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ナウシカ兄さんと早朝散歩

月曜日の朝。


俺はいつもより、ずっと早く起きて、こっそり部屋を出た。

昨夜、ナウシカ兄さん・・・じゃなかった。蓮にメールして約束したんだ。


学園に帰ってきてすぐに、セクハラを受けた俺は小林んちに引き返したい気持ちでいっぱいだったが

ここにも癒しスポットがあったじゃないか!と、リスのことを思い出した。


ついでに蓮にもメールした。

めちゃくちゃ早朝になるけどって伝えたら、大丈夫って返信がきた。

なんか、蓮は眠りが浅くて、夜あまり寝れてないみたい。


高槻先輩が絶対に起きれない時間に早起きして、あくびをしつつ林の小道を歩いた。


「千尋。」


静かな声で呼ばれた。


「あ。おはよう。ナウシ・・・蓮。」


「ナウシカ兄さんって呼びたいの?」


蓮がフワリと笑って言った。うわぁ。恥ずかしい。


「いや、そうゆうわけじゃないんだけど。」


「ナウシカ兄さんでいいよ。」


「いやっ。そうゆうわけにはいかないから。」


この王子様スマイルにナウシカ兄さんはないだろ。さすがに反省だ。

相変わらず綺麗な整った顔してる。少女漫画に出てくる王子様そのものだ。


俺と蓮は、あの木の下まで歩いた。

いつもより早いからか、リスは降りてこない。ちぇ。


木の根元に2人で座ってぼんやりしてたら、うつらうつら寝てしまってた。早起きしたしね。




「・・ろ・・・ちひろ。」


「・・・んー?」


「しー・・・ゆっくり目を開けて。」


「ん。」


蓮の穏やかな声で眠りから覚める。ゆっくり目を開けると・・・


「・・・ぁ。」


俺は蓮の膝枕で寝てて、俺のお腹のとこに、ちょこんとリスが座ってた。


ーーーわぁああ!可愛い!!


驚ろかしちゃいけないから、心の中で悶えて叫んだ。

首をかしげて俺を見てる。うわぁ。めっちゃ可愛い!

蓮がいつものクッキーを差し出すと、リスは両手で持って、カリカリ食べた。


わー。可愛いなぁ。癒される~。


俺はニヤニヤしながら、リスがクッキー食べてる様子を見て癒された。

クッキーを食べ終わったリスが、鼻をヒクヒクさせて俺の顔の方に寄ってきた。


「・・・ゎ。」


リスの鼻が俺の鼻にちょんっと触れた。そして、俺のお腹から降りてカサカサっと木に登ってった。


あ~あ。行っちゃったぁ。

しばらくぼんやりと木の上を見上げてたけど、ハッとする。


「あ。ごめん。膝枕させちゃって・・・。」


「待って。このまま。」


起き上がろうとして、蓮に止められた。

Tシャツの上がクッキーの粉だらけだ。蓮の手で優しくはらわれる。


そのまま、その手が俺の髪を撫でた。


「髪切ったんだね。似合ってるよ。」


「ありがと。」


俺はえへへと笑った。やっと、まともに髪型を褒めてもらえたよ。

さらりさらりと蓮の手が俺の髪を優しく梳いた。


あ。また寝ちゃいそう。


ーーーでも駄目だ!高槻先輩が起きちまう。


俺は誘惑を断ち切り、蓮の膝枕から起き上がった。

蓮はちょっと寂しそうな顔をしてる。なんか、そんな顔されたら弱いんだけど。


委員長がコミュ障のケがあるって言ってたなぁ。多分、この人は繊細なんだと思う。他の人よりもずっと。


「また散歩しようね。」


俺は蓮に笑って言った。


「うん。」


蓮も静かに微笑んで答えた。



+‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥+ 



【南方視点】


昨夜、千尋からメールが届いて、一緒に早朝散歩することになった。


「ナウシ・・・蓮。」


千尋はナウシカ兄さんって呼びかけてやめた。俺はつい笑ってしまう。

そんなあだ名を付けられたのは初めてだ。


「ナウシカ兄さんでいいよ。」と言ったが


「いやっ。そうゆうわけには。」と、口の中で「蓮。蓮。」と名前を呼ぶ練習をしてる。


素直で可愛い。この学園にこんな素直な子はいない。


いつもの木の下で座ってたら、千尋がうたた寝をはじめた。俺はそっと千尋の頭を膝の上に乗せた。

気持ちよさそうに眠ってる。


俺は寝付きも悪いし、眠りが浅い。本当に眠れなくなってしまった時には睡眠薬に頼ることもあった。

でも、千尋の寝顔を見ていたら、俺もつられてウトウトとうたた寝をしていた。


「・・・ん。」


カサカサと音がして目を開ければ、いつものリスが降りてきて千尋のお腹の上に座っていた。


「ちひろ・・・。」


静かに千尋を起こす。


「・・・ぁ。」


千尋がリスを見て、嬉しそうに笑った。リスに癒されてるみたいだ。

そんな千尋を見て、俺はすごく癒されてる。

クッキーを食べたあと、リスが千尋の鼻にちょんとキスをして木に登っていった。

リスを見てた千尋は、ちょっと寄り目になってて、その顔が可愛いかった。


もう少し一緒にいたくて、千尋の髪を撫でた。このまま、もう一度眠ってくれないかな。

短くなった黒髪は、少年らしくて無邪気な千尋に似合っていた。


穏やかな時間にも終わりが来る。

千尋は起き上がった。離れてしまった温もりに、少し寂しく感じた。


「また散歩しようね。」


千尋が笑って言った。


この子は約束を守る。そう感じる。


「うん。」


俺も笑って答えた。



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