14.記憶と約束
【グリフォニア王国】
王都の街並みは活気に満ちていた。石造りの建物が整然と並び、広場では商人たちの呼び声が響く。道を行き交う人々は身なりも良く、豊かさを感じさせた。
麻里奈「……うわあ、すごく華やか」
光「さっきのオパールの町とは別世界みたいですね」
雪「同じ国とは思えないな。まるで富が一極集中してるみたいだ」
ヴォン「……それは否定できません。この王都には、王家直属の技術開発部門があり、私も今はそこに所属していますがやはり王都が優先されてしまいます。」
キール「ここは通り道ださっさと抜けてしまおうぜ」
リーナ「私、ファブロに挨拶しに行く。」
ヴォン「もしかして鍛冶屋のファブロ・コスタ?」
リーナ「そう!知ってるの?」
ヴォン「私も風車の部品を作って貰ってるのでコレから会いに行く予定です。」
リーナ「じゃ一緒に行こ!」
リーナは馳けて行ってしまった。
キール「おい!リーナ!行ってしまった…」
拓弥「俺も1人でいろいろ見てくる」
麻里奈「私も」
拓弥の後ろを付いて行った。
雪「このまま、少し自由行動しよう」
キール「もう勝手にしろ」
不満そうなキールにジールが付いて行った。
【グリフォニア王国・雪&光ルート】
光「……みんな行っちゃいましたね」
雪「なあ、光。キールのこと、どう思う?」
光「どうって?……敵って意味ですか?」
雪「ああ。俺は正直、かなり怪しいと思ってる」
光「行動は確かに変ですけど……でも、不思議と敵意は感じないんですよね」
雪「それが引っかかってるんだ。悪人の顔じゃない。けど、どこか信用しきれない」
光「……でも、拓弥さんが覚えてないだけで、本当にキールさんたちと冒険してた感じはありますよね」
雪「でも忘れるなよ、拓弥の前世は“ナイトメア”に仕えるほどの悪人だったんだぜ?」
光「そう言えば、そうでしたね……」
雪「なのに、今は“ヴァンパイアを倒す”とか言ってる。どうも腑に落ちない」
光「うーん……やっぱり、拓弥さんにちゃんと記憶を取り戻してもらうしかないですね」
【グリフォニア王国・リーナ&ヴォンルート】
リーナ「久しぶり、おじさん!」
ファブロ「おおっ、リーナじゃねぇか!まだ元気に泳ぎ回ってるか?」
リーナ「ふふっ、たまには地上で歩いてるのよ!」
ヴォン「ファブロさん、頼んでいたもの、できてますか?」
ファブロ「ああ、ちょうど仕上がったところだ」
(ゴトッ、と机の上に重そうな金属製のパーツが置かれる)
リーナ「それは……?」
ヴォン「これは、風車の心臓部に使う“コア”みたいなものさ。
動力を安定させて、王国全体にエネルギーを届ける要になる部品なんだ」
ファブロ「こいつぁ昔の魔導技術を応用しててな。今の王国じゃ、作れる鍛冶屋は数えるほどしかいねぇよ」
リーナ「さすがおじさん! でも……こんなに大きなこと、本当に叶えられるの?」
ヴォン「きっとできるよ。オパールの風車がそうだったように、今度はこの王国を動かすんだ」
【グリフォニア王国・拓弥&麻里奈ルート】
拓弥「ツッチー、ついて来てくれたんだな」
麻里奈「当然でしょ? もしまた倒れたら大変だから」
拓弥「……ありがとう。なんだかさ……この街に来てから、初めてなのに、ずっと前に来たことがある気がして」
麻里奈「何か……思い出せそうなの?」
拓弥「……ああ、そんな気がする」
麻里奈「あっ、見て! 拓弥くん!」
拓弥「ん?」
二人の視線の先には、天へと昇るような長大な階段があった。
その先にそびえ立つのは、重厚な装飾が施された巨大な扉――城の裏手に隠れるように、静かに、しかし威圧的に存在している。
麻里奈「さっきまでお城の陰になってて見えなかったけど……すごい階段だね……」
その言葉を聞くよりも先に、拓弥は無意識のように駆け出していた。
麻里奈「拓弥くん!?」
慌てて、麻里奈もその背中を追いかけていく――。
【グリフォニア王国・キール&ジールルート】
ジール「リーダー、ここなら……何か思い出すんじゃないか?」
キール「……思い出したくねえ記憶ばっかだよ。俺たちにとっては、な」
ジール「……複雑だよな」
キール「ところで、お前。スーミラ家のこと、探らなくていいのか?
