積年の遺恨
「僕と翔と尚斗は同じ中学のバレーボール部で、いつも一緒にいました。中学2年生の時、僕は初めての彼女ができました。初めてできた彼女ということもあり、彼女と過ごす時間が増え、自然と3人でいる時間は減っていきました。それから数カ月後、彼女との別れを機に、また翔と尚斗の元へ戻ろうとした時、僕は元カノと翔が一緒に下校している姿を見てしまいました。はじめは偶然かとも思いましたが、その後も2度3度と同じ状況を見るようになり、僕はそれを問いただすこともせず、一方的に口を利かないようにしました。それからというもの、部活内でも険悪な状態が続き、仲直りもできないまま間もなくして父親の転勤を理由に、僕は浜松へ引っ越しすることになりました。高校になった僕は身長がグンと伸び筋力もアップし、OHとして高校生のなかでも一目置かれる存在にまで成長し、T大にスカウトされました。そこで再び翔に会いました。当然のことながら、翔も僕のことを忘れていませんでした。あれから4年も経っているので、そこまでの遺恨はありませんでしたが、昔のように仲良くとまではいきませんでした。しかしそこでまた事件は起きてしまったんです。大学1年の夏、軽井沢での合宿で僕はそこにいる詩音に告白したんです」
「え?ほんまか?そんなことあったんか?」
隼人はすっとんきょうな声を上げた。
健太郎は詩音に尋ねた。
「その時、『付き合ってる人がいるからごめん』って言ったよな?」
「うん」
「それって翔のことだろ?昨日新幹線の中で言ってたもんな?俺はこの4年間その事実をずっと黙り続けられてきたんだよ。しかも同じ相手に2度負けてんだよ。ポジションの件も含めたら3度だぞ。中学時代に俺は左利きだからという理由でWSにはなれないって顧問から言われ、翔に負けたんだ」
「少しずつ重ねられた遺恨がここまでになったというわけですか」
「このまま尚斗が身代わりになってくれれば俺はバレーを続けていられる。翔に代わって今度こそ俺の時代がくる。俺がスーパースターになれる番だと。でも、詩音が連行される姿を目のあたりにするのはさすがにきつかった」
三隅の顔からは怒りと悲しみの2つの感情が入り交じっているかのように見えた。
「井本さん、あなたを高山翔殺人の容疑で緊急逮捕します」
荒井田は健太郎の手首に手錠をかけ、2人は東警察署へと戻っていった。




