白いうなじと翻弄される男たち
バスが望応学園に着いた。
「千尋くん。髪切ったんだね。すごく似合ってるよ。」
降りる時に山田さんが言った。
「ありがとうございます。」
「あの背の高い男の人は従兄弟か何か?」
「友達です。」
「友達・・・。」
あ。年齢差あるし、友達って言ったら変だったかな?
でも小林は俺の友達だ。姿が変わった今でも。
俺はバスを降りて寮に戻った。エントランスでひらパー兄さんとばったり会った。
「有栖川!有栖川、有栖川!」
「なに!?なんですか?なんすか?」
ひらパー兄さんが俺に向かって直進してきた。ちょっと怖いよ!
「髪切ったのか。」
「ああ。友達に切ってもらって。」
「めちゃくちゃ可愛いなぁ。」
「ええ!?」
おかしいな。男子っぽくなったはずなのに・・・。
「ひゃっ!?」
ひらパー兄さんの指が俺のうなじを撫でた。
「何するんですか!?」
「いや・・・白いうなじが色っぽいなぁと思って。」
高槻先輩の言う通り、ひらパー兄さんには近付かない方がいいかも。
「あっ。高槻先輩!」
「えっ。」
ひらパー兄さんが後ろを向いた隙に、ダーッとエレベーターまで走った。
「ふぅ。」
ボタンを押して、しばし待つ。
チンとエレベーターのドアが開いて
「あ!」
委員長だ。
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「姫じゃないか。」
「こんにちは。委員長。」
委員長がドアを開けといてくれたので、エレベーターに乗った。そのままドアが閉まる。
「あれ?降りないんですか?」
「お前。髪切ったんだな。」
「ああ。はい。スッキリしました。」
俺はニカッと笑って言う。
「女子っぽくなくなったでしょ!」
「あ~。うん。」
なんだ?
委員長が大きな手で俺のうなじを撫でた。
「なんですか?」
「お前。やばいぞ。ちょっと確認させろ。」
えっ!?何が?小林、下手やったのか!?
俺は委員長に背を向けて、後ろを向いた。
委員長が両手で俺の首に触れて、親指でうなじをなぞった。
「なんか変ですか?・・・わっ!?」
生暖かい息がかかって、委員長が俺のうなじに唇を当てた。
「おいおい。エロいぞ。これは。」
「なっ!?なに言って・・・。」
びっくりして逃げようとする俺の腰を委員長が背後から両手を回して、がっちりホールドした。
「離せってば!」
「まぁ待て。確認だ。」
「だから!なんの!?・・・あ!」
後ろから委員長が俺のうなじにキスをした。ちゅっと音をたてて、何度もキスする。
「やっ・・だ!・・やめっ!・・はぁ・・っ!」
啄ばむみたいに軽いキスをうなじに繰り返す。
ーーーなにこれ!?ゾクゾクする。
委員長がうなじに唇を触れさせたまま言った。
「・・・やっぱり感度いいな。」
「なに言って・・・。」
耳元で囁かれて、ビクッと体が跳ねた。
「お前、うなじが感じるだろ?弱点晒しちまってるじゃねぇか。」
「ええ!?そんなぁ・・・。」
知らねーよ!山田のとき、うなじなんて感じなかったし。そもそも、うなじにキスされることも無かったし。
チンと音がして、エレベーターのドアが開いた。
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「千尋?・・委員長!何をしてるんです!?」
高槻先輩だ。
「うわぁ!」
ぐいっと腕を引っ張られて、エレベーターの外に出た。高槻先輩は委員長を睨みつけた。
「そいつに危機感ってやつを教えてたんだよ。うなじが弱点みたいだぞ。」
「委員長のばか!言うな!」
委員長は、ハハハと笑って「じゃ、俺コンビニ行ってくるわ。」と、そのままエレベーターに乗って下に行った。
「た、高槻先輩は下に降りないんですか?」
「・・・。」
高槻先輩は俺を見て、腕を引いて部屋に戻った。
ーーーなに?今度は何に1仏陀してるの?!
部屋に入ってすぐの廊下で、ぐいと両腕を掴まれて、高槻先輩と向き合う。
「委員長が言ってたのは、なんのことだ?」
「えっ?」
「弱点ってなんだ?」
えー!?それ聞くの?
