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おと  作者: 木土口一寸


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謎解き

「客足が遠のいとる別府に、何とかまた賑わいば取り戻したいと、尚斗があの若さで街おこし振興会の会長を務めることになったんよ」

「へぇ、すごいね」

「それで別府の魅力ば全国に伝えるPR大使になって欲しいと、尚斗は私に声を掛けてくれたとよ。仕事として、PR内容の打合せ等で二人になる場面が多かったけん、それとなく好いとるよと言ってみたんよ。それからかな、仕事の後もたまに会うようになって、気付いたら今って感じかな」

「そっかぁ、そうゆうことね。まぁ美和らしいっちゃらしいね。それならもういっか」

「え? なになに? もういいって何がよ?」

「実はさ、尚斗も高校の時からずっと美和のこと好きだったんだって。ずっと言わないでって言われてたんだけど」

「え、そげなことちっとも聞いてなか」

「まぁまぁ、落ち着いてよ。おめでたいこと

なんだからさ。結婚式には絶対呼んでよね」

「もちろん」

 二人の結婚式は、来年この旅館で盛大に行われる予定だ。今後、尚斗は名実ともに押しも押されぬ支配人へと成長を遂げるだろう。美和も元気のある娘だから、若女将として尚斗を支え、旅館を切り盛りしていけるに違いない。今後の岡田屋の益々の発展を願う詩音であった。

 「お久しぶりです。その節はお世話になりました」

翌日、事件でお世話になった別府東署の三隅警部(当時警部補)と荒井田巡査部長のもとを訪ねた。

「おう、これはこれは金井さん、久しぶりですね。元気でいらっしゃいましたか?」

「はい、なんとか」

「今日はどうさましたか?」

「警部に質問があって訪ねさせていただきました」

「質問・・ですか」

「私、ずっと気になってたんです。左利きという理由だけで、なぜ井本健太郎が犯人だとわかったのか?彼は名前に『お』も『と』も入っていません」

「それは彼のポジションがオポジットだからですよ」

「それって僕が言ったやつじゃないですか」

荒井田が鋭くカットインしてきた。

「『IMOTO』を反対側から読むと『おとみ』となるでしょう?彼は中学時代、仲間からそう呼ばれていたのでしょう。それと、高山翔さんのスマホに助けられました」

「彼のスマホにですか?」

「ええ。高山さんのボイス日記が今回の事件の決定的な証拠となりました。井本さんから想いを打ち明けられた日、あなたは彼である高山さんに相談されましたね?高山さんはボイス日記を録音する際に、大事なことは件名を入力するようにしていたんだと思われます。あなたへのプロポーズの時もたしかそうでしたね?この件も件名が付いていたおかげですぐに見つけることができました」

詩音はおもむろにバッグから翔のスマホを取り出した。

「おや?それは高山さんのスマホではありませんか。弟さんに預けたはずですが、あなたがお持ちだったとは」

「つい先日、バレーの日本代表を取材しに沖縄に行った際、大地から託されました」

詩音はボイスレコーダーアプリを起動させ、『おとに相談された 2018年7月25日 20:38』と記録されている項目を発見し、それをタップした。


【今日、おとに告白されたことを聞かされた。まさかあいつがおとのこと好きだったとは。いつかこの件も含めて誤解を解かなければいけない】


「我々はこの日記に救われました。そういえばあなたがこのヒントをくれたんでしたね?この証拠がなければ解決出来なかったと言っても過言ではありません。ほんとになんとお礼を言っていいのやら」

「警部さんにそこまで言ってもらえるなんて。あの人も捜査の役に立てて喜んでいると思います。今日はありがとうございました。寄らせていただいてよかったです」

 こうして久しぶりの郷帰りを終え、東京への帰路を辿った。

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