真相
東京に戻った詩音は、間近に迫っている締め切りに間に合わせようと、ボイスレコーダーをバッグから取り出し、文字に起こす作業に取りかかった。バッグを開けた時にあの人のスマホが目に入る。1週間後、彼女は自分が書いた記事が掲載されている雑誌を、通りかかった書店の軒先で見つけた。その雑誌の表紙は、高山大地だった。そういえば、あの人もいつか雑誌の表紙を飾れるような選手になりたいっていってたことを思い出した。
翌日、詩音は都内にある刑務所を訪れた。所員に導かれながらガラス越しに現れた彼は、無精髭を生やし昔の風貌からはほど遠い姿になっていた。
「久しぶりだね、健太郎」
「ああ、久しぶり」
「私的には今の健太郎のほうがいいかも」
「冷やかしか?こんなとこになんの用だよ」
「なんの用はないでしょ?元チームメートに会いにくるのってそんなにおかしいこと?」
「そりゃどうも。で、今なにやってんだ?」
「今ね、スポーツ記者やってるんだ。あっそうだこれ見てよ、私が取材した記事が載ってるんだよ。しかも表紙がね、じゃーん大地くんだよ」
「へぇあいつも頑張ってんだ」
「そうなんだよ。来年からはミラノでプレイすることが決まってるの。すごいよね」
「兄貴の果たせなかった夢を叶えてやったんだな」
「・・ねぇ、やっぱり日本代表でプレイしたかった?」
「そりゃあ、まぁね」
それからしばし沈黙が続いた・・
「ちょっと聞いていい?なんであんなことしたの?」
「それ今聞く?そりゃあ翔のことが邪魔だと思うようになったからだよ。そっちのせいでもるけど」
「だからって殺すことなかったんじゃない?」
「今になって思うとそうかもね」
「ところで首締める道具に充電コードを使ったのはなんで?」
「しっかりと痕を付けるため」
「それにしてもあの刑事も途中まではさすがだったよね?あの日の夜相談しておいて良かった」
「最初こっちに向かって来た時はやられたって思った。あの人のボイスメモに名前が入っていたのは計算外だったけど」
「まぁ、結果まんまとかかってくれたけどね」
「この前会いに行ったんだけど、その時もねあの警部補の人かなりのしたり顔だったんだけど。警部に昇格なんかしちゃったりして」
二人はお互いに微笑を交わした。
「早く出てきてね、待ってるから。身代わりになってくれてありがと」
完
長きに渡りご愛読いただきましてありがとうございました。またどこかでお会いできますことを心よりお祈り申し上げます。




