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理系で制御オタの俺に彼女ができると思っているのか――GWに連れてくると約束したら、なぜか本物みたいになってきた  作者: 桐原悠真


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第19話 戻れない

「あ……電話がかかってきたから、ちょっと外す」


 俺は席を立ち、そのまま店の外へ出た。


 深く息を吐いてから、スマホを耳へ当てる。


陸「もしもし。何か用?」


楓『……色々、反省してて』


陸「は?」


楓『やり直したいなって思って』


陸「いや……あのさ……」


 何を言われているのか、一瞬理解できなかった。


楓『だって陸、制御のことばっかりだったし』

『私より制御のほうが好きなんじゃないかって思って』

『ちょっとムカついてたの』


陸「いや、お前な……」

「っていうか、もう終わった話だろ?」


楓『終わらせたのは私だけど』


陸「は?」


楓『ちょっと拗ねてただけなの』

『別に、制御のこととかコンデンサのこととか好きでもいいの』

『そのままでいい』


『でも……ちょっと構ってほしかっただけ』


『なのに、いつまで経っても連絡してこないんだもん』


陸「いや待て」

「別れるって言ったの、お前だろ?」


楓『ちょっとした言葉のあやよ』


陸「は?」


楓『別れる気なんて、全然なかったもん』


陸「いや、俺……かなり反省したし」

「かなりえぐられたんだが」


楓『だって陸、私がどれだけ陸のこと好きか知ってるじゃん』


陸「……」


楓『そうじゃなきゃ、ずっと一緒にシミュレーションの話なんて聞かないし』

『はんだ付けしてる隣で、ずっと一緒にいたりしないよ』


陸「……まあ、そうだな」


楓『でしょ?』


 昔のことを思い出す。


 夜中まで制御の話をして。

 波形を見ながら笑って。

 コンデンサを並べて、どれがいいとか語って。


 普通の人なら、途中で帰ってる。


楓『でも……あの時、怒って』

『嫌いだって言っちゃったけど』


楓『だって、それは他の女の子見てたから』


陸「は? 見てねぇし」


楓『見てたもん』


陸「……お前、それで怒ってたのか?」


楓『うん』

『制御のせいにしてただけ』


陸「何だよ、それ……」


 思わず力が抜けた。


 楓も。


 由衣ちゃんも。


 ちゃんと俺を見ていた。


 俺が思っていたより、ずっと。


 でも――


 楓は元カノで。


 由衣ちゃんは、偽彼女だった。


 俺が、由衣ちゃんに揺れているタイミングで。


 楓は電話をしてきた。


楓『ごめんね』


陸「……」


楓『でもさ』

『陸、本当に制御のことで私が怒ってると思ってたの?』


陸「ああ」


楓『違うし』


陸「え?」


楓『そんなことで怒るわけないじゃん』

『だって、陸の好きなものでしょ?』


『ただ……浮気しないでほしかっただけ』


陸「してねぇし」


楓『したと思ったんだもん』


陸「違うし」


楓『ちゃんと言ってくれなかったし』


陸「その時は、制御のことだとばっかり思ってたから」

「何が何だかわからなかったんだよ」


楓『……』


 少しだけ沈黙が落ちる。


楓『じゃあ……仲直りでいい?』


陸「……まあ。いいけど」


「でも……ちょっと整理させて」


楓『うん』


 普通なら。


 俺は、そのまま楓に戻るのが当たり前なんだ。


 ずっと付き合っていた彼女で。

 ちゃんと俺を見てくれていた人で。


 なのに。


 頭の中には、由衣ちゃんのことが浮かんでいた。


 そのまま前みたいに「好きだ」って言えなかった。


 そして、俺は返事を保留にした。


 ……狡いやつだ。


 全部整理された今。

 俺は、前みたいに戻ることを選べなかった。


 確かに、楓のことは大好きだった。


 いい思い出もいっぱいある。


 でも――


 コンデンサのところで「もういい」って振られたのは、かなりショックだった。


 だって、本気で意味がわからなかったから。


 ……コンデンサを買いに行くくらいで怒るか?


 って思った。


 シミュレーションしてても何も言わなかったし。

 隣ではんだ付けしてても、文句なんて言わなかった。


 そんな子、ほとんどいない。


 だからこそ、衝撃だった。


 俺は、楓の前では服も適当だった。


 それでも楓は、「別にいいよ」って笑ってくれていたし。


 本当にレアな子だった。


 楓は、ずっとそのままの俺を受け入れてくれていた。


 だから――


 あの時、話が噛み合わなかったのか。


 少しだけ納得した。


 でも。


 ……何なんだよ。


 あいつは、ずっと。


 俺が「ごめん」って言うのを待っていた。


 でも俺は、コンデンサのことで怒ってるんだと思っていた。


 だから、ムカついてた。


 ……全然違った。


 ただの勘違いだったんだ。


 きっと。


 それで別れるって、おかしいよな。


 でも――今さらなんだ。


 本当に、今さらだ。


 もう少し前に言ってくれよ。


 俺は……楓を選べない。


 あんなにいい彼女なのに。


 もしかしたら、由衣ちゃんよりいい彼女だったのかもしれない。


 それに。


 由衣ちゃんが俺を好きだって保証なんてない。


 由衣ちゃんと付き合いたいと思っても。


 今は、それが怖かった。


 だから――


 今は、誰とも……。


 でも――


 やっぱり、俺は揺れていた。

今回は、楓とのすれ違いが少し整理された回でした。


制御で怒っていたわけじゃなくて、

ただ嫉妬していただけ。


でも、陸はそれに気づかなかった。


お互い、ちゃんと見ていたのに、

話が噛み合わなかった。


個人的には、

「コンデンサで振られたと思っていた男」

という構図がかなり好きです。


そして、全部整理されたからこそ、

逆に陸が揺れ始めている感じを書きたかった回でした。


Kindle版では、

Web未公開エピソードも収録しています。


興味がある方は、

ぜひそちらもよろしくお願いします。


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