返事
「美和に相談して良かったとよ」
「うん、また悩んだら聞くけん、いつでも電話してきてね。もちろんただの無駄話も大歓迎♪ 」
電話を切ろうとスマホを耳から離しかけた時、受話口からそういえばと聞こえたような気がした。
「え? なに? どげんしたと?」
「あっごめん。同じバレー部の、詩音と幼稚園同じやったっていう尚斗くんやっけ? あの人も女子から人気あるみたいやけん、彼女作らんとやって。とてもバレーが恋人っていうタイプには見えんやけど。実はうちもちょっと気になっとるんよね。詩音なんか知らん? 誰か好いとう人でもおるんかな?」
「え?それは・・」
詩音は口ごもった。
「ん?なになに?詩音どうしたと?」
「んーどうなんやろか? 幼馴染っていっても幼稚園が一緒なだけやけん、その後の尚斗は正直ようわからん。部活でもそげな話は出てこんくて」
「ふーん、そうなんやね。なんかよか情報あったら教えてな。じゃおやすみ」
「うん、わかったよ。おやすみ、また明日ね」
電話を切った後、妙な胸騒ぎがした。尚斗のことが気になると美和から聞かされても何も思わないのに、翔が中学時代に私の知らない他の誰かと付き合ってたという話は、とても歯痒い気持ちになる。
(え? この感覚はなに? 私妬いてる?)
自分の気持ちに自問自答を繰り返し、ようやく考えがまとまった頃には、夜明けがもうすぐそこまできていた。
三日後、最終調整に入った安西高校は、本日インターハイ前、最後の練習試合が行われた。前回の練習試合で残した課題は、ある程度改善された試合内容で、そこそこいい状態で本番に臨めそうだと手ごたえを感じていた。試合後、他の部員はみな帰り、いつものように2人だけが最後まで残っていた。
「この前の返事なんやけど」
覚悟を決め、翔は詩音の方を振り返った。
「やっぱりこの前の条件では翔と付き合うことはできんよ」
翔はあからさまに落ち込んだ様子をみせた。
「うちも1年の時からマネージャーとしてチームば支えてきとって、一昨日昨年と悔しい思いをしてきたけん、最後の年にかける想いは翔だけじゃなか。それはうちも同じ。うちも優勝したいとよ」
何が言いたいのかさっぱりわからないといったような怪訝そうな顔つきで翔は詩音を見ている。
「いつも一緒におって、おるのが当たり前みたいな感じやったけど、言われて初めて気付いたと。うちも翔が好きみたいやけん、その優勝したらっていう条件はなしで、しなくても付き合う。だけど、せっかくなら優勝して付き合いたいけん、絶対優勝してほしか。それで目の前で優勝して喜んどる翔が見たい」
「そげんことなら、逆にその条件はのめん」
今度は、詩音がえ? という表情で翔を見ている。
「優勝して一緒に喜ぶんよ」




