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おと  作者: 木土口一寸


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犯行理由

声を放ったのは、健太郎だった。

「やったのは詩音ではありません」

「女性の力であそこまでの索状痕はなかなか付けれるものではありません。動機はなんですか?」

「1月8日の夜、船での夕食で少し飲みすぎてしまい、外の空気に触れようとデッキに向かいました。ドア付近へ向かった時、翔と詩音であろうと思われる声がかなりの音量で聞こえていたので、その内容に耳を傾けると、翔が卒業後日本に残らずミラノに行くという内容のものでした」

「そのようですね。その内容は我々も詩音さんからうかがいました」

「翔は自分と同じで、是非全日本にと誘いを受けてました。あいつは仲良くしたいタイプの人間ではなかったが、凄い選手であることは間違いありませんでした。今のポジションを受け入れることができたのも、あいつならWSを任せられると思ったからなんです。だから全日本でもお互い切磋琢磨しあって、今

よりもっと自身を高めていけるライバル的存在だと思っていたんです。それなのに日本からいなくなると聞いたもんだから、居ても立っても居られなくなり、次の日、旅館で翔の部屋を訪れたんです。そこでなんとか日本に留まってくれないかとお願いしました。しかし彼の決意は固く、それにはこたえられないとのことでした」

「そんな理由で犯行に?」

「いえ、そこまでは良かったのですが、諦めて部屋に戻ろうと立ち上がり、部屋のドアに手をかけた時、『日本の未来は俺にかかってる、俺の苦悩はオポジットのお前にはわからない』と言われ、頭に血が上り、とっさに浴衣の帯を後ろから巻きつけたんです。アルコールが入っていたせいもあり、思ったより強く絞めてしまったみたいで、翔はそのままぴくりとも動かなくなってしまいました」

「そのあと尚斗さんが部屋に入ってこられたんですね?」

「そうです。僕は、カッとなって殺してしまった後悔と、座椅子で力をなくしている翔の姿をみて、放心状態になっていました。そこに彼が現れて、俺がやったことにするからおまえは早く部屋に戻れと言ってきました。自首するつもりでしたので、最初はもちろん断りましたが、彼の執拗なまでの説得に根負けし、結果として彼の案に乗ることとなりました。そして次の日の朝を迎えたということです」

「井本さん、他のメンバーの方の情報によりますと、在学中あなたは被害者とあまり親しくされてなかったようですな。今聞いた話だけで人を殺めてしまうにはあまりに合点がいきません。なにかほかに理由があるのでは?」

「・・・はい、実は翔と僕は同じ中学だったんです」

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