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千尋と嵐の前の静けさ

早朝散歩はバレる事なく、いつも通り登校した。


ブレザーのポケットが破れちゃったので、ちょうどいいきっかけにして今日から夏服だ。

と言っても、半袖シャツに紺のカーディガンを羽織ってる。避暑地的な場所なので、まだ暑くないし心地いいんだよね。

だから、まだブレザー着てる奴もいれば、半袖の奴、カーディガンの奴もいてバラバラだ。


教室に入ったら、皆に可愛い可愛い言われて複雑な気分だ。


「アリスちゃん。髪短いのも似合うねぇ。すっごい可愛いよぉ。」


「完璧な美少年だ・・萌える・・・!」


「お前ら・・・。」


美村と園田にそう言われて、ますます複雑だ。

おかしいなぁ。髪短くしたら、女の子っぽさ無くなるはずなのに。こんなに可愛い言われるとは、非常に不本意です。




お昼休み。


いつものベンチで3人でランチだ。今日はオーガニック系の弁当屋のケータリングが来てた。

俺は、ヒジキと豆腐のハンバーグ弁当。美村は三元豚の生姜焼き弁当。園田は鶏肉団子の黒酢餡かけ弁当。


ちなみに米は発芽玄米だ。体に良さそう。おかずもほうれん草のキッシュとか、煮豆とか。容器は可愛い感じで、女子が好きそう。デザートに豆乳プリンとゴマ団子も買った。


「なぁ。俺、髪短くしたらホモに追いかけられること無くなるって思ってたんだけど。ひょっとして逆効果なの?」


思い切って聞いてみた。


「あ~。うん。そうだね。」


「アリスちゃん。誤解してるようだけど、みんながみんな本気のホモって訳じゃないよぉ?」


美村が言った。


「エスカレーター式の男子校でしょぉ。望応学園は独特というか、金持ちで美形が多いのよ。自然と男同志のカップルも増えちゃうし。それが変って思う子も少ないの。性別関係無いって感じ?」


「ええ?」


「有栖川くんはホモに狙われてるって訳じゃないと思うよ。本気のホモに崇められてるのは、ほら!御影先輩とか。」


「委員長が!?」


園田はコクコク頷く。


「御影先輩は望応学園いちの兄貴だよ!野球部とか柔道部とか。御影先輩を兄貴と慕うごっつい系のファン多いんだから。」


「あ~。『兄貴にならケツ掘られてもイイっす!』ってね。ま、御影先輩は相手にしてないけど。」


俺はちょっとだけ委員長を不憫に思った。


「それに、アリスちゃんは外見だけじゃないよぉ。」


「ん?」


「他の美形の子たちってさぁ。ちやほやされたり、甘やかされたりで、性格悪い子多いよぉ。苦労知らずの金持ちだしね。俺もだけど。」


美村が豚生姜焼きを食べながら話す。


「人を利用したり、外見で判断したり。でも、アリスちゃんは違う。偉そうにしたりしないし、人を利用したりしないし、誰にでも笑顔でしょ。作り笑いじゃない。ホントの笑顔。」


なんか、めっちゃ褒められてる?


「だから、高槻先輩や御影先輩が世話焼いちゃうんでしょ。アリスちゃんの中身に惹かれるんだと思う。みんなね。」


美村がじっと俺を見つめながら言った。


「お、おお。ありがとうな。」


俺は照れ笑いで、頭をポリポリ掻いた。中身にって事は、『山田太郎』ってことだ。

なんか、嬉しい。


「美村。キッシュやるわ。」


「ありがとぉ。じゃあ、豚生姜焼き一口あげるねぇ。」


俺は美村とおかずのトレードをした。

その様子を園田が目をキラキラさせて見ていたが、無視をした。



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