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バッドエンド02
『俺はお前のこと、嫌いじゃなかった』
言葉通り、クリス様の声はどこか優しい。
だけど今はそれが辛かった。いっそ罵って、責めてもらえたほうがよかったとさえ思える。
『これまでお前がしたことについては、誰にも言わない。だからお前は好きにしろ』
『クリス、さま、私は……、』
『けど、これ以上は駄目だ』
『……っ、』
『今度あいつに何かしたら、お前も公爵家も全力で潰す』
その一言で、この人は本気なのだと理解した。
完璧な兄を持ち、比べられ、それを受け入れてなお、妬むこともなくひがむこともなく。
だから本当に強いのだ。私にはできない、私にはとても。
『俺にそれをさせるなよ――、頼む、シェリー』
涙が溢れた。
突然弟ができて、父と母の愛情を失った。
そう思いこんでこっそり泣いていたあの日、手を繋いでいてくれた幼馴染。
今、それさえも失って、自分の愚かさに気付く。
ゆっくり遠ざかっていく足音に、私は顔を上げることすらできなかった。
もうここにはいられない。
ヘレナに会うたび、この屈辱を思い出すだろう。
クリス様に会うたび、この悲しみを思い出すだろう。
誰も傍にいなければ、この孤独だけを耐えればいい。




