ゴリラのキーホルダーと降りる階
朝から、気が重かった。
琢磨は駅のホームで、スマホを見ていた。
出勤前の人間は、だいたい顔が死んでいる。
その中でも、今の自分はだいぶひどい方だと思った。
会社が倒産したのは、三週間前。
今の職場は、紹介で入ったアルバイトだった。
まだ試用期間。
社員でもない。
安定もしていない。
給料日も遠い。
貯金は少ない。
一人暮らしの家賃は待ってくれない。
そのうえ、先週、彼女と喧嘩別れした。
別れ際に言われた。
「琢磨って、ずっと宙ぶらりんだよね」
その言葉だけが、頭に残っていた。
宙ぶらりん。
否定できなかったのが、一番きつかった。
⸻
【LINE】
08:12 詩音
兄ちゃん起きてる?
08:12 琢磨
起きてるよん
もう電車だし
08:13 詩音
えらい
08:13 琢磨
成人男性に言う言葉か〜?
08:14 詩音
今の兄ちゃんには必要
08:14 琢磨
否定できないのが腹立つなァ
08:15 詩音
昼、会社近く行くからご飯食べよ
08:15 琢磨
いいの?
08:16 詩音
慰め会
08:16 琢磨
情けな
08:17 詩音
情けなくても食べるものは食べな
⸻
詩音は、こういう時だけ妙に頼りになる。
妹なのに。
いや、妹だからかもしれない。
変に励まさない。
でも、見捨てもしない。
昼に会う約束があるだけで、少しだけ会社へ行ける気がした。
琢磨は駅を出て、会社の入ったビルへ向かった。
六階にある小さな事務所。
今はそこで、データ入力と雑務をしている。
社員証はまだ仮のもの。
プラスチックケースの中に、紙のカードが入っているだけ。
鞄には、ゴリラのキーホルダーがついていた。
詩音が昔、くれたものだ。
丸い顔のゴリラ。
妙に真顔。
腹立つくらい堂々としている。
「兄ちゃん、メンタルだけでもゴリラになれ」
そう言って渡された。
いらないと言いながら、ずっとつけている。
人間、いらないものほど手放せない。
めんどくさい構造でできている。
⸻
ビルのエントランスに入る。
自動ドア。
白い床。
受付横の観葉植物。
いつも通りだった。
琢磨はエレベーターに乗った。
他には誰もいない。
ボタンを押す。
六階。
のつもりだった。
その時、スマホが震えた。
⸻
【LINE】
08:43 詩音
昼なに食べる?
08:43 琢磨
何でもいい
08:44 詩音
出た
一番困るやつ
08:44 琢磨
じゃあ定食
08:44 詩音
ざっくりすぎる
08:45 琢磨
揚げ物以外
08:45 詩音
胃もメンタルも弱ってるね
⸻
画面を見ながら、琢磨はエレベーターを降りた。
ドアが開いたから。
降りた。
それだけだった。
数歩歩いてから、違和感に気づいた。
暗い。
会社の六階は、朝から電気がついている。
誰かしらいる。
電話の音もする。
コピー機の音もする。
誰かの咳払いも聞こえる。
でも、そこは真っ暗だった。
完全な暗闇ではない。
非常灯だけが、ぼんやり廊下を照らしている。
薄い緑色の光。
壁も床も灰色に見える。
琢磨は顔を上げた。
目の前に、階数表示があった。
3F
「……あ」
三階を押していた。
六階じゃなくて。
ただの押し間違い。
そう思った。
二日酔いでもないのに、朝からこれか。
自分で自分にうんざりした。
琢磨は振り返った。
エレベーターのドアは、もう閉まっていた。
上ボタンを押す。
反応しない。
もう一度押す。
光らない。
「なんだよ」
ボタンが壊れているのかと思った。
でも、指先にはちゃんと押した感触がある。
ただ、ランプがつかない。
廊下の奥を見る。
人はいない。
三階って、何の会社が入っていたっけ。
思い出せない。
そもそも、三階で降りたことがない。
スマホを見る。
アンテナは一本。
ビルの中だし、そんなものか。
詩音にLINEした。
⸻
【LINE】
08:47 琢磨
間違えて3階で降りた
08:47 詩音
なにしてんの
08:48 琢磨
6階押したつもりだった
08:48 詩音
スマホ見ながら歩くから
08:48 琢磨
母親か
08:49 詩音
妹です
08:49 琢磨
エレベーター来ない
08:50 詩音
階段は?
