チャラ男と追いかけっこ
次の日も両手に風紀で登校した。すっかり名物風景になっちまった。
風景委員は親衛隊禁止らしく、2人ともファンは多いけど親衛隊はいない。
2人のファンに殺されるんじゃ・・・って言ったら「問題無い。俺らが親衛隊とか制裁を嫌悪してるって知ってるからな。」って言われた。
一限目の理科が終わって、教室に戻ってから忘れ物に気付いた。
「ちょっと忘れ物取りに行ってくる。」
「アリスちゃん。一緒に・・・」
「大丈夫。すぐそこだし。」
俺は急いで理科室に戻った。
誰もいない理科室に入る。
えっと・・・あ!机の下に落ちてた。
俺はしゃがみ込んでシャーペンを拾う。
「ダメだって・・・こんな場所で。」
誰かが理科室に入ってきて、ひそひそ声で話してる。
「そんなこと言って・・・燃えるくせに。」
「あっ・・・。」
なんか・・・甘い声が。
俺はこっそり顔を上げて様子を伺うと、理科教師と生徒がイチャコラしていた。
ーーーげげぇ!!ついにガチホモ場面に遭遇だっ!!
しかも禁断の生徒と教師だ!
俺はババッとしゃがみこむ。
ーーーどうしよう。出るに出れない。
だが、このままホモの逢いびきを盗み聞きなんてしたくねぇし。おえぇ!
1人で慌てていると
「そこに隠れてる子。出ておいで。」
ーーーバレてるーーーッッ!!
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俺はそろ~っと机の下から這い出た。
顔を上げて、そいつを見て・・・
「うげっ!!」
理科教師とイチャついてたのは昨日、写真を見せられた生徒会チャラ男会計だった。
「可愛い顔して、うげって?」
会計は甘ったるく笑う。理科教師は「ヤバっ!」て顔して、そそくさと逃げてった。
ーーーシーン。
やっべえ、理科室に2人きりじゃん。
「見てませんし聞いてませんし、誰にも言いません!」
俺はそう言って教室を出ようとするが
「待って。」
会計に引き止められた。
「きみのせいで先生に逃げられちゃったでしょ。代わりに遊んでくれる?」
なんだって!?
「無理無理!!失礼しますっ!」
俺は後ろのドア目掛けてダーッとダッシュして、教室から飛び出した。
会計を見たらダッシュ。言いつけ守ってますよ。委員長!
「んっ!?」
気配を感じて、振り向くと会計が追いかけてきた。
しかも、ニヤニヤ笑いながら。
ーーーキモい!怖い!
「ぎゃー!くんなー!!」
俺は全力ダッシュで逃げた。
もう授業始まるから、理科室周辺に誰もいない。
「あは。待ちなよ。」
「待つか!馬鹿!こっちくんな!!」
パニックになって、今どこを走ってるか分からない。
なんか、人気の無い方へ向かってる気が・・・。
「ハァッ・・ハァッ・・」
苦しい。この体で、こんなに走ったことないのに。
「あっ!」
脚がもつれて転ぶっと思ったら、後ろからガシッと掴まれて。
「うわッ!」
俺は会計をクッションにして、奴の胸に抱かれる形で倒れた。
「ふふ・・・つーかまえた。」
「ひえぇ!」
会計はニンマリ笑った。
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◆難波視点◆
「うげっ」
可愛い顔したその子は、オレを見てそう言った。
うげって・・・面白い。オレを見てそんな声あげる子初めてだ。
しかも「無理無理!」と、脱兎の如く逃げ出した。
「あはは。」
面白い。なんか燃えてきた。
オレはその子を追いかけて走った。
「馬鹿!くんなー!!」
一生懸命逃げてる。可愛い。楽しい追いかけっこだ。
でも残念。もうすぐ捕まえちゃうよ・・・ほら。
「うわ!」
その子が転びそうになったので、腕に抱いて受け身を取った。ナイスキャッチ。
華奢だけど、抱き心地がいい。
「ひえぇ。」
また面白い声を出した。ネクタイの色は一年生だ。こんな子いたっけ?
「お名前は?」
オレは極上スマイルで聞いた。大抵の子は、この笑顔に真っ赤になるんだけど・・・
「離せよ!」
その子は暴れた。アラ、通用しないね。
「よっと。」
ゴロンと反転して、その子を組み敷いた。脚を絡め、両手を恋人繋ぎみたいにして、体の下に縫い止める。オレの特技だね。
「ひっ!?」
その子は真っ青になった。
じっくりと顔を眺めた。キレイな顔。震える唇が誘っているみたいだ。
オレはそっと唇を寄せた。その子は限界まで首を反らせて、オレの唇から逃げた。
そんなにイヤ?
オレはちょっとイジワルな気持ちになって、首筋にキスして、チュッと吸い上げた。
「やめろ!気持ち悪い!!」
ビクっと体を跳ねさせて叫んだ。
オレは溜め息を吐いて顔を上げる。
硬直して怯えまくってる。
オレは確かに下半身はユルいけど、ゴーカンは好きじゃない。
お互い気持ちよくなきゃ意味が無い。
オレはそっと、その子の上から退いた。
「ごめんね。怖がらせちゃって。」
手を貸して起き上がらせる。ちょっと震えてる。ホントに怖かったんだ。
オレはその子の制服のポケットから生徒手帳を抜いた。
「1-B 有栖川千尋ね。ああ。キミが噂の眠り姫ね。」
「返せよッ!」
生徒手帳をポンと返す。これ以上かまうのは逆効果だ。
「また今度。ちゃんと口説かせてね。」
ニッコリ笑って、オレはその場を去った。
最近、生徒会のお仕事もサボっていてヒマなんだよね。
『西大路にイヤガラセしたくない?』
オレにそう持ち掛けたのは桜真だ。
生徒会のお仕事を放棄すること。
そんなことしたらリコールされて、せっかくの特権が無くなっちゃう。
『大丈夫。あの生徒会長が身を粉にして必死になる姿が見られるよ。』
桜真はそう言った。
あの2人の間に何があったかは知らないし、興味は無いけど・・・
西大路はいけ好かない奴だったし、まぁいいか、と思った。
ここんとこ生徒会室にも行ってない。
ホントに1人で頑張ってるみたいね。ざまぁ。
まぁ、いいや。好きなだけサボっちゃえ。ただ、ちょっとだけ退屈。
ちょうどいい。眠り姫と遊ぼう。
オレは機嫌良く渡り廊下を歩いて行った。




