手掛かり
【おとへ 昨日はごめんな。おとが言っていることが正論過ぎて、なにも言い返せなかったよ。とにかくちゃんと考えてと言われて、あれからもう一度自分に正直な気持ちで考えてみたんだけど、やっぱり俺の気持ちは変わらなかった。だからミラノに行って挑戦してくる。なぁ、4年前のこと覚えてるか?前は交際をかけて、インターハイ優勝を条件に告白したけど、今回はミラノだ。無事ミラノのトライアウトに合格して、ミラノの一員としてプロ選手になれたら、俺と結婚してくれないか。直接目の前にするときっと言えなくなると思うから、音声で残すことにしました。返事はいつでもいいので、また聞かせて下さい】
音声はここで終わった。詩音は手に持っていたスマホを、そっとテーブルの上に戻した。
「翔が・・・そんなこと・・考えていたなんて・・・私ほんと馬鹿だ。まじめな性格って・・わかっていたのに」
彼女は嗚咽を交えながら、途切れ途切れに言葉を発し、応接室から漏れるほどの大声で泣いた。
「被害者は、あなたとの事を真剣に考えておられたようですね」
そういった三隅の横で、荒井田はテーブルの上に置かれたスマホを注視していた。
「警部、これまだ続きがあるみたいです」
『件名なし 1月9日 21:43』と記されている。
「おい、この時間って」
三隅はいい、荒井田は黙って頷きそこをタップした。
【・・・ガガッ・・、や・ろ・・・〇$ ☆ ・・】
物が当たったかのような音から始まり、途中で音声が途切れた。
「後ろで聞こえるテレビの音で音声がジャマされてますね。もう一度聞きますね」
荒井田はそういうと、再びタップした。
【・・・ガガッ・・、やぇろ・・・〇$ ☆ ・・】
「途中は『やめろ』って言ってるようですね?」
「これは重要な手がかりになるかもしれん。荒井田くん、至急小野田くんのところへ持っていってくれ」




