千尋と「山田、タイキック~」
その日、俺は話題の人だった。
俺は知らなかったんだけど。
今まで、高槻先輩との登下校も注目の的だったらしい。
それが今度は、風紀委員長も加わって、両手に風紀で登校したもんだから・・・。
「有栖川くん!いったい何があったの!?委員長と一緒だったじゃない!」
いの一番に園田が食いついてきた。
「あ~・・・話すと長いから、昼休みでもいい?」
「うん。」
園田がソワソワしているが、無視をする。
他の奴らも興味津々だったが
「はいは~い。野次馬してるって高槻先輩と御影委員長にチクっちゃうよ~!バレたらお仕置きだよ~。」
と、美村の言葉で、ササっと目線を外した。
「美村。ありがとな。」
「いいよぉ。でも、後で教えてね。」
美村がニッコリ笑って言った。
昼休み。
俺と美村と園田は、弁当を買って裏庭の人の少ない場所で昼飯にした。
食堂なんかに行ったら、また注目の的になっちまう。
俺はロコモコ丼を食べながら、両手に風紀のいきさつを話した。
「有栖川くん・・・委員長にも気に入られちゃったんだね。」
園田が感心したように言った。
「ええ!?どこがだよ。」
「あの風紀委員長って、ここまでしないよ。高槻先輩がついているなら尚更。」
ーーー「あの」って?
「なぁ。風紀委員長ってどんな人なの?イマイチ、キャラが分からないんだけど。ドーベルマンみたいってこと以外。」
「ド・・・あ~。噂ね。あくまで噂なんだけど。有栖川くん、ヒカないでね。」
「限りなく黒に近いグレーって感じ?まぁ、俺はホントだと思うよぉ。」
「?」
「御影委員長って、中学生の頃、相当悪くて・・・族潰しだったらしいよ。」
「族?」
「暴走族。」
「ええ!?ヒクわーーー!!」
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「御影委員長って、総合格闘技の道場かなんかに通ってて、あんまり強いから道場破りかなんか始めちゃって、それでも物足りず族潰しかなんかやってたらしいんだ。」
ーーーてゆうか。
「園田。『~かなんか』が多すぎだ。信憑性薄いわ!」
「でも実際、やんちゃな生徒に鉄拳制裁やっちゃってるしねぇ。」
俺は、ハタと今朝の委員長の言葉を思い出す。
ーーー「俺も高槻も手が出る」って言ってなかったっけ?
「じゃあ、高槻先輩は?」
そう聞いたとき、向こうからバタバタと走る音が聞こえて騒がしくなった。
「!?」
ちょっとヤンチャな感じの生徒がこっちに走ってきた。
何かから逃げているようで、焦って何にもないところで躓いて転んだ。
慌てて起き上がった背後にーーー
「あっ。」
高槻先輩が追いついた。
「ゲェっ!高槻!」
「逃げるな!」
ーーーズパァアーーーーン!!
超き気持ちイイ音で、高槻先輩のキックがヤンチャ君の尻に決まった。
超気持ちよく、ヤンチャ君が吹っ飛んだ。
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今のはアレだ。
\デデーン/
『山田。タイキック~。』
チャ~ラリ~ラ~ラリ~♪
(微妙に踊りながらタイ人登場)
すかさず尻にタイキック。
ズパァアーーーーン!!
『ぎゃー!!』
この一連の流れだ!年末のお笑い特番の。
ヤンチャな生徒は尻の痛みに震えて蹲ってる。
うわぁ。これもテレビのまんまだ!
「まったく・・・!?」
呆れ顔の高槻先輩がこっちを見て固まった。
「ち、千尋!」
「高槻先輩!」
高槻先輩が焦った様子で俺の元に駆け寄った。
俺の両隣の美村と園田は空気になってる。
「千尋!あの生徒はだな。隠れてタバコを吸っていて、逃げたから仕方なく・・・決して暴力賛成なんかじゃないから・・・千尋?」
「・・・高槻先輩。超かっこいい!」
「えっ?」
俺は尊敬の眼差しで高槻先輩を見た。
これはアレだ。
フランケンシュタイナーを見たとき以来の衝撃だ。それくらい見事なタイキックだった。
「高槻先輩、タイキックできるんですか?」
「いや・・・キックボクシングじゃなくて、ムエタイだ。」
「ムエタイ?」
「タイの格闘技で・・・いや、決して俺は暴力肯定派じゃないからな。今のは・・・」
「あっ。先輩、あいつ逃げますよ。」
「何!?」
ヨタヨタと立ち上がった生徒の首根っこを高槻先輩が引っつかんだ。
「お前は風紀室まで来い!
千尋。今夜ちゃんと話そう。」
それだけ言って、高槻先輩はヤンチャな生徒を引きずって行った。
俺の両隣で空気になっていた美村と園田が息を吹き返した。
「かっけぇ~。高槻先輩すごいな!」
「有栖川くん。怖くないの?」
「何が?あっ。園田、ムエタイって何?」
「え~と。タイかなんかのキックボクシングかなんかみたいな格闘技かなんかだと思う。」
今日の園田は『~かなんか』が多すぎて役に立たない。
お!こんなときは・・・。
俺はスマホを出した。
『小林。ムエタイって知ってる?』
歩く雑学辞典・小林にメールした。
夜には、ムエタイについての長文メールが返信されているはずだ。
「よし。」
くっくっと笑う声が聞こえて顔を上げると、美村が俺を見て笑っていた。
「やっぱ、い~わ。アリスちゃん。面白い。」
「?」
俺、何かした?
俺と美村を見て、園田が目をキラキラさせていたが、無視をした。




