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私のパパは世界一!  作者: 長谷川凸蔵


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最終話 私のパパは世界一!

 帝国へと帰還し、俺とエミリアは『儀式』を受ける事になった。

 まずは俺から、ヴィルドレフト帝との血の繋がりを確認した。

 この場にいるのは俺、エミリア、カミラ、皇帝陛下、マリアベルと、特別にカルナックが同席した。

 ほぼ身内? と呼べる者たちだけだ。

 儀式なんて大層な名前なので、もっと人を集めて行うと思っていたが、まずは本番に備えて事前に確認するのが常らしい。

 まあ、普通は出産時に行うらしいが。

 確かに本番で『血が繋がってない』みたいな事になれば、修羅場が確実だし。


 儀式には『聖杯』と呼ばれる、金の器に宝石が散りばめられた姿をした道具が使われるみたいだ。


「では、まずはこちらから」


 カルナックが、厳重に封印された瓶を皇帝陛下に手渡した。

 中身の劣化を防ぐ魔法が付与されているみたいだ。

 陛下が瓶を開き、まずは保存してあった先帝の血を聖杯に垂らす。

 次に俺の指に針を刺し、同じように血を垂らすと⋯⋯。


 はめ込まれた宝石がそれぞれ輝き始め、視界を虹色に染めた。


「うむ、この輝き、この光量⋯⋯これでお主とヴィルドレフト帝の血の繋がりは証明された」


 皇帝陛下が厳かに宣誓する。


「光り方でわかる、と?」

「うむ。私とヴィルドレフト帝は直系ではないだろう? だから私の時は八代遡って血脈を証明した。その時はここまでの光量ではなかったな」

「なるほど」

「では、次にエミリアとヴァンで」

「はい」


 聖杯を一度水で洗い、布で拭き取ったのち、まずは俺が血を垂らした。

 次に小さな針をエミリアの指先に刺し、エミリアも器に血を落とすと⋯⋯。


 聖杯からは、先ほどと同様の光が発した。


「おお、やはりお主とエミリアは実の親子だ」


 まるでその事実を祝福するような輝きに、胸が少し熱くなる。

 仮にエミリアと血が繋がっていなくても、俺と彼女が親子という事実は変わらない。

 だが、一度は諦めていた血の繋がり。

 それが間違いだった事を知り、嬉しいという気持ちが芽生えるのは否めなかった。


「良かったですね、ヴァン」

「うん、ありがとう」


 カルナックは自分の事のように、嬉しそうに微笑んでいた。

 その間、俺達の遣り取りを聞いていたエミリアは、何か考え事をしているみたいだ。

 真剣な表情だが⋯⋯もしかして、嬉しくないのだろうか?

 だとしたら、ちょっとショックなんだが。


「どうした、エミリア?」

「嬉しいけど、ちょっと残念かな⋯⋯」

「えっ!?」


 い、嫌だったの?

 俺が助けに行った時はあんなに喜んでくれたのに。


「もし血が繋がってなかったら、奥さんがいなくなって寂しいパパのために、将来結婚してあげよっかなーって思ってたのに」


 娘は表情を一転、ニヤニヤとからかうようにこちらを見てきた。


「えっ!? ⋯⋯こら、ニヤニヤするな、パパをからかうんじゃない!」

「えー? だって昔『私、大きくなったらパパのお嫁さんになる!』って言ったら、顔が溶けちゃうんじゃないかってくらい、喜んでくれたじゃない」

「そ、それは今でも言われたら嬉しいけど!」


 そこで、俺たちのやり取りを聞いていたカミラが会話に入ってきた。


「パパ、お嫁さんになってあげるって言われたら嬉しいの? んーとね! じゃあカミラがパパのお嫁さんになってあげる!」


 カミラの一言に、そんなはずはないのになぜか空気が『ピシッ』と音を立てた⋯⋯気がした。

 ⋯⋯いや、その。

 なんだ、この変な気まずさ。

 沈黙の中、それまでニコニコとしていたマリアベルが、ピクッと反応した。


「あらあら、カミラちゃんったら。でもカミラちゃんはヴァン様のお嫁さんになれないのよー?」

「えー? どうしてー?」

「だってカミラちゃんはヴァン様の子供でしょ? 残念だけど、パパと、子供は、結婚できないのよ?」

「えー、やだー! カミラ、パパと結婚するー!」


 カミラのわがままに、マリアベルの表情が⋯⋯。

 笑っているけど、笑っているはずなんだけど。

 なんだろう、普通なら親子の微笑ましい会話のはずなんだけどなあ。

 複雑な家庭事情過ぎないか? 我が家は。

 そんな中、マリアベルは粘り強く説得していた。


「それに大丈夫ですよー、ヴァン様には私がいますから」

「それなんだけど、いいのかい?」

「と仰いますと?」

「いや、俺は結局パーティーより王国行きを優先したし」


 結局あのあと王国でバタバタして、パーティーには間に合わなかった。

 パーティー自体、皇帝陛下が出征中ということでこじんまりとしたものだったとは聞いているが。 


「それが⋯⋯何か問題でもありますか?」

「いや、それで婚約発表はされてないし、戻って来たら、子供二人連れて、となると」

「そうですよー。そのせいでまた婚約破棄されて、袖にされてしまったのではないか、なんて噂が立っちゃって大変なんです。どなたかに、責任を取って頂かないといけませんよね?」


