胸の傷痕とエロス
金髪変態男はスタスタと歩いてった。
「委員長。あの外人、知ってるの?」
「・・・ああ。生徒会の副会長だ。」
「ええ!?」
「瀧山千里だ。外人じゃなくて、ハーフな。お前、碌でもない奴に目ぇつけられたぞ。」
「えええ!?」
何それ!?超怖いんですけど。
俺が目を白黒させてると、委員長が俺の頭をくしゃりと撫でた。
「奴に手は出させねぇから、心配するな。」
俺は委員長を激しく頼もしく感じた。
委員長の手が頭から頬、そしてスルリと胸へと下がった。
「あ。」
軽く胸の手術痕に触れた。
「・・・痛々しいな。」
「あ~。でも、痛いことないですよ。とっくに治ってるし。」
こっちはフェイクだしね。俺はヘラっと笑ってみせる。
「お前はなぁ。もうちっと甘え上手になれ。」
「え?」
委員長が溜め息混じりに言った。
「わぁ!」
がっしりと逞しい腕に抱き締められた。
「素直に守られとけ。」
またぁ?
なんなの。最近。
風紀では俺を守るのブームなわけ?
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◆御影視点◆
「お前、碌でもない奴に目ぇつけられたぞ。」
そう言って、瀧山が去っていった方を睨んだ。
あいつはクールでちょっと腹黒だが完璧な副会長を『演じて』いる。
腹黒どころか、あいつは毒蛇だ。良い子ちゃんの笑みを浮かべているが、陰湿で賢く、上手く立ち回る。
奴が桜ノ宮と連みだしてから、悪質な制裁が増えた。
ふと目線を下げる。
姫が怯えた顔をしていた。
ーーーくそ!マジで目を離すんじゃなかった。
奴に手は出させない、と姫の頭をくしゃりと撫でた。
そして、その下の胸の傷痕を見た。
華奢な体に、痛々しい程の大きく引き攣れた傷痕だった。
眉根を寄せて、その傷痕に触れた。
痛々しい。だが、ある種のエロさを感じる。
完璧に整った美しい顔。白く、均整の取れた華奢な体にインパクトのある傷痕が、魅力を損なうどころか逆にこいつの色気になっている。
瀧山はこの傷痕を見たのだろう。
奴は惹きつけられたはずだ。
「痛いことないですよ。」
姫がニカっと笑って言った。
おいおい。ほんとにこいつは・・・。
もっと甘え上手になれ、とは言ったが。すでに俺はこいつを甘やかせたくて仕方がなくなっている。
俺を頼れ。こんな体で・・・強がるんじゃない。
抱き締めた姫の体は、折れそうなほどに華奢だった。
「くしゅっ」
姫がくしゃみをした。濡れたままだったな。
「もう一度、シャワーを浴びろ。」
シャワールームに入る。今度は隣で俺もシャワーを浴びることにする。
「一緒に入るか?」
ニヤリと笑って言ってやれば
「委員長の変態!」
と叫んで、シャワーブースに入って磨りガラスのドアを閉めた。
俺はハハッと笑って、Tシャツを脱いでった。
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◆千尋視点◆
俺と委員長は寮に戻って、ひとまず俺の部屋のリビングでお茶して、ひと息ついた。
高槻先輩も帰ってきて、副会長の話に眉を顰めた。
「てゆうか、姫。副会長の顔知らなかったのか?」
あんな目立つ男をって呆れたように言われたけど、今まで見たことなかったし。
「高槻。パソコン持ってこい。」
「はい。」
高槻先輩がパソコンを立ち上げた。全生徒のデータに風紀メンバーと生徒会メンバーはログインできるんだって。
「風紀の特権だ。」
生徒会メンバーの写真を出した。
「生徒会長と副会長は、もう分かったな。」
「はい。」
生徒会長は寝てる顔しか見てないけど。
起きてる顔もイケメンだった。けっこう気が強そうだ。俺様って感じ。
副会長は優雅に微笑んでる。上品で穏やかな笑顔だ。さっきと全然印象が違う!
・・・もっと、冷たくて怖かった。
「で、こいつが会計の難波 光彦だ。」
「チャラ男ですね。」
これまたイケメンだが、肩まであるアッシュ系の茶髪にピアスがジャラジャラ。
少しタレ目で、甘ったるい感じの顔をしてる。
「こいつはチワワ系の後輩食いまくってるからな。気をつけろよ。この顔を見たらダッシュで逃げろ。」
「ダッシュっすね。了解です。」
俺は委員長の言うことを素直に聞くことにした。だって、さっきの副会長、めっちゃ怖かったし。
「で、これが書記の南方 蓮太郎だ。」
「あっ!!」
ーーーナウシカ兄さんだ!
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「千尋。知っているのか?」
「えっと、ナウシカ兄さんです。」
「ナウシカ?」
俺は朝のウォーキングでの出来事を話した。
「マジか。お前、生徒会ホイホイだな。」
「やめてくださいよ!」
「まぁ、書記は害は無いだろう。どっちかつうとコミュ障のケがある。」
「コミュ障?」
そうかな?優しい感じだったけど。
「・・・千尋。お前、まだ俺に言っていない事はないか?」
「えっ?」
高槻先輩が俺をガン見してる。
「高槻。顔怖いから。」
委員長がフォローしてくれた。ドーベルマンみたいだけど、委員長は意外と癒し要員だ。
「えっと、実は・・・」
俺は初日に保健室で寝込みを襲われた話をした。
「千尋!どうしてもっと早く言わないんだ!?」
「だって、男にキスされたとか、情けなくて言えないでしょ。」
「まぁまぁ、高槻。で、その金髪は瀧山なのか?」
「・・・分からないです。ハッキリと顔見た訳じゃないし。」
「・・・。」
委員長が少し考え込むようにして
「とりあえず、生徒会連中には近付くな。1人行動はするな。桜ノ宮には関わるな。復唱しろ。」
「生徒会には近付きません。1人で行動しません。桜ノ宮には関わりません。」
「いい子だ。」
ヨシヨシと頭を撫でられた。
「でも、平野は・・・」
「平野の事も風紀に任せろ。復唱しろ。」
「・・・風紀にお任せします。」
またヨシヨシと撫でられた。
平野とはメールのやり取りを続けてる。委員長のことを教えたら、すごく安心してた。
今は桜ノ宮もいないし、落ち着いてるみたいだ。
「あ。先生に平野のイジメや桜ノ宮のこと話したら・・・。」
「無駄だ。」
「なんで?」
「ランク上位の生徒の親は雲の上の権力者だ。その子供もな。教師なんか一瞬で飛ばせる。口封じも簡単だ。」
そんなこと・・・。
「なんでこんな山奥に金持ち坊ちゃんの全寮制学園があるか分かるか?マスコミも遮断できるし、何をやらかしても揉み消しやすいからだ。金持ちの問題児を放り込む場所でもある。」
「なにそれ・・・。」
「悪い事ばかりじゃないぞ。外部の誘惑が無いから勉強したい奴には持ってこいの環境だし。親の会社の跡を継ぐ奴からしたら、人脈作りに最適だ。セレブやら後継者やら、うじゃうじゃいるしな。」
俺は黙り込んだ。世界が違いすぎる。
山田時代のアホな高校生活が懐かしい。
「だから、風紀が頑張ってんだ。そんな不安そうな顔するな。」
ガハハと委員長が笑った。
やっぱ頼もしいわ。委員長。




