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理系で制御オタの俺に彼女ができると思っているのか――GWに連れてくると約束したら、なぜか本物みたいになってきた  作者: 桐原悠真


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第2話 偽彼女のはずなのに、距離が近すぎる

「あの……陸君って、小学校の時に青空塾に通ってましたよね」


「え? 何で知ってるの?」


「私も通ってたので」


 さらっと言われる。


「……いや、あそこ人多かったし、覚えてるわけないと思うけど」


 正直な感想をそのまま返す。


「はい。なので、話したことはないです」


 あっさり肯定された。


「でも――」


 一拍。


「陸君、成績良かったので。少しだけ覚えてました」


 ……そこか。


「それだけなんですけど」


「懐かしいなって、思って」


 まっすぐに言われる。


「……そうだったんだ」


 何て返せばいいのか、少し迷う。


 でも――


 こうして共通点があるだけで。


 なぜか、少しだけ嬉しかった。


「あと……」


「陸君って、結構騒がしかったでしょ?」


「あ……まあ」


 いきなりそこを突かれるとは思わなかった。


「なので、目立ってましたから」


 ……それ、褒めてるのか?


「でも……嫌な感じではなかったです」


「元気な人、だなって思ってました」


 ……悪くない。


 気づけば、少し笑っていた。


「あ……でも、今はそこまでうるさくないから大丈夫」


「そうなんですか?」


「それと……同い年みたいだし、ため口で大丈夫」


 少しだけ迷いながら言う。


「じゃあ、そうしましょう」


 由衣はあっさり頷いた。


「……偽彼女ですしね」


 小さく笑う。


「はい」


「彼女、よろしくお願いします」


「はい。よろしくお願いします」


 きっちりした返事。


 ……やっぱり真面目だ。


 その直後。


「もしかして……」


「別れたばかりだったんです?」


「あ、失礼かもですが」


 ……そこ、聞くのか。


『いや、そもそもいない』


 そう返すと、すぐにメッセージが来た。


『一応、聞いておいた方がいいかなって思って』

『付き合ってどれくらいとか、あると思うから』


『ごめん……なんか変なこと聞いたかも』


「いや、大丈夫」


 ちゃんと理由がある分、納得できた。


『でも、私もだいぶいないから、大丈夫』


「そうなの?」


「かわいいって聞いたから、そんなに空いてないのかと思った」


 少し軽口のつもりで言う。


『出会いないから』


 あっさり返ってきた。


「わかる」


 思わず即答する。


「あと……先に言っておくけど」


「俺、オタクだから」


『え?』

『アニメとか?』


「いや、理系のほう」


「制御オタ」


『何それ?』


 当然の反応だった。


「変な言葉使うかも」


「あと、ちょっとズレてると思う」


「その……よろしく」


 先に申告しておく。


『わかった』


『私も、友達にズレてるって言われるし』


『でもオタクじゃないけど、オタクには優しいと思う』


『偏見はないよ』


 ……何だその宣言。


「それなら、助かる」


 ***


 それから――


 俺たちは、毎日連絡を取るようになった。


 朝の通勤時間。


「おはよう。これから研究所」


『おはよう。私はこれから会社』

『今日も頑張ろうね』


「ああ、頑張って働く」


「今日は実験なんだ」


『頑張ってね?』

『爆発とかするの?』


「したら怖いから」


『危なくなくて良かった』


 ……何を想定してるんだ。


 そんなやり取りをしているうちに。


 由衣は、昼ご飯の写真まで送ってくるようになった。


『今日のお昼』


 シンプルな一言と一緒に、写真が届く。


 最初は戸惑ったが――


 気づけば、俺も返していた。


「俺も今これ食べてる」


 ……なぜだろう。


 特に意味はないはずなのに。


 やめる理由も、なかった。


 由衣は、よくメッセージを送ってくる。


 だから――


 俺も、つい返してしまう。


 ***


 そんなある日。


「三浦さん、彼女できたの?」


 同僚に、いきなり聞かれた。


「え? いや……そういうのじゃなくて」


「ふうん。でも、楽しそうだよね」


「……そうか?」


「最近さ、昼ご飯の写真送ってない?」


「いや……あっちが送ってくるから」


「ふうん」


 少しだけ、意味ありげに笑われる。


「彼女じゃないの?」


「いや、違って……」


「あ……好きなんだ」


「いや、そういうわけじゃ――」


 そこで、言葉が止まった。


 ……何を、否定しようとした?


 自分でもわからないまま。


 顔が、少しだけ熱くなる。


 ……何を動揺してるんだ、俺は。


 ***


 おはよう、とか。

 おやすみ、とか。


 ……これ、付き合ってるみたいじゃないか。


 マジで、ちょっとやばい。


 いや、知らないんだぞ?

 この子のこと。


 久しぶりすぎて――


 ……ドキドキする。


 どうすればいいんだ。


 気づけば、連絡している。


 仕事が終わったら、当たり前みたいに送っているし。


 向こうから来なくても、こっちから送ってしまう。


 ……完全に、ペースを掴まれている気がする。


 それでも――


 やめる理由が、見つからなかった。

第2話を読んでいただき、ありがとうございます。


ただの“彼女役”のはずなのに、気づけば毎日連絡している二人。

少しずつ距離が縮まっていく、この空気感を楽しんでもらえていたら嬉しいです。


次回は、いよいよ通話と初デートへ。

少しだけ不器用な二人がどうなるのか、見守ってもらえたら嬉しいです。


引き続き、よろしくお願いします。


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