろ……」と思っているのに、意外と彼女側は普通に受け入れていたり。
むしろ「そういうもの」として見ていたり。
でも、陸だけはまだ“偽彼女”だと思っているんですよね。
そして最後。
大輝の表情を見て、ほんの少しだけ嫉妬してしまった陸。
もうだいぶ危ない気がします。
次回もよろしくお願いします。