この街なら、何か手がかりあるかもだぞ」
ジール「今はいい。あの名前を口にするには……場所も時も悪すぎる」
キール「聖獣騎士団がウロついてるからか?」
ジール「ああ。今、顔を知られても困るしな」
キール「安心しろ。俺たちのこと、まだ“本当に”知ってる奴は――
……とっくに、この世にいねぇよ」
(ジール、眉をひそめて少し目を伏せる)
【グリフォニア王国・拓弥&麻里奈ルート】
拓弥「ここは……」
階段の下にたどり着いた瞬間、胸の奥が締めつけられるような感覚が襲った。
拓弥「……うっ」
思わず頭を押さえ、膝をつく。
麻里奈「拓弥くん! 大丈夫!?」
──そして、記憶が閃く。
【過去】
キール「……そんなこと、させねーよ。《デッドリー・ライブ》!」
光雷「キール、分かってくれ……!」
キール「どうしてだ……!ここまで一緒に来たじゃねえか!」
光雷「今の俺たちじゃ勝てない……でも、『 』すれば必ず“勝機”はある!」
キール「勝機のために、すべてを捨てるのか!? そんなことしたら……もう、二度と……会えねえかもしれないんだぞ!」
光雷「俺は絶対に忘れない。キール、お前を
……必ずまた、会いに行くから!」
キール「シャイニング・ソウル!」
光雷「ライトニング・ザ・サンッ!!」
【現在】
拓弥「…………」
静かに、頬を伝う一筋の涙。
麻里奈「……拓弥くん、大丈夫……?」
???「……どうかしたのか?」
低く落ち着いた声がかけられた。振り返ると、騎士団の紋章を胸に掲げた壮年の男が、心配そうに拓弥を見ていた。
麻里奈「あ、いえ……友人がちょっと、体調を崩して……」
???「それは大変だ。顔色も悪い……立てるかい、君。すぐに医務室に案内しよう。王城の中だが、心配はいらない」
麻里奈「えっ……城の中?」
???「申し遅れた。私はグリフォニア王国・聖獣騎士団団長──
ゲオルグ・フォン・アーバンだ」
【グリフォニア王国・リーナ&ヴォンルート】
リーナ「おじさん、なんかいい武器ない?今、手持ちがなくてさ。できれば槍っぽいやつがいいな」
ファブロ「お前さん、相変わらず無茶言うなぁ。……だったら、これなんてどうだ?聖獣騎士団も使ってる量産型の槍だ」
リーナ「へぇー、けっこう軽い……。でも──」
リーナはふと、奥に飾られている、ひときわ存在感を放つ槍に目を留める。
リーナ「奥の……あれ。あれは何?」
ファブロ「あれか? あれはダメだ。今日、ゲオルグ団長が取りに来る予定の特注品だ」
リーナ「ゲオルグ団長?」
ファブロ「ああ。今の聖獣騎士団のトップさ。ヴィルヘルム様の跡を継ぐ男って言われてるぐらいの、王国最強の実力者だよ」
リーナ「ふーん……“跡継ぎ”ねぇ。なんか気になる名前だなあ」
(リーナがちらりとその槍に視線を戻す)
ヴォン「リーナさん……悪いこと考えてないでしょうね?」
リーナ「まさか~♪ 」
【グリフォニア王国・雪&光】
雪「光、お前はどうして拓弥について来てくれるんだ?
