荒井田巡査部長のお手柄
「ところでよ、ここに書いてある『L』ってのは『リベロ』っていうポジションなんじゃろ? じゃこの『OH』ってのはどういうポジションなんや?」
相変わらず現場写真とスマホと大会資料とのにらめっこを続けたまま三隅はたずねた。
「それは、アウトサイドヒッターの略です。それも僕の時代にはなかったポジションです。リベロが守備のスペシャリストなら、アウトサイドヒッターは攻撃のスペシャリストです。ライト方向からスパイクを打つ事が多いので、基本的には左利きの選手がそのポジションを任されます」
「ふーん、お前刑事の知識は全くやけど、バレーの知識はまあまああるんやな」
「警部、いい加減にしてくださいよ」
荒井田は半笑いでこたえた。
「それならついでにもう一つ知識があるとこをお見せしましょうか?」
三隅は手をヒラヒラさせ、もういいよといいたそうだ。
「アウトサイドヒッターは、オポジットって呼ばれることもあり、『OP』と表記されます。ポジション的にセッター、つまりライトポジションの対角に入ることからそう呼ばれます。オポジットの持つ英語の意味が、反対側っていうことからきてるんです。知ってました?」
(反対側…なるほどな。荒井田くんのおかげでようやく謎が解けそうだ。しかしこれだけでは状況証拠が弱すぎる。なんとか自白に持ち込めないものか…ん?これはなんだ?……これなら使えるか?)
「荒井田くん、ロビーにみんなを集めてくれ」
数分後、一同はロビーに集められた。そこに尚斗の姿はなかった。不可解な状況の中、三隅は静かに話し始めた。
「集まっていただきありがとうございます。集まっていただいたのはほかでもありません」
「兄貴のこと、なにかわかったんですね?」
大地が血相を変えて質問した。
「はい、おっしゃるとおりです。まず、高山翔さんは自殺ではないことが判明しました。ある人物に殺害されています」
「ある人物・・?」
「ええ、ここまで自殺として調査をすすめてまいりましたが、やはり不自然な状況がありまして、ある人物を問い詰めたところ本人が殺害を自白しました」
「誰なんですか?」
詩音は問い尋ねた。
「岡田尚斗です」
「そんな、尚斗さんが兄貴を?」
「しかしながら、彼の自白と金井さんの証言に相違があり、引き続き調査を続けておりました。そこで次のことがわかりました。犯人は岡田尚斗ではありません。なぜなら犯人は左利きの人間だからです」




