表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おと  作者: 木土口一寸


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
33/36

お墓参り

「こんなところで何してんの? あなたはいつでもそうやって声掛けるのね」

「何って? 墓場やけん墓参りに決まっとろうが。翔の墓参りに来たとよ」

詩音は、えっと驚きをみせた。

「翔のお墓、ここにあるの?」

「そっか、おとは知らんかったっけ? ここは元々翔の親父さんが経営しとった工場の跡地なんよ。そろそろ工場をたたもうと考えとった親父さんは、翔が亡くなったのをきっかけに自営を終えて、その跡地を翔の墓場にと考えたんやて。俺はそれから近く通る度に寄って、線香ばあげとるけん。さあ、おとも手合わせてあげんね」

二人は中に進み、翔のお墓の前に立った。詩音は杓で墓石に水をかけながら、心の中でごめんねごめんねと何度も繰り返した。

「あいつはこれからもずっとおとのこと見守ってくれとるよ」

「そうじゃ。強くなんなきゃいかんとね。いつまでもおんぶにだっこじゃ、あの人も安う眠れんけんし」

久しぶりに使った熊本弁は、随分と下手になっていた。もうあの頃には戻れないんだと詩音は痛感した。

 

 2026年、スポーツ記者として4年目となる初夏に、詩音は沖縄にいた。

今年行われる世界バレーの強化合宿中、ある選手の取材を任されていた。詩音は、元バレーボール部マネージャーとしての知識を糧に、独特の切り口で責めた記事が話題をよび、ことバレーボール取材においては、4年目にして他の出版社の記者からも、一目置かれる存在となっていた。

「やはり取材したい選手はこの人ですか?」

某大手出版社の記者は、雑誌の記事を指さして訊いてきた。

「もちろんです。スーパースターですから」

そう話していると、選手を乗せたバスが体育館にやってきた。たくさん集まった取材陣を前に、選手たちはバスの中から顔を覗かせている。バスから選手たちが降りてきた。詩音は一目散に目的の選手に駆け寄っていった。

「調子はどうですか?」

「最高に仕上がってます。今度の大会ではいいパフォーマンスをお見せできると思います」

「そうですか。それは期待できますね。ところで・・」

そう話しかけた時、その選手から待ったがかかった。

「詩音さん、そのしゃべり方やめませんか?」

「いや、でも・・」

詩音は困りながら俯いた。

「僕にとっては、今でも昔のままの最高のマネージャーだと思ってますから」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