08:50 琢磨
探す
⸻
琢磨は廊下を歩いた。
非常灯だけの廊下は、思ったより長かった。
左右に扉が並んでいる。
けれど、会社名のプレートがない。
普通なら、テナント名が貼ってあるはずだ。
代わりに、白い紙が貼られていた。
一枚目。
保留
二枚目。
仮置き
三枚目。
未決定
琢磨は足を止めた。
「なんだこれ」
紙は新しい。
印刷ではなく、手書きに見えた。
でも、字が妙にきれいすぎる。
人が書いたのに、人の癖がない。
さらに奥の扉には、こう書かれていた。
試用中
胸の奥が、嫌なふうに縮んだ。
試用中。
今の自分のことみたいだった。
気にしすぎだ。
ただの偶然。
琢磨はそう思おうとした。
でも、その奥の扉に貼られた紙を見て、足が止まった。
宙ぶらりん
その文字だけ、少し濡れていた。
黒いインクが下へ滲んでいる。
⸻
【LINE】
08:54 琢磨
変な階かも
08:54 詩音
何が?
08:55 琢磨
扉に保留とか仮置きとか書いてある
08:55 詩音
倉庫?
08:56 琢磨
分からん
08:56 琢磨
試用中って書いてる扉もある
08:57 詩音
兄ちゃん
08:57 琢磨
なに
08:58 詩音
戻った方がいいよ
08:58 琢磨
エレベーター来ないんだけど
08:59 詩音
階段探して
08:59 琢磨
探してるけどみなあたらない
⸻
送信した直後。
もう一通、詩音から来た。
⸻
08:59 詩音
そこは兄ちゃんみたいな人が降りる階だよ
⸻
琢磨は、画面を見つめた。
少し遅れて、詩音からまた来た。
⸻
09:00 詩音
ごめん
今の私じゃない
09:00 琢磨
は?
09:00 詩音
送ってない
09:01 琢磨
いや表示されてる
09:01 詩音
スクショ送って
09:01 琢磨
スクショ撮れない
09:02 詩音
なんで
09:02 琢磨
画面が暗くなる
⸻
実際、スクショを撮ろうとすると、画面が一瞬真っ暗になった。
スマホが古いわけじゃない。
壊れているわけでもない。
なのに、そのメッセージだけを残そうとすると、画面が消える。
琢磨は顔を上げた。
廊下が、さっきより暗い。
非常灯が遠くなっている。
いや、自分が奥へ進みすぎたのか。
戻ろう。
そう思って振り返った。
エレベーターの場所が見えなかった。
さっきまで真っ直ぐ歩いてきただけなのに。
廊下は、いつの間にか曲がっていた。
角なんてなかったはずなのに。
琢磨は喉が乾いた。
「嘘だろ」
声が、廊下に吸われた。
返ってこない。
普通、廊下なら少しは響く。
でも、音が布に吸われるみたいに消える。
スマホが震えた。
⸻
【LINE】
09:04 詩音
電話する
09:04 琢磨
待って
09:04 詩音
なんで
09:05 琢磨
音がしたら変なのも来そう
09:05 詩音
変なのって何
09:05 琢磨
分からん
09:06 詩音
兄ちゃん今、深呼吸して
09:06 詩音
ゴリラ持ってる?
