容疑者確保
「その時の時刻は?」
「確か22時00分頃だったと思います」
「22時00分頃ですね」
三隅は荒井田に記録しておくように伝えた。
「そこでそのまま部屋に入り、説得されようとしたわけですね?」
「そうです。翔は卒業後すぐに海外でプレーしたい願望があって、それには愛する人と別れるくらいの代償は付きものなんじゃないかと説得しに行ったとです。最初は腰を据えて、お互い向き合って冷静に話し合いました。ですが、彼の決意は固く、どうしても海外じゃなきゃいけないという気持ちと、同時におとのことも全力で守ると逆に説得されてしまいました」
「その内容でどうして殺意が生まれたのです?」
「はい。確かにそこまではこうなるとは自分でも思っていなかったとです。ただ、僕はどこかでやっぱりまだ彼女のことが好きだったんでしょうね。その後、おまえが留守中の間、おとば俺が面倒みてやるけん安心して行ってこいって言ったんです。そしたら、おまえなんかに任せられるかってそんなふうにいわれて、彼女のことになると僕ほんとだめなんですよね。ついカッとなってしまって、そげん言い方はなかって近くにあった浴衣の帯で少し強めに首を絞めて揺さぶったんです。そしたら、アルコールが入っていたせいか、あいつ抵抗する力が弱くて、そのまま意識が朦朧としてしまって動かなくなってしまったんです」
「そういうことですか。それは立派な犯行動機になりますね」
「そうですよね」
「わかりました。岡田さん、あなたを送検します。よろしいですね?」
「はい、わかりました」
尚斗は留置所へ送られることとなった。
取調べを終えた三隅は、いつになく険しい表情になっていた。気を落ち着かせようと喫煙所で煙草を咥え火を点けようとした時、扉をノックする音がきこえた。ドアの向こうから"金井です"と声が聞こえ、三隅は咥えていた煙草を口から離し、どうぞと声を掛けた。
「あっどうも。どうされましたか?」
「お伺いしたいのですが、先ほどの翔のスマホの中身は調べられましたか?」
「スマホの中身ですか? それならまだ手付かずの状態のままですが」
「それを私が受け取ることはできませんか?」
「残念ですが、一連の捜査が終了するまでは規則上お渡しできないことになっているんです。どうして受け取りたいと思われたのですか?」
「ボイスレコーダーを確認したかったんです」
「ボイスレコーダー?」