ヴァンパイアを倒す理由なんて、お前には無いだろ」
光「理由……うーん、たしかに直接的な恨みとかは無いですけど、雪さんだって同じじゃないですか?」
雪「俺には話したいことがあるんだ。ヴァンパイアに、な」
光「話したいこと?」
雪「あいつらは数百年生きる種族だ。たとえそいつ自身が違っても、必ず雨川家のことを知っているはずなんだ」
光「雨川家とヴァンパイアに……因縁が?」
雪「500年ほど前、雨川家とヴァンパイアとの大きな戦いがあった。記録にはほとんど残ってない。俺はその真実を、知りたい」
光「……そうだったんですね」
(光がふと前方に目をやる)
光「あれ? あれって拓弥さんじゃないですか!?」
2人は駆け寄った。
麻里奈「雪さん、光くん! 拓弥くんが……急に倒れちゃって……!」
ゲオルグ「仲間か? 私はゲオルグ・フォン・アーバン。今から城の医務室へ運ぶつもりだ。よければ君たちも同行しなさい」
【グリフォニア城・医務室】
母「ベル今日は……あなたはゆっくり休んで」
ベル「駄目だよ……母さんも父さんも死んでしまう……。」
――微かな声が、夢の奥から響く。
拓弥は、ゆっくりと目を開けた。
拓弥「……ここは……?」
麻里奈「よかった……! 目を覚ました……!」
光「急に倒れたって聞いたのでビックリしました。」
雪「もう大丈夫なのか?」
拓弥「ああ……大丈夫だ。ありがとう、みんな……」
ゲオルグ「ひとまず、もう少しここで安静にしていたまえ。私は少し席を外すよ」
騎士団の団服をなびかせ、ゲオルグは静かに部屋を後にした。
拓弥「今の人は……?」
麻里奈「聖獣騎士団の団長さんだって。名前は……」
拓弥「ヴィルヘルムか?」
光「いえ、ゲオルグ・フォン・アーバンって名乗ってました」
拓弥「……そうか。そうだったか……(ヴィルヘルム……。なぜ、この名前が真っ先に浮かんだ? 誰だ、それは……?)」
ぼんやりとした記憶の欠片が、胸の奥をざわつかせる。
拓弥「俺はもう大丈夫だ。ここを出て、キールたちと合流しよう」
【グリフォニア王国】
麻里奈「拓弥くん、そっちじゃないよ。城門は反対側」
拓弥「……いや、なんか……足が勝手に」
拓弥は広場の中央に立つ、威厳ある初代グリフォニア王の石像の前で足を止めていた。
王は剣を掲げ、まっすぐ未来を見据えている。その視線は、見る者の胸を試すかのように鋭い。
拓弥「……(この顔……どこかで……いや、会ったことなんてあるはずがないのに……)」
【過去・ベルの記憶】
若きベル「……光は闇を裂き、真の王を照らす……」
父の声「忘れるなベル。この言葉は我らエクストラの誓いでもある決して絶やしてはならない。」
【現在】
拓弥「……光は闇を裂き、真の王を照らす」
石像の目が淡く光り、重厚な石畳が低く唸りをあげる。
地面がゆっくりと回転し始める。
光「えっ!? な、なにこれ!?」
拓弥「わからない……けど、なぜか……口が勝手に動いたんだ」
石像の後ろに隠されていた通路が、音を立てて開いていく。
【グリフォニア王国・隠し通路の奥】
薄暗い通路は、湿った空気と古い石の匂いで満ちていた。
足音が反響し、遠くで水滴がぽたぽたと落ちる音が響く。
光「……行き止まり?ですか?」
奥に辿り着くと、小さな石造りの部屋が現れた。
部屋の壁一面には、古びた文字や謎の絵柄が彫り込まれていた。
まるで何百年も、この小さな箱を守るためだけに存在してきたかのように──。
中央には、埃をかぶった台座。その上に手のひらほどの木箱が置かれている。
拓弥「……なんだ、ただの箱?」
そっと蓋を開ける。
中には、くすんだ色をした一本の木の棒が静かに横たわっていた。
見た目は、何の装飾も施されていない、ただの古びた枝のようだ。
雪「……ただの棒?」
拓弥「さあ……でも、なんか……置いていくのは嫌な気がする」
拓弥は理由もなく、その棒を手に取った。
指先に一瞬だけ、温かい脈動のような感触が走ったが、すぐに消える。
麻里奈「どうしたの?」
拓弥「……いや、気のせいだ。行こう」
二人は棒を持ったまま来た道を戻り始める。
その足元で、台座の表面に刻まれた古い紋章が、淡く光っては消えた──。