⸻
ゴリラ。
琢磨は鞄を見た。
ゴリラのキーホルダーは、ちゃんとついていた。
非常灯の緑色の下で、真顔のゴリラが揺れている。
いつもなら間抜けに見える。
でも、その時は妙に安心した。
⸻
09:07 琢磨
持ってる
09:07 詩音
それ触って
09:07 琢磨
なんで
09:08 詩音
兄ちゃんがこっちの人間って分かるものだから
09:08 琢磨
雑な呪具みたいに言うな
09:08 詩音
真顔ゴリラを信じろ
09:09 琢磨
頼りなさすぎるって
09:09 詩音
今は頼れ
ゴリラは強いから
⸻
琢磨は、ゴリラのキーホルダーを握った。
硬い。
少し冷たい。
でも、ちゃんと手の中にある。
その感触だけが、妙に現実的だった。
会社が倒産したこと。
彼女と別れたこと。
今の仕事が試用期間なこと。
全部、ふわふわしていた。
でも、このゴリラだけは、昔から変わらず鞄についている。
詩音が笑いながら渡してきたことも覚えている。
「メンタルゴリラ計画」
そう言っていた。
馬鹿みたいな思い出だった。
その馬鹿みたいな記憶が、今はありがたかった。
廊下の奥から、音がした。
チン。
エレベーターの到着音。
琢磨は顔を上げた。
暗い廊下のずっと先。
エレベーターの扉があった。
いつの間に。
そこに。
表示はない。
上にも下にも、ランプはついていない。
ただ、扉だけが少し開いている。
中は暗い。
⸻
【LINE】
09:12 琢磨
エレベーターあった
09:12 詩音
乗らないで
09:12 琢磨
え
09:13 詩音
今の私じゃないかもしれないけど
乗らないで
09:13 琢磨
どういうこと
09:13 詩音
兄ちゃんから今LINE来た
09:14 詩音
「もう乗った」って
⸻
琢磨は、目の前のエレベーターを見た。
扉の隙間が、少し広がった。
まるで、待っているみたいに。
スマホに、またメッセージが来た。
詩音の名前で。
⸻
09:14 詩音
乗れば決まるよ
09:14 詩音
試用中じゃなくなるよ
09:15 詩音
保留じゃなくなるよ
09:15 詩音
どこにも戻らなくていいよ
⸻
琢磨の指が震えた。
それは少しだけ、甘い言葉だった。
戻らなくていい。
会社に行かなくていい。
金の心配もしなくていい。
彼女に言われたことも、思い出さなくていい。
何者でもないまま、どこかに置かれていればいい。
そういう誘惑だった。
情けないけれど。
一瞬、楽に見えた。
その時、詩音から本物のメッセージが来た。
なぜか、分かった。
文面が雑だったから。
⸻
09:16 詩音
兄ちゃん
そっちの私、文章きれいすぎ
09:16 詩音
私そんな丁寧に誘惑せん
09:17 詩音
戻って
09:17 詩音
昼ご飯食べるって言ったやろ
2人で食べにいこう
⸻
琢磨は、息を吐いた。
笑いそうになった。
泣きそうにもなった。
「そうだよな」
昼飯。
たかが昼飯。
でも、約束だった。
戻る理由としては、十分だった。
琢磨はエレベーターには近づかなかった。
ゴリラのキーホルダーを握ったまま、来た道を戻る。
廊下が曲がっている。
でも、歩く。
詩音にLINEを打つ。
⸻
【LINE】
09:18 琢磨
昼なに食うんだっけ
09:18 詩音
定食
09:18 琢磨
揚げ物以外
09:19 詩音
そう
09:19 琢磨
味噌汁ついてるやつ
09:19 詩音
弱った兄にやさしいやつ
09:20 琢磨
俺まだそっち戻れる?
