瀧山と親衛隊
【瀧山視点】
「瀧山さま・・・。」
情事の後の気怠さを含んだ声音で名前を呼ばれた。少しうんざりした。この少年にもう用は無い。
振り返った時には、完璧な微笑を浮かべて
「そろそろ部屋に戻った方がいい。」
少年の頬を撫でた。少年はうっとりと僕の掌に頬を寄せた。
名前はなんだったか・・・倉木だか倉本だか。親衛隊の中でも美しい顔立ちの少年で、泣き顔が気に入っていた。
「この事は2人だけの秘密だからね。もしバレて、僕の知らない所で君が傷付けられでもしたら別れるしか・・・。」
「絶対、秘密にします!瀧山さまに迷惑はかけません。」
僕は微笑んで、少年を抱き締めた。
「いい子だね。」
完全に僕に心酔しきっている。少し鬱陶しいが、人をコントロールするのは面白い。
少年に服を着せて帰らせた。少年は少しよろめきながら歩いていった。
ーーー少々、激しくしすぎたかな。
従順で可愛らしい。だが、物足りない。
少しして、部屋のチャイムが鳴った。
「よく来たね。」
僕は微笑んで、彼を部屋に招き入れた。
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「瀧山さま。」
艶やかな黒髪と少しキツめの大きな瞳。細いが華奢ではなく、無駄の無い躰つきのしなやかな黒猫を連想させる少年だ。
「お入り。楓。」
西京極 楓。僕の親衛隊の隊長だ。
「失礼します。」
部屋に入ってきた楓は、僅かにだがセックスの残り香に気付いて眉を顰めた。
「ああ。さっきまであの子が来ていたんだ。ええと、倉・・・。」
「倉橋ですか。」
「そう。」
楓の猫のような瞳に嫉妬が宿る。
「いい子だけど、少し勘違いをさせてしまったかもしれない。」
「・・・よく、言い聞かせておきます。」
楓が抑えた声で言った。言い聞かせる、ね。
今日、倉橋の内腿に薄くなってはいたが、幾つかのアザを見つけた。気付かないフリをしたけど。
見えない場所に、バレない程度の『制裁』をする。楓は顔に似合わず陰湿だ。そこが気に入っている。
「おいで。楓。」
僕は両腕を広げて、楓を呼んだ。楓は嬉しそうに駆け寄り、僕に抱きついた。
「楓が一番可愛い。他の子達は、ただのはけ口だ。」
「・・・瀧山さま。」
僕は楓に髪を梳きながら、優しく囁く。
「僕も好きです。瀧山さまになら何をされても・・・!」
「ダメだよ。本当に好きな相手には手が出せないんだよ。だから、楓とはセックスできない。」
楓は切なげな顔で僕を見る。
「大事だからだよ。楓。」
「・・・はい。」
しばらく楓を抱き締め、優しく髪を撫でた。
「倉橋はいい子だけど、僕のプライベートに踏み込んできて、少し疲れてしまう。君から言い聞かせておいてくれる?」
「はい。」
「少しキツく言い聞かせて構わない。」
「・・・分かりました。」
さあ。何をしてくれるかな。この嫉妬深い子猫は。
倉橋は倉橋で、僕に愛されていると勘違いをしている。僕に迷惑をかけない為に、僕に嫌われたくない一心で『制裁』に耐えるだろう。
ーーー少しだけ、残酷なことを。
桜真の言葉を思い出し、僕はうっすらと微笑を浮かべた。
腕を解き、楓の額にそっとキスをして送り出した。
玄関からリビングに戻る。喉が渇いた。
冷蔵庫を開けたが、ミネラルウォーターを切らせていた。楓に買ってこさせればよかった。
今更、呼び戻すのも面倒なので僕は水を買いに部屋を出た。




