第16話 今回は違うらしい
皆で店に入る。
「予約した高橋です」
大輝がそう言うと、すぐに席へ案内された。
落ち着いた雰囲気の店だった。
***
陸
「やっぱり大輝が選ぶ店は、いい感じだな」
誠
「さすがだな」
圭介
「お前に任せて正解だったわ」
大輝
「お前らだと……こういうのないだろ」
三人が素直に頷く。
大輝
「いつもこれ、俺担当だしな」
陸
「お前、ほんと優しいよな」
***
少しだけ、間があく。
大輝が、にやっと笑った。
***
大輝
「っていうかさ……陸」
「由衣ちゃんと、どこで知り合ったの?」
「俺ら、同じ大学なんだけど」
***
――来た。
***
陸
「ああ……友達の紹介だよ」
「それと、小学校のとき同じ塾でさ」
「久しぶりに会って、懐かしいなって話から……こんな感じになった」
圭介
「納得だな」
誠
「お前に彼女できるとはな」
「……俺もだけどさ」
……ここが、分岐点かもしれない。
誠
「俺もさ……ずっと彼女できなかったんだけど、オフ会で運命の出会いしちゃったんだよな」
春香
「大げさすぎない?」
誠
「でも、陸の場合は一瞬で振られてるだけだよな」
圭介
「それは……仕方ないだろ」
一瞬だけ、言葉を選ぶ。
「エースにも、いろいろあったんだよ」
少しだけ笑って、続ける。
「でも、よかったな」
陸
「ああ。本当に」
小さく頷く。
「続くことを願ってる」
――本当に、そう思っている。
誠
「俺も陸も、本気で続いてほしいって思ってるぞ」
「陸じゃないけど、俺も別れたくないしな」
圭介
「……俺は大丈夫なのか?」
誠
「お前は普通に続くだろ」
あっさりと言い切る。
「問題は、陸と俺だ」
「“ないわー”ってなりそうじゃん」
大輝
「……でもさ」
少しだけ視線を上げる。
「大丈夫そうじゃね?」
「なんとなくだけど」
……そんなふうに思われてるんだ。
大輝
「でもさ、由衣ちゃん」
「陸のどこがいいの? 顔?」
「正直、俺らオタクだぞ?」
「特に、陸はエースだから」
「変な意味じゃなくて、俺の大事な友達だからさ」
「由衣ちゃんがいい子なのはわかってる。大学の時から知ってるし」
「でも、もし顔だけなんだったら、やめたほうがいい」
「そんなんじゃない気はするし、大丈夫なんだろうなって思ってるけどさ」
誠
「正直、陸は顔がいいからな」
「いつもいい加減な格好してるけど」
「そのせいで結構損してるんだ」
圭介
「まあ、俺は……陸と由衣ちゃんがいいならいいんじゃないって感じだけどな」
陸
「お前ら、由衣ちゃんいじめないでくれる?」
「由衣ちゃんは、そういう感じの人とは違うんだ」
「何となくわかるだろ?」
誠
「わかるけど」
「だから、見たときちょっと安心したんだ」
「でも、本当にどこが好きなの?」
由衣
「……よくわからない」
少しだけ考えて、続ける。
「楽しかったから、一緒にいるっていうか……なんか、いいなって思って」
「最初は懐かしいな、から始まったんだけど」
「結構、落ち着くっていうか」
――そして。
由衣ちゃんが、そっと俺の手を握った。
「ずっと一緒にいたいなって、思っただけ」
少しだけ照れたように、視線を落とす。
「……まあ、陸君が一緒にいてくれたら、だけど」
***
大輝
「陸は簡単には手放さないと思うけどな」
「……今回は」
圭介
「だよな」
「女なんてどうでもいいって顔してたのに、全然そんな感じじゃねえし」
奈央
「モテそうだし……その気になれば、すぐ次の子できそうだよね」
沙耶
「確かに、陸君はモテそう」
春香
「でも、今回は違うよね」
少しだけ、やわらかく笑う。
「小学校の塾が同じで再会して……そのまま付き合うって、なんかすごい」
「しかも、ちゃんと真面目に付き合ってるし」
「……ちょっと運命っぽい」
***
由衣が、ふっと赤くなる。
***
誠
「確かにな……」
「陸、今回ちゃんと付き合ってる感じするわ」
少しだけ安心したように、言う。
「正直、ほっとした」
……これで終わるはずだった。
そのとき。
奈央ちゃんが、小さく首を傾げた。
奈央
「でもさ」
グラスを置く音が、やけにはっきり響いた。
「陸君って……由衣ちゃんのこと、いつから好きだったの?」
――その質問だけは、まずい。
今回は、陸の友達側から見た「なんか今回違うぞ」がじわじわ出てくる回でした。
今までは「どうせすぐ終わるだろ」みたいに見られていた陸が、由衣といることで少しずつ変わって見えている感じです。
それと同時に、由衣もかなり自然に距離を縮めています。
手を握るところとか、本人はたぶんそこまで意識してないのに、周囲から見ると結構破壊力があるやつです。
そして最後の質問。
あれは、陸にとってかなり危ない質問だったりします。
次回もよろしくお願いします。