「あ~。あの、俺くすぐったがりみたいでして。委員長がふざけて、からかったんですよ。」
高槻先輩はじっと俺を見てたが、不意に腕を上げて俺のうなじを撫でた。
「わっ。ちょっと・・・!?」
俺は慌てて、後ずさりする。高槻先輩は眉を顰めた。
「委員長はよくて、俺は駄目なのか?」
「えっ?なんでそうなるんです?」
なに言ってんだ。この人。
「そうじゃなくて・・触られて楽しいもんじゃないんですから。もういい加減に・・・。」
「委員長には触らせてただろう。」
えー!なにこの駄々っ子状態。でも、あんまり頑なに断って、また暴走されたら嫌だな。
キスマークの時もだけど、高槻先輩は委員長に張り合うくせでもあるのかよ。
「あ~。もう、分かりましたよ。触っていいですよ。」
野郎のうなじなんか触って、何が楽しいんだか・・・。
高槻先輩の手が俺のうなじをそっと撫でた。思わずピクッとしてしまう。
「・・・。」
「・・・。」
玄関上がってすぐの廊下で向かい合って、無言でうなじを撫で撫でされてる。
ーーーナニコレ???
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「・・・ひゃっ。」
高槻先輩の手が掠めるように、俺のうなじをそっと撫でた。
アレだ。フェザータッチってやつだ。ちょっとゾクッとしちまった。
「もう、いいでしょ。」
俺は高槻先輩の手を振りほどいて、部屋の奥へ進んだ。
「うわっ。」
高槻先輩が背後から、ぎゅっと抱きしめてきた。
「なに!?」
「委員長はこうしてたな?」
高槻先輩、しつこい!
「他に何をされたんだ?」
「なにも・・・。」
「言うまで離さないぞ。千尋。」
「なんなんだよ!?もう。委員長に、なんかちゅっちゅされて、くすぐったい嫌がらせされただけだって・・・あ!」
高槻先輩の唇がうなじに触れた。
「ちょっ・・と!なにして・・ひゃ、あ!」
ちゅ、と軽くキスを落とす。ビクッと体が跳ねた。
まただ。なんなんだよ。
「・・・ぃやッ!」
もがくけど、がっちりホールドされてて動けない。
その間にも高槻先輩は、ちゅ、ちゅ、とうなじにキスを続けてる。
やばい。ゾクゾクする。
「あっ・・また、キスマークなんかつけたら・・絶交だから!」
高槻先輩がピクッと止まった。俺はホッと脱力する。
「それは困る。」
「あっ!」
今度はベロッと舐めた。
「やめっ!されてない!それは、されてないからっ。」
なんでッ!?こんな・・・あ!
「・・・絶交は無しだな?千尋。」
「わかった。分かりました!無しだからっ・・離せってば・・は、ぁあ。」
また舐められて、甘噛みされて、ようやく高槻先輩は腕の力を緩めた。
「は、ぅ・・・。」
なにこれ?膝がカクカクする。
「高槻先輩・・・。」
「・・・千尋。」
俺は思いっきり高槻先輩の足を踏んだ。
「ぐっ!!」
「セクハラ反対ッ!!」
俺は急いで自室に逃げ込み鍵をかけた。
ーーーなんでだ。逆効果じゃないか!!恨むぞ。小林。
俺はちょっとだけ小林に逆恨みをした。
しばらくして部屋を出ると、高槻先輩に平謝りされた。
もう、ほんとに。
ここ最近の俺と高槻先輩はコント状態だ。しかも、ホモネタコント。
俺は高槻先輩にじゃがりことアルフォートとカフェラテを買いに走らせた。
戻ってきた高槻先輩に
「その髪型似合ってる。」
って言われた。
「どうも。」
「可愛いよ。」
「可愛い言うな。」
俺はアルフォートを食べながら、高槻先輩をジト目で見た。
俺は恐ろしいことに気付いてしまった。
委員長の言うように、この有栖川千尋の体は・・・なんと言うか、感じやすいみたいだ。
ーーー最悪だ。