09:20 詩音
戻れる
09:20 琢磨
根拠は
09:21 詩音
私が昼ご飯おごるって決めたから
09:21 琢磨
雑だよな、、いつも
09:21 詩音
戻ってこい
⸻
廊下の扉が、次々に開き始めた。
中は見えない。
真っ暗だった。
ただ、扉の奥から声がした。
「仮のままでいい」
「保留でいい」
「決めなくていい」
「戻っても苦しい」
「戻っても何もない」
それは、誰かの声ではなかった。
琢磨自身の声に似ていた。
心の底で、ずっと思っていたことだった。
戻っても苦しい。
戻っても金はない。
仕事も不安定。
恋人もいない。
将来も見えない。
なら、ここで止まってもいいんじゃないか。
そんな考えが、足元から絡みつく。
琢磨は、ゴリラを握りしめた。
「いや」
声が出た。
「俺、昼飯食うから」
ひどい台詞だった。
でも、その瞬間。
扉の奥の声が、少しだけ遠ざかった。
スマホが震える。
⸻
【LINE】
09:24 詩音
兄ちゃん
09:24 琢磨
なに
09:25 詩音
今から電話する
09:25 琢磨
音が怖いんだけど
09:25 詩音
音じゃなくて振動を頼って
09:26 詩音
バイブ鳴った方に進んで
09:26 詩音
声がしても無視
⸻
すぐに着信が来た。
琢磨は電話に出なかった。
ただ、スマホを握った。
ぶー。
ぶー。
手の中で震える。
その振動が、少し右から来ているような気がした。
そんなわけない。
スマホは手の中にある。
それでも、感覚として分かった。
右。
琢磨は右へ曲がった。
そこに通路があった。
さっきまで壁だった場所。
ぶー。
ぶー。
今度は前。
進む。
薄暗い廊下。
扉。
非常灯。
ぶー。
ぶー。
左。
曲がる。
すると、見覚えのある場所に出た。
最初に降りたエレベーターホール。
三階の表示。
閉じたエレベーター。
上ボタン。
琢磨は駆け寄った。
ボタンを押す。
今度は光った。
赤く。
普通の光だった。
こんなに普通の赤いランプで安心する日が来るとは思わなかった。
エレベーターが来るまでの数秒が、異様に長かった。
背後から、声がした。
「保留のままでいいのに」
振り返らなかった。
「仮のままでいいのに」
振り返らない。
「戻っても、また落ちるよ」
振り返らない。
チン。
エレベーターが来た。
ドアが開く。
中は明るかった。
普通のエレベーター。
壁に少し傷があって、床に細かいゴミが落ちている。
現実の雑さだった。
琢磨は乗り込んだ。
六階を押す。
その下に、見覚えのないボタンがあった。
仮
そんなボタン、普通ない。
琢磨は見ないふりをした。
六階のランプがつく。
ドアが閉まる直前。
廊下の奥から、何かが言った。
「次は、決まらない時に」
ドアが閉まった。
エレベーターが動いた。
上へ。
普通に。
⸻
六階に着いた。
ドアが開く。
明るい廊下。
コピー機の音。
誰かの話し声。
電話の呼び出し音。
会社だった。
琢磨は、しばらくエレベーターの中から出られなかった。
上司が通りかかって言った。
「琢磨くん? 大丈夫?」
「あ、はい」
「顔色悪いよ」
「ちょっと、エレベーターで酔いました」
雑な嘘だった。
でも、上司は普通に信じた。
「朝から大変だね。無理しないで」
それだけ言って行った。
普通の会話。
普通の会社。
普通の試用期間。
戻ってきた。
琢磨はトイレへ行き、個室に入った。
スマホを見る。
詩音との通話は、不在着信になっていた。
一度も出ていない。
LINEには、さっきのやり取りが残っている。
ただし、変な文面だけが消えていた。
「そこは兄ちゃんみたいな人が降りる階だよ」
「乗れば決まるよ」
「保留じゃなくなるよ」
全部ない。
詩音の本物の言葉だけが残っていた。
⸻
【LINE】
09:32 琢磨
戻った
09:32 詩音
よかった
09:33 詩音
ほんまに戻った?