 うっ⋯⋯それを言われると⋯⋯。

 一応陛下からは今後の話として、まずは王国を皇帝直轄地とし、俺を代官として派遣する、という案を頂いている。

 そうやって俺に政治的な経験を積ませ、ゆくゆくは皇帝に⋯⋯との事だ。

 ただ、陛下は『無理強いはしない』とも仰ってくださっている。

 ただ、マリアベルと結婚するとなれば、そのルートまっしぐらだろう。


 マリアベルは、こちらの反応をおもしろがるように見ていた。

 すると、俺と彼女に割り込むように、エミリアが間に滑り込んで来た。


「えーっ皇女様、もしかして、パパと釣り合うとでも思っていらっしゃるのですか? 淑女にしては、やや謙虚さに欠けるお考えではありませんか?」

「お、おい⋯⋯」


 とんでもない事を言い出す娘に、慌てていると⋯⋯。


「あら、私では不足でしょうか?」


 マリアベルが面白がるように聞いた。

 幸い、怒っているというより面白がっている感じだが。

 そんなマリアベルの態度に、挑発的な笑みを返しつつ、娘は質問に答えた。


「ハッキリ言ってそうですね、確かに皇女様はお美しいですし、知識も豊富で、素晴らしい方だと思います、でも⋯⋯」

「でも? それでは不足、という事でしょうか?」

「あたりまえじゃないですか。ううん、パパと釣り合う女性なんてめったにいませんよ、だって⋯⋯」


 エミリアは一度言葉を区切ると、まるで大層な事を宣誓する騎士のような面持ちで、叫んだ。





「私のパパは──世界一なんだから!」





 ひさびさに聞く娘からの、嬉しいセリフに──俺は思わず、エミリアを抱きかかえ上げてしまった。


「えっ、ちょ、ちょっとお、パパ!」

「はは、はは、はははははは、もう一度、もう一度言ってくれ、エミリア!」

「もー、パパ、喜び過ぎだよ⋯⋯」

「嬉しいに決まってるだろ! ほら、もう一回!」

「あんまり言うとありがたみがなくなっちゃうから、大事にとっとくね。また今度言ってあげる」

「エミリアは意地悪だな!」

「パパは子供ね」


 呆れたように返事しながらも、エミリアは俺の胸に頬ずりするように、抱きしめ返してくれた。


「あとね、パパに謝らないと。私、嘘ついてたから」

「ん?」


 エミリアは『スンスン』と鼻を鳴らすと、嬉しそうに笑顔を浮かべ、さらにギュッと抱きついて来た。


「私、パパの匂い大好きだよ。嗅ぐと、すっごく落ち着くの」

「そうか、ならパパもエミリアの匂い嗅いじゃおうかな?」

「うーん、それはちょっと気持ち悪いかな?」

「ええ、ひどいな」

「ふふふ」


 言葉とは裏腹に、嬉しそうにする娘を胸に抱きながら──俺は在りし日の、酒場での会話を思い出していた。


 



『まあ、変わらないものなんてないんじゃないですか? もし見つかったら教えて下さい、一杯奢りますよ』


 

 次にマスターに会ったら、約束通り酒を奢って貰おう。


「変わらないものが見つかったよ」


 そんな報告を⋯⋯俺の気持ちを伝えよう。


 どんな名誉も。

 莫大な報奨金も。

 美女に寄せられる、好意も。

 ましてや、勇者と呼ばれようが、今後皇帝という立場に選ばれようが。

 何を手に入れようが、比較にならない。


「私のパパは世界一」


 そんな娘の一言に、他の何も敵わない。

 昔も、今も──。


 少なくとも俺にとっては、それが変わらないものなんだ、と。



─了─


というわけで『私のパパは世界一!』

これにていったん終了です。


また何かあれば、続きを書くかもしれませんが。

本作を最後まで執筆できたのは、本当に読者の方々のおかげです。

いつも応援ありがとうございます。


という事で、最後のお願いです。

面白かった!

読んで良かった!

というお気持ちがあれば、是非ブックマークや下の評価欄から☆で本作を応援して頂ければ幸いです。


是非ご協力をよろしくお願いします。


では、このような長々としたあとがきまで読んでくださりありがとうございました。


続きなのか、別作品なのか。

また読んでいただければ嬉しいです、では。



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