09:33 琢磨
たぶん
09:33 詩音
今どこ
09:34 琢磨
会社のトイレ
09:34 詩音
現実っぽい
09:34 琢磨
判断基準が嫌だね
09:35 詩音
昼、絶対来て
09:35 琢磨
行くよ、かならず
09:35 詩音
ゴリラ持ってきて
09:36 琢磨
なんで
09:36 詩音
生還者確認
⸻
昼。
琢磨は詩音と定食屋に行った。
焼き魚定食を頼んだ。
味噌汁がついていた。
詩音は琢磨の鞄についたゴリラのキーホルダーを見て、眉をひそめた。
「これ、こんな傷あったっけ」
「え?」
ゴリラの腹のところに、細い傷がついていた。
白く削れたような傷。
そこに、小さく文字みたいなものが見えた。
琢磨は目を細めた。
仮
そう読めた。
詩音にも見えたらしく、顔をしかめた。
「捨てる?」
琢磨は首を振った。
「いや」
「怖くない?」
「怖いけど」
琢磨はゴリラを指で撫でた。
「これがあったから戻れた気がする」
詩音は少し黙ってから言った。
「じゃあ、次はもっと強そうなやつ買う?」
「ゴリラ以上って何だよ」
「金のゴリラ」
「成金すぎる」
二人は少し笑った。
久しぶりに、ちゃんと笑った気がした。
⸻
その日の帰り。
琢磨は、ビルの管理室に寄った。
「三階って、何が入ってるんですか」
管理人は、首をかしげた。
「三階?」
「はい」
「三階は今、空きフロアですよ。改装前で止めてます」
「止めてる?」
「ええ。エレベーターも三階には止まらない設定です」
琢磨は、何も言えなかった。
管理人は、操作盤の資料を見せてくれた。
確かに、三階は停止対象外になっていた。
ボタンを押しても、通常は反応しない。
「今朝、三階で降りたんですけど」
琢磨がそう言うと、管理人は困ったように笑った。
「押し間違いじゃないですか?」
「押し間違いです」
「なら、別の階だったのかもしれませんね」
その言い方が、何気なく怖かった。
別の階。
そう。
たぶん、別の階だった。
三階ではなく。
仮の人が降りる階。
⸻
それから、琢磨はエレベーターに乗る時、必ずボタンを確認するようになった。
スマホを見ながら降りない。
三階のボタンは押さない。
いや、押せない。
普通の操作盤には、ちゃんと三階のボタンがある。
でも、たまに朝だけ。
寝不足の日や、仕事の契約更新が近い日。
自分がまた宙ぶらりんになりそうな日に。
六階の下に、もう一つボタンが見える。
仮
指を近づけると、鞄のゴリラが小さく揺れる。
それで我に返る。
琢磨はそのたびに、詩音へLINEを送る。
⸻
【LINE】
08:41 琢磨
昼空いてる?
08:42 詩音
また?
08:42 琢磨
いや
確認
08:43 詩音
生存確認?
08:43 琢磨
現実確認
08:44 詩音
今日は無理
でも夜なら電話できる
08:44 琢磨
助かる
08:45 詩音
ゴリラ触っとけ
08:45 琢磨
お守り扱いになってる
08:46 詩音
真顔ゴリラ様やぞ
⸻
琢磨は笑って、エレベーターに乗る。
六階を押す。
今度は間違えない。
ドアが閉まる。
上へ動く。
普通に。
ただ、閉まる直前。
鏡の奥に、薄暗い廊下が映ることがある。
そこには、扉が並んでいる。
保留。
仮置き。
未決定。
試用中。
そして一番奥の扉に、まだ湿った字でこう書いてある。
琢磨
琢磨は、それを見ないふりをする。
見ないふりをして、ゴリラのキーホルダーを握る。
戻る場所があるうちは。
呼ばれても、降りない。




